魔術とは、意志に応じて変化を起こす〈科学〉にして〈業〉である
────────アレイスター=クロウリー「魔術-理論と実践」(新約22巻で引用)
テレマ神秘主義
学園都市を総本山とする、魔術サイドの対の勢力。
主人公の上条当麻、一方通行、浜面仕上もこの科学サイドの人間である。
その正体は〈テレマ〉という実在する近代魔術思想。
史実だと1904年に魔術師アレイスター=クロウリーが〈聖守護天使エイワス〉から授かった知識で記した〈法の書〉を教典とする新興宗教だが、本作では創始者のクロウリーによって科学に偽装・カモフラージュされている。
科学サイドの総本山の学園都市は、形を変えたテレマ僧院に過ぎない。学園都市が創立された第二次世界大戦の直後から、科学はたった一人の魔術師によって全ての魔術を排除するための勢力として発展している。
つまり本作の世界観は、
以上の二つに“明確に”分断されている事になる(後述)。
近代魔術と近代科学の歴史
科学と神秘の世界とは相反すると認識されがちだが、科学と一部の神秘思想は共にヘルメス・トリスメギストス───錬金術、ヘルメス主義の思想的ルーツ───という共通した祖を持つのは事実。
※近代科学は錬金術───つまり賢者の石───の生成過程で生まれた副産物。
中世にはカバラ、ヘルメス学や錬金術などの思想を統合して世界の救済を掲げた〈薔薇十字団〉が発足。19世紀には〈黄金の夜明け団〉がその権威を利用・箔付けとして薔薇十字の名を借り、近代西洋魔術の源流となった。
とあるシリーズでも途中までは現実とほぼ同じ歴史を辿っていたが、史実では死亡したはずの「ある魔術師の生存」以降、決定的に異なる歴史を歩んでいる。
その魔術師がアレイスター=クロウリー。
かつては魔術結社〈黄金夜明〉───本作における黄金の夜明け団───の団員で、聖守護天使エイワスとの接触から〈テレマ神秘主義〉を掲げ、〈Magick〉という新時代の魔術の基礎理論を構築し、トートタロットを生み出した人物である。
〈法の書〉の執筆 - リリスの死去
※「学園都市(とある魔術の禁書目録)」「アレイスター=クロウリー」を参照。
原型制御
実は科学サイド、魔術サイド等という枠組みは自然的に発生したものではない。
これらは魔術を憎悪するクロウリーが、「原型制御」というパラダイムシフトを起こす技術を使い、魔術に対抗する枠組みとして明確に線引かれている。
元々、世界は統一した理論で説明できていたのだが、まさにたった一人の邪悪によって強制的に科学(超能力)と魔術に隔てられたのが、現在のとあるシリーズの世界観となる。
まとめ
本作ではクロウリーがテレマ神秘主義を「科学」に偽装しており、後にクロウリーが創設した形を変えたテレマの僧院「学園都市」にその影響が色濃く残されている。
つまり、現実的には魔術サイドに分類されるべき新興宗教の形を変えた姿。現実世界におけるテレマ思想はクロウリーの没後から現代に至るまで続いているが、禁書では創始者のクロウリーが魔術を憎んで生き長らえていたら…というif・創作設定のもとに成立している。
【元ネタ】クロウリーの魔術定義
「魔術とは意志に応じて変化せしめる《科学》にして《業》である」
この言葉に代表される様に、クロウリーの魔術観では「魔術師の全ての意図的な行動・意志こそが魔術的行為」として考えられた。
クロウリーは自身が定義・実践するテレマ系の魔術に「magick」という綴りを与え、従来の洗練されていない古式魔術と区別している。
(ちなみにmagickという単語は、禁書でも第7巻/法の書編にて地味に登場する)
そして新約22巻において、まさにこのクロウリーの魔術定義が引用されている。
関連タグ
レベル5 一方通行 ミサカネットワーク 木原一族 妹達 統括理事会 とある高校
・科学サイドをメインとしたスピンオフ