葉足動物
ようそくどうぶつ
始めに
「葉足動物」という名称の定義には多少の曖昧さがある。混乱を避けるため、本記事は以下の定義に従って葉足動物について記述する:
- 「葉足動物」は往々にして「古代の有爪動物(カギムシ)」と紹介されたが、これは既に認められない旧分類に基づいた解釈である。全ての種類が有爪動物の系統に類縁する訳ではなく(後述参照)、葉足動物は有爪動物の下位分類でもない(系統的にはむしろ有爪動物が葉足動物に含まれる方がマシ、ただし「2」を参照)。
- 稀にその末裔であるクマムシとカギムシも葉足動物であると見なされたが、主流でない分類法であり、ここは一般通りにクマムシとカギムシを葉足動物から区別する。
- パンブデルリオン、ケリグマケラやオパビニアなど節足動物の系統に近い「鰓のある葉足動物」については、節足動物と見なされる傾向が強い。ここは便宜上、節足動物である同時に葉足動物ともされる。
概要
葉足動物(Lobopodia、ロボポディア)とは、カンブリア紀の海に繁栄した古生物の大グループである。多くのメンバーは、カギムシによく似ているものの、そのシルエットが更に洗練された様な「脚の付いた蠕虫」とも言える姿を持つ動物である。
葉足動物の中には、ハルキゲニアとディアニアの様に、体から硬い棘や板が生えて、鎧を武装したような「Armoured lobopodians」(装甲のある葉足動物)と、パンブデルリオンとケリグマケラの様に、体の両側に一連のヒレが生えて、頭に1対の大きな触手を持った「Gilled Lobopodians」(鰓のある葉足動物)と呼ばれるものがある。
主な種類
- アイシュアイア(Aysheaia)
典型的な「脚付き蠕虫」様の葉足動物、本群の代表格。
- ハルキゲニア(Hallucigenia)
背中には数対の長い棘がある。かつては上下前後とも真逆に復元された。
- ミクロディクティオン(Microdictyon)
体の両側には対をなす硬い骨板がある。
- ディアニア(Diania)
脚は太くて硬いリングと棘に満たされ、「歩くサボテン」というニックネームを持つ。
- コリンズ・モンスター(Collinsium)
背中棘だらけ、パワーアップしたハルキゲニアのような姿を持つ。
- シベリオン(Siberion)
頭には1対の太い触手を持っているが、ヒレがない。
- パンブデルリオン(Pambdelurion)
脚の上にヒレがある。口は放射状の歯に囲まれる。
- ケリグマケラ(Kerygmachela)
体つきはパンブデルリオンによく似ているが、長い尾があって、触手の付け根に複眼がある。
- オパビニア(Opabinia)
頭に5つの眼と吻に繋がったハサミが具えるという個性の塊。
節足動物と扱いされる傾向が強い。
類縁関係
有爪動物(カギムシ)、緩歩動物(クマムシ)と節足動物は、いずれも葉足動物の系統から進化したグループであると考えられる。例えば、一部の「装甲のある葉足動物」はカギムシの先祖に近い、そして「鰓のある葉足動物」は節足動物の先祖に近いと思われる。
ハルキゲニアとカギムシ、両者の爪は同じように、内側から一層ずつ積み重ねる構造になっている。これはカギムシに特有する特徴であるため、両者に類縁関係があると思われる。
「鰓付き葉足動物」は節足動物のような硬い外骨格を持たないが、腸の構造はカンブリア紀の節足動物と共通し、脚の上にヒレを持つという配置も、節足動物のヒレと関節肢からなる「二叉型付属肢」の先祖形に見える。両者の特徴を備えたアノマロカリス類は、その類縁関係を更に強くリンクする。(ヒレと触手の配置は「鰓のある葉足動物」に類似、複眼と触手の関節は節足動物に類似、腸の構造とも)
なお、クマムシはどのような葉足動物に近いなのかについて、未だに定説がない。