概要
バービー人形の実写版化した映画。2023年公開。
主演はマーゴット・ロビー。
アメリカでの宣伝文句は「バービー人形なんて嫌い。この映画は、そんな貴方の為の作品です」
注意
本作品は下ネタ満載の不条理コメディとしての側面も有るので、本項ではR15ないしはR18に相当する可能性が高い用語を使わざるを得ません。(男性器,女性器の名称など)
万が一、本項を中学生かそれ未満の方が読まれる場合は十分に御注意下さい。(「スマホやPCで『チンコがど〜したこ〜した』『マンコがどうのこうの』という話を読んでウキャウキャと喜んでる所を親に見付かんないように気を付けろ」の意味)
子供向け映画だと思って、本作品を映画館ないし御自宅で、お子さんと一緒に観ようと思っている親御さんも十分に御注意下さい。
やむを得ざる事情で、大人の方が年端もいかないお子さんと一緒に鑑賞せざるを得ないという不幸な事態に陥る可能性が有る場合には、「パパ〜、『あたし、あそこがつるべたなの』って、どういう意味〜?」「ママ〜、なんで、あの人、男なのにおちんちんがないの〜?」などと訊かれた場合の、状況や子供さんの年齢・性格など(本当に何も判っていない/判った上で大人を困らせる質問をするようなクソガキ、など)に合せた答をあらかじめ用意しておく事を推奨します。
繰り返しますが、本作品は暴力シーンがほぼ無いにも拘らずアメリカでは「子供が鑑賞する場合には大人の同伴および助言が必要」指定されている映画です、念の為。
あらすじ
そこはすべてが完璧で、毎日がハッピーな<夢>のような世界!
ピンクに彩られた街でバービーとボーイフレンド?のケンが連日繰り広げるのはパーティー、ドライブ、サーフィン!
ある日ふたりはそんなバービーランドから、完璧とは程遠い“人間の世界リアルワールド”に迷い込んでしまい−?!
登場人物
- バービー:バービーランドの女性は人種・職業を問わず、ほぼ全員バービー。
- スキッパー:バービーランドに居る数少ないバービー以外の女性。元ネタはバービーの妹という設定の人形。どうやら、「ベビーシッター」仕様のスキッパーが、かつて現実世界で何か騒動を起こしたらしいのだが……?
- ミッジ:バービーランドに居る数少ないバービー以外の女性。元ネタは廃番になった妊婦の人形。
- ケン:バービーランドの男性は人種を問わず1人を除いて全員ケン。なお、基本的に「バービーの添え物」なので、バービー達の中には仕事・職業が割り当てられている者も居るが、ケン達はほぼ全員無職。
- アラン:ケンの親友という設定で作られたが全く売れなかった人形が名前の由来。バービーランドに居る1人だけ名前が違う男性。
作風など
開始早々『2001年宇宙の旅』のパロディが始まり、赤ちゃん人形しか知らなかった子供達の元にモノリスの如くバービーが降臨、月を見るものが叡智を授かった場面のように子供達が赤ちゃん人形を叩きつけて粉砕して放り投げるというショッキングなシーンが流れる。
しかも、よく見ると、赤ちゃん人形で遊んでいる女の子達は、バービーが現れる前からつまらなそうな表情をしている。
そして、流れるナレーションが「赤ちゃんの世話をするのは楽しいよ。最初の内だけはね。詳しい事はママに聞いてみて」。子供が母親と一緒に観た場合を考えると、かなり酷いナレーションである(「お前のママにとって、赤ん坊の頃のお前の世話は苦痛だったんだぞ」と言ってるようなものなので)。
これは「バービー人形の存在が、かつて有った『女性には母親になる事以外の社会的役割など無い』という固定観念を打ち砕くのに一役かった」「男性は往々にして女性に『セクシーさ』(SEXの相手としての望ましさ)と『母性』(自分の子供を生んで育てる事)の両方を求めるが、この2つは1人の女性の中で両立させる事が出来るとは限らない」「子育てを女だけに押し付けるな」などの事を映像で示したものである。
ただし、露悪的にも程が有るやり方で。
なお、このシーンにショックを受けた人に対して、下手に「このシーンには元ネタが有ってね……」などの解説しようものなら、一歩間違うと、本作で「男性がやりがちな駄目な行為」の一例としてあげられている事を自分でやってしまう、というメタな事態を引き起しかねない、というオマケ付き。
実際の歴史においては、幼児人形しかなかった時代の子供達が男性向けエロフィギュアである「Bild Lilli」で遊んでいたのに目を付けて、造形を模倣したのがバービー人形の発祥であり、バービーが全てを変えたように描くのは誇張表現である。
日本のようにバービー人形が商業的に振るわなかった地域の人々にとっては意味不明なシーンであり、冒頭の場面一つ取ってもバービー人形への理解力が試される映画である。
他にも女性の理想像としては時代遅れ扱いされる主役バービー、バービーの付属品でしかない自らの存在意義に悩むケン、拝金主義の化身のように描かれるバービー人形の販売元のmattel社CEOなど、mattel社が許可したのが信じがたい描写が多々あり、現実のバービー人形を取り巻く環境を皮肉ったブラックコメディの要素が強い。
コメディ映画としての完成度は概ね好評である反面、描かれるテーマについては大きく賛否を分けている。
余談
- 出演者の1人であるシム・リウは「シャン・チー/テン・リングスの伝説」に出演(主演)した際にディズニーの重役から「ヒーローというよりサラリーマンにしか見えない」という酷い事を言われた過去が有るが、本作では「ケン」の1人として、いわばアジア系のイケメンの代表を演じる事となった。
- しかも、主人公格の「ケン」のライバルという重要な役。
- アメリカの映画公式Twitterがバービーと原爆投下を揶揄するミームに好意的なリプライを送ったため日本で大炎上した。後にワーナージャパンから謝罪ツイートが発表された。同年、東京都の地下鉄内で外国人ユーチューバーが「また原爆を落としてやる!」などと騒いだ件に続き、世間がポリコレで騒がれる中、悪魔の兵器をどう考えているのか?についてその意識を再び問われていると言える。
- もっとも、本作は「ポリコレを踏まえた上でこそ無茶苦茶や過激な表現が出来る」という内容であり、アメリカでは「子供が鑑賞する際は親の同伴が必要」指定のかなり露悪的なブラックコメディな訳だが。
- 作中で「みんな誉めてるけど、実はあんまり出来が良くないもの」「大した出来じゃないのに、誰もが洗脳されてるせいで誉めてるもの」の例に使われるのが「ジャスティス・リーグ」のザック・スナイダーカットだが……本作,「ジャスティス・リーグ」ともに配給はワーナーブラザーズである。
- 「バービー」や監督の「グレタ・ガーウィグ」主演の「マーゴット・ロビー」等をgoogleで検索すると煌めくようなエフェクトと共にピンクを基調とした色合いに変化するという演出が仕込まれたが、表示されるトップニュースは上記の原爆関連の不祥事ばかりで、余計にイメージダウンにつながっている。
- 映画がアメリカで大ヒットしたのを踏まえてラーム・エマニュエル駐日米国大使が「バービーは全ての女性の代表」と称して絶賛したが、日本では上記の騒動の真っ最中だった上にそもそもバービー人形の人気がないため、アメリカ人の身勝手な価値観の押し付けとして非難された。
- 皮肉にも本作のオチは「バービー人形が必要とされなくなった現実の世界」を肯定するもの。
- 主役的立ち位置の「ケン」を演じたライアン・ゴズリングが本作への出演を決めた理由は「娘が捨てたケンの人形を見て『こいつの為の物語を作ってやらねば』と思ったから」。
- ちなみにアメリカではPG13指定。日本語の吹き替えや字幕ではボカされた表現になっているが「私にはヴァギナは無いし、ボーイフレンドのケンにもペニスは無い」などのセリフが平気で出て来る為。
- つまり、予告に有った「今晩、君の家に泊まっていい?」「泊まって何するの?」の場面だが……2人は穴も竿も無いので、何も出来ないのである。
- 最後のオチも、主人公のバービーが人間になった事で(それまで持っていなかった)性器を得た事を示すもの。バービー人形についての映画なのに、わざと学校で性教育を受けて以降の年齢でなければ意味不明な作品として作られているのである。
- バービー人形をテーマにした作品にも拘らず「バービー人形の存在意義を全否定」「バービー人形の販売元のmattel社(もちろん実在の企業)の経営陣を悪として描く」「作中に登場して、バービー人形の存在意義を全否定するZ世代でフェミニストの少女達の外見・人種構成は明らかにバービーのライバル商品を意識したものであり、しかも彼女達の言ってる事が作品内での『正論』」「バービー人形の生みの親に脱税の前科が有る事をネタにする」という無茶苦茶やってる作品にも拘らず、当のmattel社の全面協力の元に作られている。物判りがいいにも程が有る。
関連動画
日本語吹き替え版の予告のナレーションはファイルーズあい