概要
元々はレベッカ・ソルニットが提唱した「災害ユートピア」の対義語として生まれたのが由来。
本来人間が何らかの災害に巻き込まれた場合、その被災者を救援しようと国民全体が一致団結し善意に満ちた状態が発生し、これを災害ユートピアと呼ぶ。
しかし例外があり、被災者側が富裕層などの恵まれた立場にいる人間の場合、被災者の救援よりも被災者の地位に対する嫉妬が大幅に上回り嘲笑したり、「ざまあみろ」などの所謂メシウマな誹謗中傷を吐いたり、さらにはその騒ぎに紛れて愉快犯までもが便乗したりと悪意を含んだ行為でさらなる追い討ちをかける二次災害に発展する。こういった逆転現象が災害ディストピアと呼ばれる。
2019年10月12日に襲来した台風19号がもっとも深刻な被害を被ると予測された江戸川区ではなく、武蔵小杉、二子玉川、田園調布といった富裕層が住む地帯が被害を受け、上記行為が横行したことから問題視されるようになった。特に武蔵小杉は排泄物が逆流したという根拠のないデマを流されたり、世田谷区に至っては高級住宅街というレッテルを貼られがちなため、(実際は多摩川沿いしか被害を受けていないにもかかわらず)鬼の首を取ったように世田谷全域を嘲笑したりする書き込みなどが乱立した。
林修もこの問題を「これはちょっと過去に例がないこと」と、2019年に自身が驚いたニュースの第2位に挙げている。
インターネット発展以前にももちろん全くではないものの、似たような例はなかったわけではない。
特に芸能人は昔から勝ち組・富裕の象徴と呼ばれる職種であり、災害とはちょっと異なるが高島忠夫・寿美花代夫妻の第一子であり長男になるはずだった道夫(1964年生まれ)が家政婦に殺害される事件が発生し、その後寿美花代夫人の電話にわざと赤ん坊の泣き真似をした嫌がらせ電話が横行したと言われている。
災害ディストピアとはこういった芸能人の不幸への嫌がらせ行為の延長線上にあるとも言え、ネットの発展で一般人に対しても気軽に心無い暴言が言えてしまえるようになった匿名社会の負の一面と言えるだろう。