経歴
2010年の高校卒業後、メキシコでのプロレスラーデビューを決意し、伝手を辿ってミラノコレクションA.T.に渡墨を伝えたところ、彼のタッグパートナーだったタイチが当時メキシコ遠征中だったことからそこを訪ねるよう勧められ、タイチからプロレスラーとしての手解きを受けることとなった。
そして同年中にルチャドールとしてデビュー。当初は「カンスケ」というリングネームであり、マスクマンでもなかった。このデビュー戦は興亡激しいメキシコインディー団体でのことだったため、今となってはその団体は消滅しており、したがってデビュー戦の記録が残っておらず対戦相手が誰だったかもわからなくなってしまっているらしい。
2012年にインディー団体「ペロス・デル・マール」の興行に出場するようになったことを機に、目元から下を隠すマスクの使用を開始。同時にリングネームを「DOUKI」へと改める。因みに現在の異名である「ハポネス・デル・マル」はこの時所属した日本人部隊のチーム名であり、スペイン語で「日本の悪」という意味。
その後、実に十年近くもメキシコやアメリカのインディー団体を渡り歩く戦いの日々を続けていたが、2019年にタイチとTAKAみちのくによる合同自主興行「タカタイチマニア」が開催された際に、Twitter上で直接出場を直訴するという異例の形で参戦が決定。あのデスマッチのカリスマこと葛西純との対戦で敗れるものの、血みどろのハードコアマッチを戦い抜く姿が鮮烈な印象を残した。
そして最大の転機となったのがこの2019年。
メキシコ以来の関係があるエル・デスペラードが顎骨折による長期欠場となったことを受け、タイチの推薦によりその年のBEST OF THE SUPER Jr.にリザーバーとしてエントリーし、新日本プロレスマットへと初参戦を果たした。
リーグ戦を一勝八敗という成績で終えるも、鉄パイプを携えての入場や数々の独創的な技で自身を印象付け、以降もタイチやデスペラードが所属していた「鈴木軍」の一員として継続参戦を続けることとなる。
地平線の向こうで隠れ続けていた月が、遂に日本の空に登ったのである。
その後はジュニア戦士として新日本を主戦場に戦い続け、2022年の鈴木軍解散を経てJUST 4 GUYSへと所属ユニットを変更。5 GUYSへの増員や金丸義信の裏切りなどを経ながらも、新日本ジュニアのトップを目指して戦い続けている。
そして2024年7月5日のIWGPジュニアヘビータイトルマッチにて、王者であるエル・デスペラードからスープレックス・デ・ラ・ルナで3カウントを取り、名実ともに新日本プロレスジュニアヘビー級の王者となった。
関連人物
タイチ
前述の通りメキシコ時代に共に汗を流した仲であり、それまでレスリングはおろか一切のスポーツ経験がなかったというDOUKIにレスラーの基礎を伝授した最初の師匠。
新日本参戦当初は、彼が試合に頻繁に乱入していた。
タカタイチマニア3においては初のシングルマッチでメインイベントを戦い、自身の歴史が籠った熱闘で大きな感動を呼んだ。
DOUKIの日本でのキャリアは、常にタイチと共にあると言ってもいいほどに長く深い関係にある。
高橋ヒロム
曰く「絶対に勝ちたい相手」。最も強烈に意識している時限爆弾。
デビューが同年であり、ヒロムのメキシコ遠征時に邂逅して以降のライバル関係にある。
メキシコではタッグを組んだことも一緒に練習したこともある一方、新日本では数々の栄冠を手にしたヒロムに対してジョバー続きのDOUKIと明暗が別れ、長らくシングルでも未勝利であった。
しかし2024年2月、ロスインゴと5 GUYSのシングル五番勝負において遂に直接勝利をゲットした。
エル・デスペラード
曰く「絶対に勝たなければいけない相手」。かつてエルマノ(兄弟)と呼んだ相手にして、最も巨大な壁ともいえるならず者。
彼との付き合いもメキシコからで、同じルチャのルードスタイルをベースにするマスクマンとして鈴木軍で切磋琢磨しあっていた。
彼にもまた未だシングルで勝てておらず、またその振る舞いをマイクで強烈に批判されたこともあるが、デスペラードはDOUKIを間違いなく評価しており、因縁深き葛西純とタッグデスマッチを戦う際、DOUKIをパートナーに選んでいる。
マスター・ワト
曰く「絶対に負けたくない相手」。新日本ジュニア久方振りの生え抜きの新星。
メキシコ遠征から凱旋帰国したワトを会見中に背後から襲撃(しかもコロナ渦中故の無観客会見)し、以降因縁が生じている。
前述の二人に比べると、ワトの負傷欠場もあって最近はやや関係性が薄めだが、意識は変わらずしている模様。
葛西純
ご存知、プロレスリングFREEDOMSが誇るクレイジーモンキー。
実はタカタイチマニアで都合三度も対戦しており、その度に流血させられている。
彼ら以外にも、棚橋弘至やYOSHI-HASHIにみちのくプロレスのMUSASHIやプロレスリング・ノアのニンジャ・マックなど、長い国外でのレスラー生活の中で様々な人間関係を築いており、「プロレスは長く見るもの」という言葉の重みを感じさせてくれる。
得意技
メキシコマットで培われた純正ルード殺法を駆使する、人呼んで和製ルチャドール。アリータと呼ばれるアームホイップやティヘラと呼称されるヘッドシザース・ホイップなど、華麗にして流麗な動きの数々は一見の価値有り。
本家本元アレナ・メヒコに出場しているスペル・エストレージャ達とのルチャの攻防で互角に渡り合うそのテクニックは一級品であり、かのノブおじこと金丸義信をして「ルチャの技術では新日本一」と言わしめたこともある。
そこに独自の発想と己の歴史をミックスした独特の戦法は欧州式でも日本式でもない正に唯一無二であり、最大のライバル高橋ヒロムが「技の高島屋」と評した新日本随一のテクニシャン。
単純な技の数もさることながら、とにかく一つの技における入り方の多様さが尋常ではなく、どんな態勢からでも、何度対策されても、何が何でも得意の形に持ち込んでみせる引き出しの多さは惚れ惚れするほどのもの。
体つきは細身と呼べる部類だが、新日本内でのファン投票型ボディビル大会「新日本コンクルソ」で優勝したこともある鍛え上げられたソリッドな筋肉美の持ち主であり、ラリアットの応酬に打ち勝つパワーも併せ持っている。
スープレックス・デ・ラ・ルナ
変形のドラゴンスープレックスホールド。一貫して使用し続けている最上位フィニッシャー。
ホイールバローで捕らえた相手を抱え上げ、相手の体が地面に対し垂直になったところでフルネルソンに固め直し、そのまま一気に後方へ倒れ込んで相手の後頭部をマットに叩きつけ、美しいブリッジでピンフォールを奪い取る。
形としては、STARDAM所属の岩谷麻優が使用する「二段式・ドラゴン・スープレックス・ホールド」に近い。
技名はスペイン語で「月のスープレックス」を意味する。
DOUKIボム
場外の相手に仕掛けるダイビング・セントーン・ボム。スワンダイブで飛ぶ初期型と、トップコーナーから飛ぶ現在の形がある。
日本では高橋ヒロムが同型の技を使用して有名になったが、そもそものオリジナルはDOUKIのこの技であり、メキシコ遠征でこの技に感銘を受けたヒロムが日本に持ち帰ったもの。
言うまでもなく背中から硬い床へ落下する相打ちに近い技であり、しくじれば自爆では済まない大技であるため、基本的にはここ一番での奥の手という扱い。稀にテーブルへ寝かせた相手に放つテーブルクラッシュバージョンも使用。
これ以外にもトペ・スイシーダやラ・ケブラーダなどの、ルチャリブレの象徴ともいえる華麗な空中技には定評があり、とりわけセカンドロープに飛び乗ってリング内の相手に背中からぶち当たる背面トペ「トペ・レベルサ」を頻繁に使用する。
デイブレイク
エプロンに立った状態からリング内にいる相手に対し、一気にトップロープを飛び越えつつ相手の首を左脇に抱え込み、そのまま相手の頭を引き込むようにマットに臀部から着地することによって、抱えた相手の脳天をマットに突き刺す飛び付き式のDDT。
主に試合中盤の繋ぎ技やチェンジオブペースとして使用される。
技名は「夜明け」の意。
イタリアンストレッチNo.32
相手の両手を握った状態で自分が倒れ、両足をクロスさせて相手の両腕に絡めつつ両足の甲を相手の首に掛けて固定し、そこから自身の背を反ることにより相手の両肘を極めつつ頸動脈を絞り上げる複合関節技。相手を寝かせるとより深く極まる。
オリジナルは恩師ミラノコレクションA.T.が開発したオリジナルジャベ「イタリアンストレッチ」シリーズの一つ。ミラノはこれ以外にもNo.8やNo.14など数々の技を使い分けていたが、DOUKIはこのNo.32を拘りを持って愛用し続け、フィニッシャーの一つにまで昇華させている。
状況によって腕を極める痛め技か、首を絞める削り技かをスイッチできるのがミソ。
土遁の術
ゴリー・スペシャルの体勢で相手を背中に担ぎ上げ、足のフックを解いて開脚しつつシットダウンすることで相手の背中を自身の背中に打ちつける変形バックブリーカー。さらにそのまま相手の体を滑らせて、逆さ抑え込みの要領でフォールを取りにいくことが可能な連続技でもある。
独創性が際立つオリジナル・ムーヴで、フックを変えることによりダメージを重視したり首を狙ったり、時にはパーソナルアイテムである鉄パイプを用いて仕掛けたりと、DOUKIの数ある技の中でもとりわけバリエーションが豊富。それらは「変型土遁の術」や「土遁の術・改」等と呼称される。
ホルヘ・リベラ・スペシャル
うつ伏せに倒した相手の右腕を取り、自身の体をマットの上を滑らせるように反時計回りに回転させることで相手の体を引き起こしつつ、相手の左腕をキャッチする。そして両腕を自身の体全体で捕らえたまま相手を首倒立のような格好に固め、右腕で相手の片足を捕らえつつフォールを奪い取る変形横十字固め。
ルチャのマットでは知る人ぞ知るテクニコでありコーチでもあるマスクマン、スカイデが「スカイデ・スペシャル」の名称で開発、使用し弟子たちに継承しているフォール技であり、彼の本名兼リングネームであるホルヘ・リベラの名を冠して使用している。
DOUKIの虎の子というべき隠し玉であり、スクールボーイをフェイントに用いて仕掛けたり相手のサブミッションへの仕掛けを切り返したりなど、土壇場やここ一番で輝きを放つ。
人物
- ルードらしい不遜な振る舞いが多く見られる一方で、リングを降りると非常に礼儀正しく温厚な人柄が垣間見える。インタビューやファンとの交流では基本敬語で応答しており、タイチのYouTubeチャンネル出演時にも折り目正しい態度で登場している。
- 日本語、英語、スペイン語のトリリンガルであり、対戦相手に応じてバックステージでの言語を変えられる。元チームメイトのザック・セイバーJr.ともごく普通に英語で会話していた。
- 前述の通り、新日本生え抜きどころか国外の名も知れぬインディー団体出身で、日本では考えられないような過酷かつ劣悪なインディーマットでの対戦経験と、治安が決して良いとは言えないメキシコやアメリカ南部での危険な経験談を数多く持つ苦労人。あの鈴木みのるをして「真の意味で濁った水を飲んで戦ってきた人間」と評し、タイチも「俺には真似できない、尊敬している」と語るほどだが、DOUKI本人がこれらの経験やこれまでの人生を愚痴ったりぼやいたりすることはほとんどなく、初のIWGPジュニア王座挑戦前のインタビューでも「幸せな人生を送っている」とコメントしている。
- 彼のパーソナルポーズとしてネームコールの際に見られる「突き出した右掌を筒状に丸め、しゃくり上げるように相手に向かって突き出す」という所作があり、写真撮影などでもファンと一緒に行ったりしているのだが、このサインはメキシコにおいては極めてなにか生命に対する侮辱を感じます的なものであり、北米圏での中指を立てる仕草に相当するものであるため、安易な気持ちで日常使用するのは絶対に御法度。やっている当のDOUKI本人すら「CMLLでやったら怒られると思う」と述べている。