概要
ヨーロッパからアフリカ中部までを縦断する、ロマンとスリル溢れるモータースポーツとして人気を博していたパリ-ダカール・ラリー(通称パリダカ)であったが、年々アフリカの治安や情勢悪化がひどくなっていき、参加者やジャーナリストが生命を脅かされたり、実際に生命を奪われてしまう事件が相次いでいた。
そして2008年に、前年末のフランス人旅行者殺害事件や運営へのテロ予告などの脅迫といった状況を鑑みて、開幕前日というギリギリで開催中止が決定された。
この反省から、2009年に南米を舞台に移して開催されることが決定した。
しかし長年築いてきたブランド力を鑑みて、"ダカール"の名は残したまま"ダカールラリー"と名乗ることとなった。「パリもダカールも通らないのに?」、と批判が出ることも未だにあるが、北米のオフロードレースはバハ半島の"バハ"、耐久レースはル・マン24時間レースの"ル・マン"をそれぞれブランドとして他のレース名につけているし、インディカーだってインディアナ州以外でも走るわけだから、むしろこうした名付け方はモータースポーツ界ではごく一般的な慣例なのである。
その後2019年まで開催されたが、経済的事由により、2020年は中東・サウジアラビアへと舞台を移している。
パリダカ時代からの四輪・二輪・トラックの三部門に加え、2009年にクアッド(四輪バイク)、2017年にS×S(他目的地形車)の部門が創設され、現在は計5部門で争われている。
日本ではJSPORTSがダイジェスト放送を行っている。
参戦メーカー
リーマンショックによる不況を契機に、南米に舞台を移す直前に史上最強の三菱自動車・パジェロ軍団が撤退した四輪部門ではフォルクスワーゲンが台頭。3連覇を果たすとすぐさま撤退し、今度はミニが4連覇を果たしている。
しかしそのミニには古豪プジョーが規定の隙を衝いた2WD車で応じ、3連覇で立ちはだかった。そのプジョーも撤退したことで再びミニの天下になるかと思われたが、今度は南アフリカ法人のTOYOTA GAZOO Racingが力をつけてきて、2019年に初優勝を飾っている。
近年は中国系自動車メーカーの参戦も目立つ。
市販車部門ではトヨタ車体のチームランドクルーザー(TLC)がパリダカ時代に引き続き圧倒的で、2020年までに7連覇を達成している。
二輪部門はパリダカ時代からKTMが実力はもちろん運も味方に完全無欠の連勝を重ね、まさかの20連覇まで手が届くかと思われたが、2020年にモンスターエナジー・ホンダがこれを見事に阻止した。
トラック部門はカマズ勢が勝率8割以上という圧倒的な力を見せつけている。
日野自動車は10L未満部門クラスでだが10連勝を達成し、総合でも最高5位まで食い込む活躍を見せ、一定の地位を築いている。
クアッド部門では、ヤマハ発動機が2020年まで勝率100%である。