概要
元々はレベッカ・ソルニットが提唱した「災害ユートピア」の対義語として生まれたのが由来。
本来人間が何らかの災害に巻き込まれた場合、その被災者を救援しようと人々が一致団結し善意に満ちた状態が発生し、これを災害ユートピアと呼ぶ。
しかし実際はそうもいかないことも多い。被災者を心配・救援する意思よりも憎悪を発散する感情の方が大幅に上回り嘲笑したり、「ざまあみろ」などの所謂メシウマな誹謗中傷を吐いたり、さらにはその騒ぎに紛れて嫉妬の感情を持たない愉快犯までもが便乗したりと悪意を含んだ行為でさらなる追い討ちをかける二次災害に発展する。こういった逆転現象が災害ディストピアと呼ばれる。
被災者が自分より優れていると判断した場合「ざまあ」「天罰」等、逆に劣っていると判断した場合「自己責任」「避難所入る権利無し」、外国の災害の場合「よくあること」「未開」「世紀末」などの意味合いの言葉が浴びせられることが多い。また、動画サイトで便乗動画をアップすることも流行している。これらは扇状的なタイトル・サムネをつけて、内容は文字読み上げやただの感想、転載動画等の低クオリティな代物であることが多い。
もちろんインターネット以前にも歴史的に火事見物のような文化があったし、似たような例はあるが、近代になると反文明的な行為として戒められるようになり、一時的に退潮していたところがあった。
ところが、世の中のサブカル・ネオリベ化や報道のワイドショー化が進むと、事件事故や弱者叩きがコンテンツとして消費されるようになる。これらの文化は匿名掲示板やニュースサイトのコメント欄などを通じ拡大して「メシウマ」文化を生み出し、そして2010年代にはSNSにも広がっていった。もちろんワイドショー化の影響に関してマスコミにも責任はある。
また芸能人は嫉妬もあり叩かれやすく、災害とはちょっと異なるが高島忠夫・寿美花代夫妻の第一子であり長男になるはずだった道夫(1964年生まれ)が家政婦に殺害される事件が発生し、その後寿美花代夫人の電話にわざと赤ん坊の泣き真似をした嫌がらせ電話が横行したと言われている。
災害ディストピアとはこういった不幸への嫌がらせ行為の延長線上にあるとも言え、ネットの発展で一般人に対しても気軽に心無い暴言が言えてしまえるようになった匿名社会の負の一面と言えるだろう。
2011年東日本大震災の際にはSNSが普及途上であったので、不謹慎ネタは2ch等が拠点となり、SNSに関しては連絡ツールとして有効であるとしてむしろ期待されていたところがあった。
しかし2016年熊本地震などのあたりから便乗して動物が脱走だとか外国人が暴動などのフェイクニュースを流す行為が問題になり(逮捕者も出した)、2019年10月12日に襲来した台風19号では、「ざまあ」投稿に加え、左派の一部が堤防工事を妨害したとみられたことから鬼の首を取ったように「世田谷自然左翼」なる造語が広められた。
林修もこの問題を「これはちょっと過去に例がないこと」と、2019年に自身が驚いたニュースの第2位に挙げて警鐘を鳴らしていたが、翌年には某ウイルスによるさらなるディストピアを目撃することになるのだった。