伝承のアスワング
アスワング(Aswang)とはフィリピンに古くから伝わる吸血鬼の総称でアスワンとも呼ばれる。地域によって様々な種類がいるといわれる。
一般的な伝承だと、普段は物静かな人間として街で暮らしており、夜になると森に入って正体を現し、魔力を持った動物などに変身して人を襲う。
しかし、街での生活の中で良好な人間関係が結べている者は襲わないともいわれており、「アスワンは泥棒より良い」といった表現もあるという。
瞳を見ると逆さにものが写っている、足の間から逆さに覗くと見た目が変わる、ヒンチュラという油を近づけると泡立つなどの各種の見分ける方法も伝わる。
ヨーロッパの吸血鬼と同じく教会などの聖地やニンニク、塩、十字架、聖水、聖灰などに弱いと言われており、変わったところではアカエイの尾で作られた鞭や、ガチョウの尾、フィリピンのアジマットというお守りを苦手としている。
一説によると16世紀以降にこの地を植民地としたスペイン人が、離れた地域の現地民どうしが手を結んで反乱を起こすのを防ぐために、元々あった伝承にヨーロッパの伝承を組み合わせて恐怖心を煽ったものなのだといわれている。
分類
- マナナンガル(Manananggal)
ビサヤ諸島西部に伝わる上半身と下半身が分離して蝙蝠の翼で飛び回り、妊婦から胎児を吸い取ってしまう女吸血鬼。詳細は該当記事へ。
- ワクワク/ティクティク/ソクソク/キリングキリング(tik-tik/wak-wak/sok-sok/kling-kling)
翼を持ち飛び回る吸血鬼で、羽音が名前となっている。羽音が大きければ遠くに、小さければ近くにいると言われ、鋭い翼と鈎爪で犠牲者を切り裂き心臓を食べる。
- ブサウ/バルバル(Busaw/bal-bal)
畑を耕し家畜を飼っている普通の人間のように見えるが、正体はグールであり、墓地や事故現場から死体をバナナの樹とすり替えて持って帰って食べてしまうといわれる。
- ブーブー(Bubuu)
真夜中に鶏の声で鳴くアスワングで、樹で作られた偽物と人間をすり替えてしまう。
- エケク(Ekek)
エックエックとも呼ばれ、空を飛び胎児の血を「エックエックエック」と音を立てて吸い殺してしまう。鳥の要素が大きいといわれ、体は分離せずに嘴を持っている。
- アブアク(Abuak)
カラスのような姿に変身する。
- アマランヒグ(Amalanhig)
見た目は人間に似るが犬歯が大きい。捕まった犠牲者はくすぐり殺されるという。
UMAのアスワング
2000年代ごろからフィリピン各地で目撃される「キキキー」と鳴くUMAがこの名で呼ばれている。
2004年にはアヒルを襲う巨大な犬のような獣が目撃され、2005年には漁師が大きな鳥を目撃し羽音を聞いた直後に強度の貧血で倒れ、2006年には大きな鳥か蝙蝠の様な存在の写真が撮影されている。
創作での扱い
フィリピンではとてもメジャーな存在で、様々なフィクションに登場しているという。
アジムステップのBランクリスキーモブである空飛ぶ蜥蜴モンスターとして登場。