概要*
フクロムシとは甲殻類の蔓脚類の中の根頭上目に属する寄生生物群。蔓脚類には他にフジツボやツボムシが該当するが、寄生に特化したフクロムシの姿は甲殻類どころか節足動物にすら見えないし、寄生された宿主にも劇的な変化をもたらす。ちなみにフクロムシは寄生動物よろしく性的二形となっているが、オスメス問わず消化器官が完全に消失している。
フクロムシにはまずケントロゴン目というのがあり、そこから派生したアケントロゴン目との2つの系統から成る。主な宿主としてカニなどの十脚目が知られるが、他の甲殻類に寄生するものもいる。
フクロムシのメスはまず幼体が泳いで宿主に取り憑くと、バーミゴンと呼ばれる細胞塊として注入される。そこから細長い繊維状の組織(インテルナ)として宿主の体中に張り巡らされ、血リンパから直接栄養を得る。そして宿主の体外にほぼ生殖器だけの袋状の組織(エクステルナ)を生やす。根頭上目というのはインテルナの形状から、フクロムシという名はエクステルナの形状からそれぞれ来ている。ちなみにこの状態のメスは体の組織が殆ど退化し脚や体節は愚か殆どの臓器が消失している。残ってるのは生殖器と神経、そしてわずかな筋肉とクチクラだけ。
オスの方はというと、幼体がメスのエクステルナに取り憑くとエクステルナ内を辿り、レセプタクルという部分に辿り着くと精子を生成するだけの細胞塊と化す。あまりにも簡略化されたその組織は、かつてフクロムシが雌雄同体と思われてた原因となっている。
メスのエクステルナは本来の宿主が卵を成す筈だった部分に発生する。フクロムシは宿主を操りまるでフクロムシが自身の卵であるかのようにエクステルナを守らせ世話をさせる。ちなみに本来卵を成さないオスであっても母性が芽生えたかのように同様の行動を取ることになる。
ちなみに、宿主が成長や生殖に使うエネルギーをフクロムシに回してしまうので、本来であれば寿命まっしぐらの宿主はフクロムシに寄生されることでかえって寿命が伸びるとされている。
余談にはなるが癌を英語ではCancerというカニを意味する言葉で呼ぶが、これはフクロムシに寄生されたカニがグロテスクな塊を生やすから…ではなく、悪性腫瘍から血管がカニの脚のように広がるから、らしい。つまりフクロムシは関係ない。
関連タグ*
チョウチンアンコウ、ミツマタヤリウオ:メス巨大オス矮小の性的二形で知られ、オスがメスの体に取り憑き精子を提供する存在と化す点が似ている。
ネジレバネ:宿主の昆虫を寄生去勢し行動を操る、宿主の胴体からメスの体の一部が突き出ているなど、一見すると似たような生態の寄生昆虫。