分類
一口に改造車と言っても、その改造内容は多岐に渡り、その改造の目的も様々である。特種用途自動車のような改造と、その他(主に所有者による趣味)の改造の大きく二つに分けられる。
特種用途自動車
メーカー製の市販車の中にも、生産プロセスで実際に改造が施されるものがある。特装車や少量生産車では、コスト負担の大きい型式指定(かたしきしてい)の作業を省略するため、新型車では無く、既存車の「マル改」(○の中に改)として届け出る場合がある。各社の福祉改造車両や救急車・消防車などの特種用途自動車などのほか、日産自動車(オーテックジャパン)のアクシスシリーズ/ライダーシリーズ、ダイハツ工業のハイゼットデッキバンやオープンカーのリーザスパイダーがある。
また一般のトラックやバスに於いても、ユーザーの要求によってシャーシ上に架装される荷台や車体は(用途やメーカーなど)極めて多彩に渡るため、市販シャーシの型式を基に改造扱いで登録がなされるのが一般的である。
このほか、電気自動車、LPG自動車、天然ガス自動車などにも改造扱いの車種がある。
さらに初期型のノンステップバスにも、ワンステップバスの改造扱いで製造された車種がある。これらは前ドアから中ドアのみ床の高さを下げてノンステップにしており、車両後部のエンジン部分などはワンステップバスやツーステップバスと共通の部品を用いている。このようなノンステップバスは、型式取得上は改造車であるが、カタログにも正式に掲載され、公営交通を含む多くの事業者に納入されている。また製造段階からノンステップバスとして製作されており、後天的な改造で改造車になったものではない。この他にも台数が限られる二階建てバスを、同じ要領でスーパーハイデッカー仕様車の改造扱いで販売した例もあった。
これらはアフターマーケットでの趣味の改造車とは趣旨が異なるが、法律上「改造を施した車両」という点では同一の扱いを受け、車検証上の表記は「改造車」、いわゆる「マル改」となる。
趣味による改造
市販車を所有者の好みの状態に改変するための改造用部品が市販されている。大きく分けて機能面の改造と外見面の改造がある。これらの市販用品・部品の中には道路運送車両法に適合できない物も数多く出回っているので留意が必要である。
さらに適合するものであっても、取り付けには「改造登録」が必要なものも多数存在しており、ただ取り付けただけでは違法改造として扱われ、摘発された場合違反切符を切られるのはもちろん、整備命令など強制力のある法律で原型への復元などを求められることもある。
なお、1980年代までは車検証に車体色が記載されており、車体色を変えた場合は記載事項の変更が必要であったり、またサードパーティのパーツ使用は実質「改造車」と見做されるなど、オーナーが趣味として比較的自由に(無届けで)ドレスアップやチューンナップが出来るようになったのは、規制緩和が進んだ1990年代後半のことであった。(それも海外からの「外圧」に屈した感が非常に強かった)
機能面の改造
- 原動機の出力を向上させたり、特性を変化させる。
- エアクリーナーやマフラーを効率の良いものに変更。
- エンジン内部の加工やターボチャージャーの大型化。
- ブーストアップを施す。
- サスペンションやスタビライザーなどの足回りを変更。
- ストラットタワーバーやロールケージの組み付け
- 軽量化のために、軽いパーツに組み替えたり、パーツを外す
外見面の改造
- エアロパーツの取り付け
- オールペンを施し車両の色を変化させる
- ホイールのインチアップ
- シートなど内装パーツの模様替え
- 各種ステッカーを貼り付ける
- スモークフィルムの貼り付け
- 車種やグレードをあらわすロゴを他社のロゴや、上位車種のロゴと交換する。
趣味による(間違った)改造
上記のように一般のオーナーが自由に愛車を自分好みに「改造」できることが限られていた時代も、やはり自由に改造したい好事家は存在した。1960~70年代は市販車をベースにしたカテゴリーのレースもそれなりに盛んであり、レーシングカーを意識した改造車がいわゆる「暴走族」の間で流行するようになる。
さらに1970年代後半になると、こうした改造車が富士スピードウェイで開催される「富士グランチャンピオンレース」の会場に集まるようになり、次第に動力性能や格好の良さと言うよりは「とにかく派手で目立つこと」を最重要視した奇抜な改造が競われるようになり、それらは「グラチャン仕様」と呼ばれ、全国の暴走族のトレンドになった。
このような派手な改造車は一般的には「族車」や「チバラギ仕様」、さらに自動車雑誌の投稿コーナー(ホリデーオート誌の「Oh!My街道レーサー」が有名)などで、地域特有の改造が「〇〇仕様」などの名で呼ばれた。
簡単に代表的な改造手法を記す
- シャコタン 極限まで車高を落とすためスプリングも抜く。(いわゆるノーサス)リアタイヤは「八の字」になるようにセッティングする。
- 引っ張りタイヤ アルミホイールや幅を広げる改造をした鉄製ホイールに、無理矢理細いタイヤを装着する。
- 竹やり 排気管を車体の後部や側面(果てはボンネット)から高く立ち上げる。もちろん消音機は無い。
- 出っ歯 チンスポイラーを前部に延長。後にバンパーと一体化して、中にはまるで畳のような巨大なものを装着した者もいた。
- ロングノーズ ボンネットを鉄板溶接して延長。中には万一の時に人を殺しかねない「とんがりノーズ」なるものも存在した。後に同時にフェンダーも延長するようになる。
- ワークスフェンダー 1970年代のレーシングカーを真似たオーバーフェンダー。さらにシルエットフォーミュラ、グループCを真似たオーバーフェンダーの領域を超越したものも出現した。
- ミュージックホーン 特に5連の「ラッカラーチャ」と6連の「ゴッドファーザー」が有名
また自動2輪車(単車)についても、見た目重視の派手な改造が行われ、中には「デコトラ」如く電飾まで取り付けた者もいた。ロケットカウルを高々と持ち上げる「ブチ上げ」は、当時の単車の有名な改造手法の代表とも言えるだろう。
こうした改造は正に「何でもあり」の世界であった。
この手の改造は、違法であることをを厭わない町工場や、オーナー自身(と仲間)の手で行われた。
特に4輪車の場合ノーマルに復元することは端から前提にしておらず(元々解体屋で格安で購入した車がベースになることが多かった)、その末路はほぼ例外なく「廃車」となって鉄に還っていった。
その後時代が「平成」になると、警察による取り締まりの強化、また暴走族の活動自体が沈静化に向かったこと、何より派手な改造車自体が時代遅れの「ダサい」存在になったため、こうした違法改造車は完全に過去の遺物と化した。
その後は1BOX車をベースにした「バニング」系、さらにバブル期の「ハイソカー」をベースにドレスアップをしたVIP仕様などが登場、細々ながら現在まで派手好きの好事家達によって続けられている。