「戦場とは正義も勇気も信念も等しく朽ち死ぬ修羅の庭」
「許される道は楽に死ねるか否かのみ」
「戦場へようこそ」
CV.大塚明夫
概要
軍警の特殊制圧作戦群・甲分隊«猟犬»を束ねる隊長。高身長で引き締まった肉体をもち、獅子のような白髪交じりの黒髪には、額の左上の位置に稲妻形の切れ込みがある。また、右頬には何かに引っ掻かれたような傷痕がある。
「がっはっは」と笑い、冗談をよく飛ばす陽気な性格。しかしその実力は本物で、世界中の危機を解決して神刀・雨御前を下賜された英雄であり正義の象徴。二つ名も「生ける伝説」「戦神」「サムライ(海外での呼称と思われる)」など数多く、その活躍は実に3度も映画化されている。
福沢諭吉とは旧知の仲であり、彼からは源一郎と呼ばれている。また、そのよしみで江戸川乱歩とも交流がある。
異能力
能力名 | 鏡獅子 |
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能力詳細 | 手にした武器の性能を百倍にする能力。小石などの武器では無い物も含まれる。 |
元ネタ | 福地桜痴が作詞した歌舞伎の長唄『春興鏡獅子(通称「鏡獅子」)』 |
活躍
«天人五衰»事件にあたり捜査本部に急行して任務を引き継ぎ、犯人の武装探偵社の捜索のため二手に分かれた。本人は大倉燁子と組んだものの、もう一方の組が会敵したため活躍はせず。また、与謝野晶子逮捕時にも現着したが、戦闘は終了しておりやはり活躍は無かった。
その後、逮捕されている福沢諭吉の元に向かい、酒を酌み交わした後自首を薦めた。それが断られると、安否不明の国木田独歩の生死を明かす条件を提示したが、福沢が国木田の無事を断言したため交渉は決裂した。
文豪・福地桜痴
実際の福地桜痴(本名源一郎)は福沢諭吉と同じく旧幕臣で政論家かつ劇作家かつ小説家。新聞を発刊したり歌舞伎の脚本を書いたりと文才に優れていた。一度政府を批判する論文を発表し投獄されるが木戸孝允のはからいで救われている。
福沢諭吉と並んで「天下の双福」と称され、彼の逝去にあたっては追悼の記事を書いたという。
江湖新聞を創刊したが、ここには条野採菊が参画している。また朝野新聞の編集長でもあったが、この新聞の主筆は末広鐵腸。一方で大倉燁子や«猟犬»の5人目にあたる文豪との関わりは無さそうである。
関連項目
単行本20巻からのネタバレ注意
乱歩「政府の上層部」
「容貌の知れ渡った著名人」
「テロで最も利益を得た人物」
「ドストエフスキーすら超える超人」
「探偵社に因縁を持つ人物」
「彼(神威)の名は」――
真の概要
正義の組織«猟犬»の隊長である福地桜痴、その正体はテロ組織«天人五衰»の創設者「神威」であった。つまるところマッチポンプである。
«天人五衰»事件の首謀者であるということは、その前座である«死の家の鼠»ウイルス事件の首謀者でもあり、果てはコミック版の描写からドストエフスキーが一枚噛んでいたと思われる中島敦懸賞金事件、及び組合(ギルド)襲撃から連なる三組織異能力戦争すら福地桜痴の策略であった可能性がある。今のところ言及は無いが、それが真実なら彼は本編における多くの重大事件の黒幕、いわゆる全ての元凶であったと言えよう。
ではなぜ彼は巨大な陰謀を企んだのか。彼は戦場で戦争の恐ろしさを「殺す側」として知った。そして戦争を命じるのは国家。だから彼は凡ての国家を消滅せんとするのである。
大量の殺戮を以て平和を成す、つまり正義と悪を同時に行うという歪んだ思想をもつ人物、それが福地桜痴なのだ。
真の活躍
「神威」として«天人五衰»事件を引き起こし『頁』によって探偵社に濡れ衣を着せた。硬貨爆弾テロを契機にCTC(国連安保理テロ対策委員会)の提案を呑み、地球全土を護る人類軍の司令官となった。
江戸川乱歩の『超推理』で正体を見破られ、中島敦及び芥川龍之介と戦闘。芥川を殺害(または瀕死)に追い込むも、敦とポオの推理小説に入った乱歩は逃してしまう。
その後"不死公主"ブラム・ストーカーに芥川を噛ませ«天人五衰»の次なる作戦・無差別異能テロを開始。ある人物に正体を知られるが返り討ちにし、芥川同様吸血種とする。
その後は福地と敵対すると決めた条野を芥川を利用して打ち倒し、国木田と谷崎を捕獲し特殊な機械(生命維持を代替するもので、下手に外せば脈拍などを薬品で止められた国木田達は死亡してしまう仕組み)で拘束、福地を異能が使えなくなるポオの小説に封じようとした乱歩も気絶させ、福沢の目の前で探偵社3人を人質にとってみせた。
しかし無差別異能テロは欧州列強により鎮圧される可能性が高い。その真の目的は『部下が必ず命令通りに動く』異能兵器«大司令(ワンオーダー)»を国連から預かり、人類軍の長として発動し世界を征服することである。
ちなみに、正体を見破られるまでの陽気な性格等は全て演技であり、軍時代の潜入任務では「百面相の男」とまで呼ばれていたらしい。しかし、やはり歳なのだろうか。ストレスで深酒したり抜け毛が増えてしまったりと別人格の演技は体に悪いらしい。福沢との路が別れてしまうまでは陽気な性格の方が素であったようだが……。
異能力
福地桜痴の異能『鏡獅子』は「持つ武器の性能を百倍にする」という単純かつ強力な戦闘向けの能力。標準装備の軍刀に用いれば、虎の動体視力を抜いて敦が気付かないうちにその脚を斬り落とせるほどの斬れ味を発揮し、船の欄干を捻り切って振るえば、巨大な船楼の一部をも斬り落とす刃となる。
制約らしい制約が無いどころか能力の適用範囲は一般の武器に留まらず、ただの石、他人の拳、軍刀に点けた炎、果ては聖十字剣に付属した状態のブラムの異能力まで「武器」とみなして強化できる。恐らくは「福地自身が武器と解釈した物の、武器としての性能を百倍にする」能力なのだろう。強いて弱点を上げるとすれば性能を上げすぎて周囲を更地にしかねない(実際、甲板での戦闘では船を沈めないように気を付けていた)ことだが、それすら本人が技量でカバーしてしまう。
このようにただひたすらに強く融通も利く異能だが、その真の恐ろしさはある武器との組み合わせにある。
それは福地が賜った『神刀・雨御前』。千五百年前に異能力者である刀鍛冶が鍛冶した儀式用の青い剣であり、敦曰く「宇宙の法則そのものに見える」代物。『時空剣』の綽名をもち、元々十数糎(センチメートル)の空間を省略する『時空渡り』の性質があったが、それがさらに福地の異能により強化された。つまり自身から半径十数米(メートル)以内の範囲のどこにでもどの角度からでも攻撃できるということである。
よって攻撃が出る場所・方向の予測は非常に困難。対抗策があるとすれば範囲外からの攻撃だが、福地相手に距離を取るのは難しいと思われる。刀身の動きを止められるような異能があれば空間渡りを阻止できるかもしれないが。
ところが。雨御前の『時空渡り』はその名の通り、空間だけでなく時間も渡る。
その範囲は十数秒。これがどういうことかというと、奇襲を受けて敗北した場合などに刃を過去に渡らせ敵を斬ることで敗北を無かったことにできるのだ。空間を渡る場合は刀身の先が消えるのを視認できるが、時間渡りではその予備動作すら(攻撃の時点では)無いため、攻撃タイミングの予測は実質不可能。
この組み合わせこそ福地の異能力の極致、彼が世界の厄災を何度も打ち破れたのはこの能力に拠るところも大きい。上記の使い方は比較的単純なもので、『時空渡り』をフル活用すれば複数の未来から複数の刃を今に渡らせ相手を確実に仕留める、過去の壁に向けて自分だけが分かる記号を刻み、それを見た過去の自分から今へ刃を渡らせる(間接的な未来予知)など、規格外の戦い方が可能となる。
以上のように『鏡獅子』と『神刀・雨御前』を活用した、あらゆる敵・状況に臨機応変に対応する戦闘スタイルをもつ福地桜痴は、新双黒や強力な異能者たちに対しても勝利を収めており、純粋な戦闘においてここまで連勝しているキャラクターは文スト全体で見てもなかなか珍しい(本編における純粋な戦闘で無敗のキャラは他に中原中也が挙げられる)。
余談
小説版の「探偵社設立秘話」で彼のものと思われる台詞(というか回想)がある(アニメ版で福地の台詞である事が確定)。
また、親友である福沢諭吉の異能力『人上人不造(ひとのうえにひとつくらず)』とは何もかもが対照的である。
- 福地桜痴
- 異能力の名称→『鏡獅子』(獣)
- 効果対象→自身にのみ適応される異能力
- 詳細→自身の持つ武器の性能を百倍に引き上げる。
- 適応判定→本人が武器とみなせば、異能力が即座に適応される。
- 福沢諭吉
- 異能力の名称→『人上人不造』(人間)
- 効果対象→自身が含まれない異能力
- 詳細→部下の異能力の出力を本人が扱いやすいよう制御、調整する。
- 適応判定→厳重な入社試験を受けなければ、異能力制御は適応されない。
──福沢、貴様、裏切るのか。
──国家安寧を希うという我らの誓いは虚妄か福沢。その場凌ぎの出任せか。