概要
具体的に言ってしまえば「ファンにCDを何枚も買わせようと誘導する手法」のことで、AKB48が始動した頃から行われており、姉妹グループでも行われている。
2000年代末期までは大した影響はなかったのだが、2010年から同グループのCDの購入者が爆発的に急増しミリオンセラーがこの系列から多発するまでに至る。
その結果、2010年代のシングルのミリオンセラーは後述のEXILEを除き全て48グループという記録となった。
ただ、特典をつけて複数買わせるような商法自体は独創性があるわけではない。
しかしこの商法は野外イベントがセールスポイントになる場合見事に3密を満たしてしまっているため、日本列島に大規模な災害が発生した場合購買指数が落ちるという諸刃の剣商法でもある。
2020年に発生しているCOVID-19はまさに皮肉にも2010年代を圧巻したこの商法に突きつけられた天敵と言える存在となった。しかし、この代替として「fortune Music」が運営する「fortune meets」による「オンラインミート&グリート」が開催され、ある程度の売り上げは取り戻している模様。
主な例
- 同一タイトルシングルの複数仕様
いわゆる初回限定盤商法。
CDの場合で劇場盤と通常盤という仕様とノベルティの違う商品を併売している。通常盤についても2種類以上を同時に発売し、同じタイトルの曲として集計している。これについてはAKB特有ではないので念のため。
- 生写真などを封入
CD購入特典にメンバーの生写真を封入する。それ自体は普通なのだが、その写真はランダムで封入されている点に注意。メンバー全員集めたいなら最低でも十数枚単位で購入する必要がある。また似たようなものとして店舗特典などもある。
- 各種投票権
選抜総選挙や、「リクエストアワーセットリストベスト100」に、所定のCD1枚につき1票を投票できる。AKB系統の総選挙が株主総会と言われるのはこれが関係している。
- 個別握手会
商品1点あたりメンバー一人を指定して行う握手会。以前は秋葉原の劇場で行われていたが、最近は東京ビッグサイトや幕張メッセなどの大規模なイベント会場で行われることも。
- 全国握手会
12名程度のメンバーが全国各地を回って握手会を行う。握手会参加は基本的に抽選制なのだが、CD購入者に限って抽選なしで参加できる。
ちなみに握手会自体は嵐も1999年のデビュー曲「A・RA・SHI」ではやっていたものの、当時Jr.時代から追っかけているコアなファンを除き彼らが無名の新人と見られていたことや、会場が都内の代々木第一体育館前しかなく全国展開を念頭に置いてなかったのもあって48グループのようなチャート荒らしを引き起こすような事態には至らなかった。
- フォトアルバム集
定価5万4千円(当時)、2千冊限定発売というファンですら購入を躊躇いたくなる代物。しかも結成10周年を迎える2015年開催予定のコンサートの招待券が特典として付属する。このフォトアルバムは2008年に発売されたのだが、7年の間にAKBが落ちぶれたり解散したりしなかったので、フォトアルバム集を手放さなかった「レジェンドファン」を迎えての10周年記念コンサートは開催された。
- ダウンロードコンテンツ
アルバム関連のダウンロードコンテンツ(DLC)を指定回数以上ダウンロードすることで握手会参加などの特典が得られるもの。
AKB商法に対する批判
タレントの伊集院光は自身のラジオ番組で「AKB商法って相変わらずスゴイなって思うんです。もう、経済の教科書に載せれば良いじゃんって」と皮肉を込めて発言、噺家の桂南光はレギュラー番組で「えげつない商売だ」と発言、音楽関係者からも評判は悪く桑田佳祐は深夜番組で名前は出さなかったものの「お前ら・・・ズルいよ!」とやんわり皮肉を込めたコメントを残し、山下達郎も「本来の音楽としての価値観が崩れる」として「僕の人生には不要」とバッサリ切り捨てた。
2012年のレコード大賞では服部克久が「これが日本の音楽業界の現状です。楽しんでいただけましたでしょうか?」とコメントしたことが話題になった。
なお同じCDを何枚も買うのは本人の自由意志であり、阻害されるべきではないので念のため。
派生例
48系列と並びチャート上位勢のLDHも2013年にEXILEがシングル「EXILE PRIDE」をライブチケットと抱き合わせでリリースしミリオンセラーを記録し問題になった。
2010年代半ばには、エイベックスが開発したミュージックカード商法が蔓延。CDよりも単価が安く複数買いがしやすいことから48グループ、ジャニーズ、エイベックス系全てがこの商法に便乗するが、株式会社オリコンから「正確な音楽のヒットとは言えない」という判断を下され、2015年3月末を持って集計から除外されることとなった。
なお集計から外されるまでは除外対象にはならなかったため、上3つのミュージックカードを発売するレコード会社側は3月末の集計ギリギリまでに出されるミュージックカードの購買を煽る往生際の悪さを見せている。
2020年明け早々にはそれまでバージョン違いの初回限定盤でしか勝負しなかったジャニーズもSnowManとSixTONESのデビューシングルを両A面で2レコード会社からリリースし、1曲目だった方のCD売り上げで競わせる商法で初動一週間だけで合算132万枚ものセールスを売り上げた。
独禁法(と景表法)に違反しかけた事例
2008年に販売したシングルのAKB48劇場限定販促企画において、全44種類のポスターのうち1枚がランダムに封入されていて、すべて集めれば特別イベントに招待されるという手法を展開したが(CD44枚セットを購入すればポスターがフルコンプできる現場運用がなされたとの説もあるが、いずれにせよ)、SME及びデフスターレコーズ法務担当が「これは独占禁止法が定める不公平な取引に抵触するのではないか」と指摘。2日間のみで中止された。
一回もダブらずポスターをコンプリートできる確率は77京1468兆8909億1789万4000分の1で、まず不可能である。
(なお、この販促は景品表示法により禁止されているカード合わせ(別名コンプガチャ)の手法にも抵触している)
この事件が遠因となりSMEを離れたAKB48に声優のCDや「ハッピー☆マテリアル」でのノウハウを蓄えていたキングレコードが接近し、メジャー再デビューとともに現在の形での「AKB商法」が確立した。この商法の有用性を再認識したSMEは改めて秋元康陣営と接触し、「公式ライバル」乃木坂46を立ち上げた。その乃木坂46もタイプ別の限定曲や特典映像などで複数枚購入を勧めるAKB商法と似た売り方を行っていき、その後のAKB48の人気低迷も相まって今や「日本の国民的女性アイドルグループ」としての地位を確立した。