国際単位系 (Système International d'unités) とは、国際的に定められた単位系である。略称はSI。なお、SIが既に国際単位系の略称である為、SI単位系と呼ぶのは誤用となる。SI単位と呼ぶ場合には、国際単位系で定義される単位を指す意味で使用すれば誤用とならない。
国際単位系は、7つの「SI基本単位」を基礎に、SI基本単位の累乗の乗除で表現される「SI組立単位」、十進法での大きさを表す「SI接頭辞」、SIではないが併用が認められている非SI単位の「SI併用単位」で構成される。
国際単位系で認められていない単位は、原則として単位として使用してはならない事とされている。ただし航空機分野でのフィートや栄養学でのカロリーなど、用途や分野を限定した上で国際的に使用される非SI単位も存在する。
SI基本単位
SI基本単位は、1954年に国際度量衡総会によって定められた、国際的に使用される事を意図して作られた7つの基本単位である。国際度量衡総会は、単位が世界的に維持される事を目的に行われる4年に1度の総会であり、メートル条約によって定められている。SI基本単位そのものも、メートル条約でよく使われたメートル、キログラム、秒を基礎に作られたものであり、名称及び略称もフランス語に由来する。
SI基本単位には長さ、質量、時間、電流、熱力学温度、物質量、光度の量に対応する単位が定められ、それぞれメートル、キログラム、秒、アンペア、ケルビン、モル、カンデラが充てられている。最新の定義は2019年5月20日より使用される。
SI組立単位
SI組立単位は、SI基本単位の累乗の乗除で表現される単位である。より簡単に言えば、SI組立単位の掛け算と割り算だけで表現できる単位と言う事になる。例えば面積の平方メートル (m^2) はメートルを2回掛けた単位、速さの単位であるメートル毎秒 (m/s) はメートルを秒で割った単位となる。SI組立単位では、力の単位であるニュートン (N) 、周波数の単位であるヘルツ (Hz) 、仕事率の単位であるワット (W) など、日常的に使われる為に固有の記号を持つSI組立単位もまた定義している。
なお、ラジアンとステラジアンは、かつては「SI補助単位」に区分されていた。SI基本単位でもSI組立単位でもないが、補助的に使われる単位として定義されていたもので、現在では無次元の組立単位として解釈する事としてSI組立単位に再分類され、同時に空席となったSI補助単位は区分自体が廃止された。
SI接頭辞
SI単位を十進法で大きさを示す際につける接頭辞をSI接頭辞と呼ぶ。10^24から10^-24まで、原則として10^3毎に接頭辞が割り当てられる。ただし10^3から10^-3迄は10^1毎に接頭辞が割り当てられている。原則としてラテン語アルファベット1文字であるが、デカのみdaの2文字であり、マイクロのみギリシャ文字のμである。μはそれが使えない環境を配慮してuを使用する事も認められている。
なお、接頭辞の国際的な定義を定めるのがSI接頭辞の狙いなので、非SI単位に対してのしよは禁止されていない。また、かつてはミリを2つ重ねてマイクロとするなど、接頭辞を二重につける事がよく行われていたが、SI単位導入時に二重接頭辞は禁止された。SI基本単位の中でキログラムは、最初から接頭辞がついている唯一の例である。これは歴史的な理由から、本来ならばグラムを基本単位とすべきところ、キログラムにせざるを得なかったという事情が絡んでいる。二重接頭辞は禁止されている為、キログラムの1000倍はkkgではなくMgと表記される。
接頭辞 | 記号 | 10^n | 十進法 | 漢数字 |
---|---|---|---|---|
ヨタ | Y | 24 | 1000000000000000000000000 | 一𥝱 |
ゼタ | Z | 21 | 1000000000000000000000 | 十垓 |
エクサ | E | 18 | 1000000000000000000 | 百京 |
ペタ | P | 15 | 1000000000000000 | 千兆 |
テラ | T | 12 | 1000000000000 | 一兆 |
ギガ | G | 9 | 1000000000 | 十億 |
メガ | M | 6 | 1000000 | 百万 |
キロ | k | 3 | 1000 | 千 |
ヘクト | h | 2 | 100 | 百 |
デカ | da | 1 | 10 | 十 |
0 | 1 | 一 | ||
デシ | d | -1 | 0.1 | 一分 |
センチ | c | -2 | 0.01 | 一厘 |
ミリ | m | -3 | 0.001 | 一毛 |
マイクロ | μ | -6 | 0.000001 | 一微 |
ナノ | n | -9 | 0.000000001 | 一塵 |
ピコ | p | -12 | 0.000000000001 | 一漠 |
フェムト | f | -15 | 0.000000000000001 | 一須臾 |
アト | a | -18 | 0.000000000000000001 | 一刹那 |
ゼプト | z | -21 | 0.000000000000000000001 | 一清浄 |
ヨクト | y | -24 | 0.000000000000000000000001 | 一涅槃寂静 |
SI併用単位
単位は日常生活だけでなく、科学や技術、通商関連などでも使用され、その中にはSI基本単位でもSI組立単位でもない物が登場する。これらは今後も使用される事が予想される為、SI単位ではないが併用が認められる単位として定義される。
例えば時間の分や時、体積のリットル、質量のトンなどは、SI単位との併用が認められている代表的な単位である。光速度や電子質量など、物理学ではよく使用されるが、参考値が記されているだけで正確には併用が認められていない単位もある。海里やオングストロームなどは、使用する際に対応するSI単位を明示しなければならない。