概要
カルバード共和国の首都イーディスに本社を構える老舗のゴシップ誌『メルド』のルポライター。『クロスベル・タイムズ』のグレイス・リンとも面識があり、レンもその伝手で知己を得る事になる。
ジャーナリストとしてはかなり優秀で2年前に起きたヨルムンガンド戦役では自ら最前線まで赴いて現地の取材に成功しフューリッツァ賞の特別賞の授与も検討されていたが、本人の意向で辞退している。
人物
中東系のハーフで容姿は銀髪に褐色の肌を持ち整った容姿をしている事から、周囲からはその容姿と性格から「イケメン」と評されている。自身のルーツから中東方面に顔が利くらしく、サルバッドの出張業務では4SPGの噂を流している。
そしてルポライターとして活動する傍ら情報屋としての側面を持つ。様々な伝手を持ち裏世界の事情にも精通しており、一般には認知されていない身喰らう蛇やD∴G教団更には庭園の存在も把握している。その情報網は遊撃士協会からも注目され、エレイン・オークレールを始めとした遊撃士達も世話になっている。
ルポライターや情報屋としての一線を守るスタンスや真摯な人柄でジュディス・ランスターとニナ・フェンリィと言った芸能界のトップ女優とも面識を持ち、カトルによると、バーゼル理科大学も世話になった事がある模様(ディンゴ本人によると情報屋として手を貸した事や、反対にスクープをすっぱ抜いたとの事)。またヴァンによるとディンゴの紹介で芸能関係の仕事を何度か斡旋された事があるらしい。
煌都ラングポートの東方人街に拠点を構えるギャンブラー兼情報屋を営むジャック・トレバーとは兄弟分の間柄で、彼からは「年の離れた出来た弟分」と評されている。首都イーディスのリバーサイドでカフェ&バーを営むベルモッティとも情報屋仲間で、ジャックと合わせて良い関係を築いていた。
そんなディンゴにとって特別なのが首都イーディスで《裏解決屋》を営む青年ヴァン・アークライドと『タイレル通信』の新人記者であるマリエル・エーメである。
ヴァンとは彼が《裏解決屋》を立ち上げた頃からの付き合いで、当時仕事を立ち上げたばかりで失敗して荒れていた彼にアドバイスを送り人間的に成長するきっかけを作っている。
付き合いは現在も続いており、《裏解決屋》と情報屋としてギブアンドテイクの協力関係を続けている。普段は所長としてメンバーを導く立場のヴァンであるが、ディンゴの前では形無しで弟分としてイジられたり諭されたりする事がある。ヴァンの幼馴染で遊撃士であるエレインとも面識を持ち、二人の事情について把握しており拗れた仲を心配していた。
マリエルは彼女が以前汚職疑惑を持つ政治家の取材関連で面倒を見た事があり、それ以来ディンゴにジャーナリストとして尊敬の感情を抱くようになり同業他社にも関わらず押しかけるようになった。
しかしディンゴがゴシップ誌である『メルド』所属である事にショックを受け、彼を正しい道に導くと意気込むようになり正義感が強いマリエルはディンゴに対し『タイレル通信』への移籍を迫るようになる。ディンゴが面倒見が良い性格であるためか、マリエルを突き放す事が出来ず結局面倒を見ている(具体的にはスクープのために手配魔獣が生息する地下鉄整備路にマリエルが単身乗り込んだ際には、非戦闘員であるにも関わらずヴァン達に同行するなど)。
後にマリエルが書いた記事が『タイレル通信』の紙面を飾った際には、行き付けであるビストロ『モンマルト』やベルモッティの店に連れて行き、奢っている。
ディンゴの依頼
前述の通りルポライター兼情報屋として様々な人達から頼りにされているディンゴであったが、自身については「自分は表を歩く資格がない」と常々言っていた。それはディンゴが抱えるある『過去』が起因していた。それは七耀暦1208年の時点で黒月でさえも手を焼くマフィア『アルマータ』の首領であるジェラール・ダンテスとの因縁である。
本編から九年前、当時ディンゴは北にある湾港都市メッセルダムの裏社会で仕事をする情報屋として活動していた。その頃を知る顔馴染み達によると、情報屋としては駆け出しで青臭く正義感に溢れていたという。そしてその頃の『アルマータ』のボスであったエンリケの下で若頭を務めていたジェラールと付き合いを持っていた。当時のジェラールは面倒見がよく若手の構成員からの信頼も厚かった為、ディンゴは彼に肩入れしていた。そして小者であり人望もなかったエンリケを追い落とし、ジェラールがボスになる為に協力する事となった。
結果として計画は成功し、エンリケはボスの座から追い落とされジェラールが『アルマータ』のボスに就任する。しかしここでジェラールは悪魔の本性を現し、追い落としたエンリケ本人だけでなくその親類縁者まで皆殺しにしてしまった。《アルマータ》を掌握したジェラールは《黒月》が定めていた共和国の裏社会のルールを無視し、勢力を拡大し始める。この結果を見たディンゴは自らが犯してしまった過ちを後悔し、失意のままメッセルダムを去り二年後に首都イーディスに流れ着いた。そして以前から興味を持っていたジャーナリストの仕事に就き、情報屋も兼任しながら取材活動を始めた。
ディンゴがイーディスに辿り着いてから七年が経つ頃には《アルマータ》は共和国の裏社会で《黒月》を脅かすほどの勢力となっており、警察はもちろんCID、《遊撃士教会》、七耀教会が有する《星杯騎士団》と《僧兵庁》、更には《結社》ですら警戒を抱くまでとなっていた。
共和国各地で『アルマータ』が事件を起こす中、ある時共和国北部のクレイユ村でアルマータの不穏な動きがあるという情報が入り、収穫祭が行われている現地に赴いた。そしてその夜……
「お供も連れずに一体何をしている……!?――――ジェラール・ダンテス!」
クレイユ村には焚き火の前で百年前に流行した《ラ・オラシオネーズ》を口遊むジェラールがいた。薄々自分を始末する罠である事も察していたディンゴは恐るべきものを見る。
バーゼルの事件でキャラハン教授を利用して開発しようとした反応兵器、ジェラールはそれを自らが持つ古代遺物である剣とシャードを利用した作り上げた『爆縮レンズ』で強引に起爆させようとしていた。
せめて村人達を避難させる時間を請うが、ジェラールは聞く耳を持たない。その狂気を改めて思い知ったディンゴは意を決し、ザイファと連動したカメラを構える。
「……俺では貴様を止められん。だったら”後”に繋げるだけだ……」
「煉獄に墜ちろ――――ジェラール・ダンテス……!!」
「いい度胸だ――――撮りきって逝け、ディンゴ・ブラッド!」
ディンゴの覚悟を認めたジェラールは反応兵器を起爆させ、ディンゴはその瞬間をシャッターでとらえる。反応兵器が起爆し、巻き込まれるその刹那にディンゴの脳裏をよぎったのは……
(ヴァン、マリエル……!)
弟分と後輩を想い、ディンゴはクレイユと運命を共にした。
ディンゴはクレイユ村で起きた惨劇の一部始終を自身が持つ導力カメラとザイファを連動させており、動画をクラウドに転送させ、パスワードをヴァンに託していた。動画が保存されていたサーバーはCIDに抑えられていたため、ヴァンは止む無く共有を条件にパスワードを提供すると、遊撃士協会や警察、軍の上層部、更に黒月と結社を始めとした裏勢力にも拡散していった。
この遺された動画を見たヴァン達はこれをディンゴの依頼と見なし、アルマータと決着をつける決意をする。その後、ディンゴの遺品である導力カメラは運良く焼け残り、軍より先に現地入りした結社の破戒によって回収された。そしてオラシオンへの出張業務の依頼をするために事務所を訪れた際にヴァンに手渡された。
ディンゴの遺した意思
アルマータが企てた『謝肉祭』から暫く経った後、ヴァン達はディンゴが務めていたゴシップ誌『メルド』のカニング編集長からとある依頼を受ける事となる。依頼内容はディンゴが遺したとされるルポライター兼情報屋として集めた全ての情報が記された「ネタ帳」。
依頼を引き受けたヴァン達は、ディンゴが残した言葉を頼りに調査を始める。途中でマリエルも加わり、ディンゴの昔馴染み達から彼の隠された過去を断片的に知る事となる。そして遂にネタ帳を発見する。
ネタ帳には首領のジェラールがD∴G教団の幹部で旧カルバード王家の末裔である事、更には幹部達の経歴や使用する得物の出所、裏でも名前があまり知られていない庭園が生まれた経緯やそこを統括する四人の管理人達の仔細まで調べ上げていた。
ゼムリア大陸でその名が知られる全盲のジャーナリストであるマルセル・ニールセンが驚異的な洞察力を誇るとすれば、ディンゴは自らの人脈と足で真実に足を踏み入れたのである。
手に入れたネタ帳は満場一致でマリエルが保管する事となった。
尚、ジェラールの異常性についてはある方面からの一つの仮説も立てていたようだったが、それが誰からなのか…何を意味するのかは不明。その仮説通りであるのかは不明だが、ジェラールの悪のカリスマとしての源泉の一端が彼の弟分と繋がっているとは知る由もなかっただろう。
関連タグ
ヴァン・アークライド マリエル・エーメ ジェラール・ダンテス