概要
荒木飛呂彦氏の漫画作品『ジョジョの奇妙な冒険』第5部『黄金の風』に登場する、台詞または思想である。
レオーネ・アバッキオの警官時代の友人が、彼に語ったもので、この台詞は本章の一つのテーマになっており、果てはジョジョシリーズ全体のテーゼとなっている。
今にも落ちてきそうな空の下で(コミックス第59巻より)
アバッキオ「…ああ」「その……」「なんだ…」
警官「なにか?」
アバッキオ「いや…その、参考までに聞きたいんだが」「ちょっとした個人的な好奇心なんだが」
アバッキオ「もし見つからなかったらどうするつもりだい?」「『指紋』なんて取れないかも………」
「いや…それよりも見つけたとして」「犯人がずる賢い弁護士とかつけて無罪になったとしたら」「あんたはどう思って……そんな苦労をしょいこんでいるんだ?」
警官「そうだな…わたしは『結果』だけを求めてはいない」
警官「『結果』だけを求めていると、人は近道をしたがるものだ…近道した時真実を見失うかもしれない」「やる気も次第に失せていく」
警官「大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている」「向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は犯人が逃げたとしても、いつかはたどり着くだろう?」「向かっているわけだからな…違うかい?」
アバッキオ「うらやましいな…」「 以前オレは…警官になりたいと思っていた…子供の頃から…ずっと、立派な警官に…なりたかったんだ…。かつてあんたのような『意志』を抱いていた事もあった…でもだめにしちまった…オレって人間はな…」「くだらない男さ、何だって途中で終わっちまう。いつだって途中でだめになっちまう…」
警官「そんな事はないよ…アバッキオ」
アバッキオ「え?…」
経緯
護衛チームはトリッシュの記憶からサルディニア島に辿り着き、アバッキオはムーディー・ブルースの能力で島内を探索中に、一人の少年に出会い、次の瞬間何の前触れもなく誰かに攻撃され、呆気なく始末されてしまう。
そこから回想が始まり、場面はどこからのオープンカフェに変わる。
カフェで食事を摂るアバッキオの近くで、割れたガラス瓶の欠片を集めて指紋の採集を試みる警官が登場し、そして先の会話が始まる。
そしてアバッキオははたと気が付く。
アバッキオ「あ…あんたは…!!」「そうだ!!あんたはッ!!」「あんたはオレがワイロを受け取ったせいで撃たれて殉職した…!!」
警官「アバッキオ…おまえはりっぱにやったのだよ…そう…わたしが誇りに思うくらいりっぱにね…」
その警官は、かつて自分のふがいなさから殉職させてしまった、あの警官だったと。
場面は切り替わり、ジョルノたちがアバッキオの遺体を見降ろし、悲劇を防げなかったことを悔やむ姿があった。
しかし、アバッキオは確かに遺していた。
死の寸前、スタンドによる再現機能は完了し、アバッキオは最期の力をありったけ込め、近くに合った銅像の台座にスタンドの顔を思いっきり叩きつけ、ボスの素顔(デスマスク)と指紋を刻みつけていたのだ。
このダイイングメッセージと思わぬ第三者からの手助けを基に、ジョルノたちはボスを追ってローマへと向かった。
アバッキオは死んだ。だが、彼の真実を追い求める意志は一筋の希望を仲間達に残したのだ。そして、そんなアバッキオをかつて相棒だった警官は天国からずっと見守っていてくれたのだ。心が救われたアバッキオは迎えに来てくれた警官とともに天へと召されるのだった。その死に顔は、満足と納得を得られた穏やかなものであった。
キング・クリムゾンへの反命題
このストーリーは、全てを覆い隠し、他者を犠牲にして有耶無耶にし続けることで、永遠の絶頂を得ようとしたディアボロとその精神の体現である都合の悪い過程を吹き飛ばし結果だけを残すスタンド「キング・クリムゾン」とは、真っ向から反するところにテーマが存在する。
その末に、ディアボロは「自分が死んだ」という真実に辿り着くことも出来ず、永遠に死に続けるという最悪の結末を迎えたことは、ファンならばもう存じているだろう。
太刀打ちしようもない絶大な力を前に屈するか、それでも針さえ通し難い小さな突破口を求めて足掻き続けるか。
その意思と行動次第で、結末は無限に変わっていけるのだ。無意味な行動など何一つとしてない。良かれ悪しかれ、行動にはちゃんと結果はついてくるのだから。
関連タグ
ダブルスタンダード:対義語