アラビア伝承の魔物。つづりはGhoul。グールは男性名称で、女性のグールは「グーラー」と呼ぶ。
概要
本来の伝承では夢魔(サキュバスやインキュバスなど)に近い存在だったらしく、また砂漠に住み、体色と姿を変えられる(特に好んでハイエナを装う)悪魔の一種ともされる。
墓を暴いて死体を貪り喰ったり、時には子供を襲う事もある。
グールが人間を襲うのは食欲を充たす為だけではなく、人間の肉、特に心臓を食らい性的快楽を得る為だとも伝われている。
またグーラーは美女に化け、1人旅の男性を誘惑し、腑抜けになるまで精気を奪い続けるとも伝承される。
千夜一夜物語の中では、グーラーが人間の女性を装い、裕福な一般人の男性と結婚する話がある(あまりに普通の食事を採らないため、夜中に墓を暴き死体を食っている真相がバレてしまった。それを指摘した男性を魔法で犬に変えるが、男性は魔女に助けられて元に戻り、逆にグーラーを馬に変える)。
卵から生まれ、雌は子供に授乳して育てる。
鉄が弱点で、特に偃月刀(シミター)で一太刀浴びせられると呆気なく死ぬ。が、とどめを刺すつもりで再度切りつけると、あべこべに傷口が塞がって復活してしまうと厄介な性質も持っている。
近年の扱い
屍を好んで食べる習性から、近年ではアンデッドの一種と見做されるようになり、特にコンピュータRPGではゾンビの同類として描写される作品もある。
バイオハザードシリーズのゾンビがそうであるように、超自然では無い「科学」的な説明付けをもうけた作品も存在する。
『魔法戦隊マジレンジャー』では怪人として登場している。→冥獣グール
『仮面ライダーウィザード』では、戦闘員として登場している。→グール(ファントム)
なお、アンデッドモンスターと見なされたのは、TRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」に登場してからが多い(後述)。
超自然的なグール
ドラゴンクエストⅡにおけるグール
くさったしたいの上位種。
ロンダルキアに通じる洞窟で集団で登場し、ギラを連発する。
鬱陶しいと思ってマホトーンで呪文を封じると、それよりも圧倒的に強い直接攻撃に変わる。
ゾンビなのにAIの知能が高く設定されており、封じられた魔法を使おうとして1ターン無駄にもしない。
正に初見殺しのモンスターである。
クトゥルフ神話におけるグール
独立種族の1種。
地下に住む二足歩行の人型に近い種族だが、ゴムのような弾力の皮膚を持ち、体勢や顔立ちはどことなく犬を連想させる。
腐乱死体や排泄物を好む食性を持ち、墓地を荒らしたり、時には地下鉄やトンネルに現れ生きた人間を殺し腐らせてから食べる。夢の国ドリームランドにも生息しており、巨人族ガグの墓を荒らして死肉を得ており、知遇を得て匂いと外見に我慢すれば友ともなり得る。
グールの社会で暮らした人間が後天的にグールに変異する事態もある。
また、ブライアン・マクノートンの著作『食屍姫メリフィリア』によると、“食べた人間の記憶を読み取り、食べた質量に応じて被害者の姿に変身できる” 生態を備えている。
HELLSINGにおけるグール
吸血鬼に血を吸われた者が非童貞、非処女だった場合に食屍鬼(グール)に変異する。
知能や自由意志は無く、「親」である吸血鬼に使役され、ただ人に肉を食らうだけのゾンビめいた存在。親が倒されると死体に戻る。
女神転生シリーズにおけるグール
『真・女神転生Ⅱ』では女性版のグーラーも登場している。
TYPE-MOON作品におけるグール
『月姫』やFateシリーズにおける一般的なグールは死徒(吸血鬼)により生み出された存在だが、『Fate/Grand Order』等に登場するグールはクトゥルフ作品に出てくるものに近い。
上位種のエルダーグールは悍ましい姿をしている。
ヴァンパイア・ザ・マスカレードにおけるグール
TRPG「ワールド・オブ・ダークネス」の、吸血鬼をRPできるシリーズ「ヴァンパイア・ザ・マスカレード」に登場。
吸血鬼に血を吸われ、血を与えられる事で下僕となった人間。陽光の下で活動でき、超人的な力や不老不死を得られるが、主の血に依存せざるを得なくなる。
中には血を提供する「杯」としてのグールや、見初められて花嫁となるグールもいる。また動物をグール化したり、魔術で改造された先天的なグール(レヴナント)も存在する。
ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)におけるグール
TRPG。本作は多く改定されて現在に至っているが、その第4版(現在で言うところの、「クラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズ」)のベーシックルール・セットに、アンデッドモンスターの一種としてグールの記述がなされている。
「醜悪で、獣じみた人間であり、総ての生物を攻撃する」とあり、同時にアンデッドモンスターと明記されている。
噛みつきと両腕の爪による、計三回の攻撃が可能。これらのダメージ自体は軽微だが、追加で麻痺の効果が付与される。ただし、エルフはこの麻痺毒を無効化できる。
士気が低いため、クレリックのターンアンデッドが無くても逃走する可能性が高い。
本作においてアンデッドと明記されてから、「アンデッドのグール」という存在が他作品にも多く出るようになり、現在に至っている(なお、D&Dでは「オーク」に関しても、「豚顔のオーク」というイメージを流布した源泉と思われている)。
また、上級者向け『アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ』(AD&D)の第2版には、水棲のグール「ラセドン (Lacedon)」、腐臭と能力がより強い「ガスト(Ghast)」という亜種が存在する。
ファイティングファンタジーにおけるグール
TRPG、およびゲームブックのシリーズ『ファイティングファンタジー』の舞台〈タイタン〉に登場する。
上述のようなアンデッドモンスターとして設定されており、その姿は人間の腐乱死体そのもの。廃墟や墓場、地下迷宮などに棲息。死体を食うが、生きている人間や動物にも襲い掛かり、その肉を食らう。時には普通の死体を装い、生きた人間が近づいたら不意打ちを食らわす事もある。
手の鉤爪で攻撃するが、その爪には麻痺毒を持つ。そのため、攻撃を四回食らってしまったら動けなくなり、生きたままグールに貪り食われる事になる。
「アンデッド」、および「麻痺毒」といった、D&Dの設定をそのまま取り入れた存在となっている。
超自然でないグール
falloutシリーズにおけるグール
放射能でゾンビのような外見になってしまった人々。
完全に近い放射能耐性と200年以上の寿命を持つ。
知性を保ったまま変異した人間「グール」と、脳機能を破壊されたクリーチャー「フェラル・グール」の2種に分かれる。
詳細は該当記事へ。
東京喰種の喰種(グール)
人と変わらない姿をしているが、人を捕食する以外に生きられない種族。
体内のRc細胞により人間の数倍の身体能力を持つ。
自らの運命について苦悩する彼(彼女)らによって物語は展開される。
詳細は該当記事へ。