以下、フリーザ編の物語の核心に迫るネタバレあり
(だから……だからきさまはこのオレの手によって死ななければならない……!!!!)
概要
ナメック星人を蹂躙し、デンデやベジータを殺害し、ピッコロを瀕死の重傷を負わせ、悟空をあと一歩のところまで追い詰めるなど暴虐の限りを尽くしたフリーザ。しかし親友であるクリリンを目の前で無惨にも爆殺され、地球の神龍では2度と生き返れないという事実に打ちのめされたことにより(当時のポルンガは単一での蘇生が可能でクリリンは後にそれで復活)未だかつてないほどに激怒したことで悟空は遂に超サイヤ人に覚醒。
その圧倒的なパワーに一気に劣勢に立たされたフリーザは、己ですら「長時間耐えられない」と使用を躊躇していた100%の力を解放する。宇宙最強を自負するフリーザのフルパワーはその名に違わぬ力を発揮し、一時は悟空の戦闘力を僅かながら上回るほどであった。しかしその反動は誤魔化せず、時間が経つにつれてパワーはどんどん減衰を始める。
衰弱していくフリーザを見た悟空は、これ以上は戦いではなくただの弱者を痛めつけるだけになると判断。「もう気は済んだ」と戦闘を止め、崩壊するナメック星からの脱出を試みようとする。しかし、いわば情けをかけられ、強烈な屈辱と敗北感を味わったフリーザは決着をつける事に固執する。立ち去ろうとする悟空めがけ、クリリンの気円斬に似た切断技(デスソーサー)を使用し背後から悟空を襲うフリーザ。殺気に気付いた悟空は間一髪で攻撃を回避する。
悟空「どうしようもねえバカなやつだ………オラは最後のチャンスをあたえてやったんだぞ……」
もはや無駄と分かり切った勝負のはずだが、敗北を認めないフリーザを前に、悟空は決着をつけるべく再びフリーザに向き合う。だが、最後の奥の手と称して使用したフリーザの技は、ただ敵目掛けて操作し追尾するだけの単純な技であり、悟空ですら「こんなものがとっておきとは見損なった」と吐き捨てる。
残像拳であっさり躱した悟空は更に鍛錬を積んでからの再戦をフリーザに促すが、完全に理性を喪失したフリーザはそれでも引かない。短い攻防の末にフリーザは悟空からの攻撃を受け地面に叩きつけられそうになるも、執念から済んでの所で体勢を立て直し着地、反撃しようと立ち上がる。
己の技の軌道すら忘れて。
悟空「立つんじゃないふせろ!!!!ふせろー!!!!」
自在に操作できるはずの自らの攻撃すら対処できないほどに追い込まれたフリーザは自身の技によって下半身と左腕を失い、悟空ですら「自業自得とはいえ、貴様らしくない惨めな最期だったな」と酷評するような虫の息の状態になる。
このままではナメック星の爆発に巻き込まれるだけとなったフリーザは宇宙の帝王の面影も戦士としてのプライドも消え失せた惨めな命乞いをする。
今までフリーザに命乞いをした者たちへの悪逆非道な言動を忘れてあまりにも身勝手な救済を求めるフリーザに対し、当然悟空は激しく拒絶する。しかし、あまりの哀れさと惨めな姿に思うところがあったのかナメック星から脱出できるだけの気を分け与える。
悟空のまさかの行動にフリーザも驚く。が、直後にフリーザは悟空を嘲笑う。
宇宙空間で生きる事ができる自分とは違い、悟空は星の爆発から生き残っても宇宙空間に放り出されれば死ぬ。宇宙船は壊れていて使えない。悟空が脱出する術はこの時点では皆無。待っているのは”死”だけだった。
フリーザ「皮肉だな。勝負に勝った貴様は死んで、おれは助かるんだ!!!」
気を分け与えるという悟空の温情を愚かな行為と罵るフリーザ。
しかし悟空は生き残る事を諦めず、脱出する方法を求めて立ち去る。
それを眺めるフリーザ。ここに、ナメック星での長い死闘は、正しく「試合に勝って勝負に負けた」という形に終焉を迎えた...。
かに、思われた......。
(オ……オレは宇宙一なんだ……!!)
「試合に勝って勝負に負けた」。
そんな終わり方は宇宙の帝王たる自分にあってはならない。
「全てにおいて勝つ」。それこそが宇宙一たる自分に与えられるべき栄光。
例外は認められない。存在してはならない。
自分からプライドを捨てて命乞いをしたにも関わらず、フリーザはまだ生きる希望を捨てない悟空を逃そうとしなかった。
背を向けて立ち去ろうとする悟空に対し、フリーザは戦士としての全ての尊厳をかなぐり捨て、ただ「宇宙一である」というあまりにも自己陶酔的な執念と自尊心のみにしがみつき逆上。あろうことか分けてもらった気をも利用して渾身のエネルギー波「デスファイナル」を放ち、不意討ちを狙った。
「オレに殺されるべきなんだーーーーーっ!!!!!」
それすらも読んでいたのか。あるいは例え気を分けてもらったとしても、所詮あっさり反撃される程度の力しか残っていなかったのか。
もはや救いようのない外道になり下がったフリーザに対し、悟空はカウンターで渾身のかめはめ波を叩き込む。あっさりデスファイナルを返されたフリーザはさしたる抵抗すらできずにエネルギーの爆発に消えていく。
かめはめ波によって地面に空いた大穴を悟空は見つめる。
その顔は蔑むようで、憐れむようで、悔やむようで、哀しむようで...。
それは、今まではっきりと見せたことのない、思い悩むような複雑な表情を見せた悟空の姿だった。
その後ナメック星は爆発。完全にフリーザという存在は消滅した…と、思われたが………。
アニメ版台詞
アニメ版においては
(オ……オレは宇宙一なんだ……!!)
(宇宙の帝王、フリーザなんだ……!!)
(だ……だからァ……きさまはっ……サル野郎のきさまはっ!このオレの手によって!!死ななければならないっ!!)
(き、き……きさまは……)
「オレに……!オレにっ!殺されるべきなんだーーーーーっ!!!!!」
「バカヤローーーーーッ!!!!!」
……という形となっている。
フリーザ役の中尾隆聖氏の屈辱にまみれた声色は一聴の価値ありである。