イーハトーヴォ物語
いーはとーゔぉものがたり
ゲーム概要
1993年3月5日にヘクトが開発・発売したスーパーファミコン用ゲームソフト。
宮沢賢治作品の舞台となる世界「イーハトーヴォ」を旅するゲームであり、宮沢賢治の童話に登場する人物や動物が多数登場する。登場キャラクターの中には本作独自の設定などが追加されているキャラもいるが、それも含めて原作のイメージ及び物語の雰囲気にマッチしている。
イーハトーヴォ各地に散らばっている宮沢賢治が失くした7冊の手帳を集めて、賢治に会うことが本作の目的である。賢治の手帳は作中でも「不思議な手帳」と呼ばれ、入手した時点で賢治の手帳であることがはっきり分かるようになっている。
公称ジャンルはRPGであり、実際ドラクエ等に似た2D見下ろし型マップなどRPGらしい見た目のゲームではある。但し通常のRPGのような戦闘シーン等は無く、様々な場所を巡って住民との会話などで情報やアイテムを入手して先に進むゲームであり、どちらかというとADVに近い。
入手したアイテムを使う時は、予め選択して"手にした"状態で相手に話し掛ける必要がある。
情報を持つNPCが少々分かりにくい状況はあるものの、複雑な謎解き要素は無いので原作を知らなくてもクリアは可能である。賢治作品に触れる前にプレイしても良いし、本作ではややマイナーな賢治作品も扱われているため、既に賢治作品に触れているユーザーがプレイしても新たな発見があるかも知れない。
キャラクター
あてのない旅を続ける旅人。一人称は「私」。
縁を感じてイーハトーヴォを訪れ、"賢治さん"に会うために旅することとなる。
イーハトーヴォ市街地
主人公の旅の拠点となる街。主人公は汽車でこの街を訪れるが、汽車の本数が非常に少ない街であるため、ゲーム中で主人公の移動手段として汽車が使われる場面は無い。
市民達も小さい街と認識しているが、それでも本作に登場する中では最も大きい街である。
- ファゼーロ
羅須地人協会の会員である若者。設立者の賢治が多忙で不在なため、協会の留守を預かっている。
賢治の伝言などを主人公に伝えてくれる。器用であり、張り子細工作りが得意。
- レオーノキュースト
イーハトーヴォ市役所の職員。イーハトーヴォの様々な情報を教えてくれる。
以前はモリーオにある博物館に務めていた。
- かま猫
猫の事務所に務める黒い猫。動物なので会話するには貝の火が必要になる。
市民の家の一軒に居候しており、寒さに弱いためいつも釜戸の中で寝ている。それで煤だらけになって体色が黒くなったため、「かま猫」と呼ばれている。
主人公が賢治の手帳を探していることを知り、様々な情報を集めて教えてくれる。大半の章は彼から手帳の手掛かりを聞くことで始まる。
- クーボー博士
イーハトーヴォ農学校(モデルは賢治が教師を務めた稗貫農学校)の講師。
講義は好評だが、研究室に籠って実験していることの方が多いため、頻繁に休講している。
グスコーブドリの恩師であり、彼が務める火山局にも顔が利く。
主人公が宿泊している「ケンジントンホテル」の支配人。咳払いが特徴。
イーハトーヴォ一のホテルを自負しているが、作中でイーハトーヴォにあるホテルはここ一軒のみである。
- 劇場支配人
- マネージャー
劇場支配人の補佐役。常に語尾に「ございますよ」と付ける。
- シグナルとシグナレス
駅前に立っている2本の信号機。人間と会話できる。シグナルが男性でシグナレスが女性。
原作でも擬人化されたキャラなため、話し掛けると擬人化イメージの顔グラフィックが表示される。
相思相愛の男女だが、シグナレスは自身が旧式であることに引け目と負い目を感じていて、それによってすれ違いが生じておりなかなか関係が進展しない。
ゲーム本編には一切関わらず、2人に関する情報を教えてくれるのは街中の子供2人だけなので、原作を知らないプレイヤーの中にはシグナルとシグナレスに会わないままエンディングを迎えた人も少なくないだろう。
- 詩人
街の南に住む男性。宮沢賢治を目指して毎日詩を書いている。娘がいる。
顔グラフィックの無い一般市民だが、作中では何度か重要な役割を果たす。
第一章 貝の火
- ほらぐま先生
貝の火の森に住む半人半獣の仙人。動物の大将に与えられる宝石「貝の火」の番人。
人間と会話でき、何でも知ってると評される物知りだが、賢治の手帳に関する手掛かりは持っていない。代わりに、動物と話せるようになる貝の火を預けてくれる。
- ホモイ
既に他界しており、貝の火の森の石碑で眠っているウサギ。
生前は優しく勇敢なウサギであり、ヒバリの子を助けたことでヒバリの王から貝の火を譲られ、動物の大将になった。しかし、キツネに煽てられたことで大将の地位に慢心し、キツネの悪事に利用されてしまう。父に叱られ、父と共にキツネを撃退したが、勇気を失ったために貝の火が砕け、視力を失ってしまった。
章の終盤に主人公の前に姿を現し、「あなたが心正しい者であれば自然と手帳は集まってくる」と教えてくれる。
- キツネ
昔、動物の大将になったホモイにごますりして取り入り、様々な悪事を働いた狐。
ホモイが言いなりになったのを良い事にヒバリを捕らえる暴挙に出たが、ホモイとその父に撃退されヒバリを救出され、その後ほらぐま先生に捕まる。
現在は改心しており、封印された貝の火の見張り役を務めている。
第二章 カイロ団長
- カイロ団長
大きなトノサマガエル。イーハトーヴォ市街地で酒場「カイロ団長の店」を開いたオーナー。
あくどい商売を行っており、悪い噂が絶えない。
手痛いしっぺ返しを食らって閉店した後は心を入れ換え、外国へカクテル作りの修行に旅立つ。後に、礼儀正しいバーテンダーとなって帰ってくる。
- アリの女王
お酒造りが得意なアリ達の女王。アリの花畑に住んでいる。
カイロ団長に酒を安く買い叩かれているが、彼女の方はお得意さんであるカイロ団長を信じ切ってしまっている。臣下のアリ達からは強く慕われているが、カイロ団長を一切疑わないお人好し(お蟻好し?)っぷりには苦言を呈されている。
第三章 虔十公園林
- 虔十
市街地の北東にある村に住んでいる心優しい少年。
スギの苗を植えることを楽しみにしていたが、何者かに盗まれてしまい、ずっと泣き暮れている。
- ヘイジ
虔十の隣の家に住む偏屈者。昔から虔十を嫌って虐めている。
- フクロウ
虔十の村の北にある大きな樫の木に住む梟。
枯れた植物を蘇らせる不思議な力を持っているが、人間の大人を嫌っている。
第四章 土神と狐
- 樺の木
土神の森に生えている一本の木。人間と会話できる。話し掛けると擬人化イメージの女性の顔グラが表示される。
土神と狐の両方から言い寄られており、意図せずして三角関係の中心に立ってしまっている。現時点では狐の方に惹かれつつある。
- 土神
土神の森の男神。乱暴者だが正直者。かつては農民達の神だったが、今では忘れ去られてしまっている。
樺の木に惹かれているが、狐と違って知識不足なために上手く口説けず、嫉妬混じりに狐を嘘吐きと呼んでいる。
- 狐
土神の森に住む狐。博学かつスマートで、豊富な話題や持ち寄った本などで樺の木の気を引いている。
一方で、かもがや以外に何も無い場所にずっと居座る等、奇妙な行動も目立つ。
第五章 グスコーブドリの伝記
- グスコーブドリ
イーハトーヴォ火山局の技師。
15年前の飢饉で両親を喪ったため、農民達を凶作から救うために奮闘し続けている。
- ネリ
グスコーブドリの妹。火山局がある村で兄と共に暮らしている。
第六章 オツベルと象
- オツベル
イーハトーヴォ一の大富豪を自認する商人。
金儲けのためなら手段は選ばず、白象を利用した非道な金稼ぎを企む。
- 白象
好奇心旺盛な白い象。人間が働く姿に興味を示し、オツベル邸へ見物に来ている。
自慢の怪力で仕事を手伝ったことでオツベルに気に入られるが、それが災いして酷い目に遭う。
- 黒象
白象の仲間。オツベル邸の西の森に住んでいる。白象と違ってオツベルを警戒している。
第七章 セロ弾きのゴーシュ
- ゴーシュ
活動写真館の専属楽団「金星楽団」のセロ奏者。市街地西の村にある水車小屋に住んでいる。
ファゼーロ達にセロを教えた人物だが、練習仲間である動物達が去ってからは練習をやめてしまい、最近はセロの腕前もすっかり落ちてしまっている。
第八章 雪渡り
- 四郎
雪渡りの村に住む少年。コンザブローたち狐と仲が良く、狐は人を騙したりしないと信じている。
- カン子
四郎の妹。兄と同じく狐と仲良し。
- コンザブロー
雪渡りの村の近くにある秘密の村「キツネ村」を代表する白狐。四郎・カン子兄妹と仲が良い。
気に入った人間をキツネ村に案内してくれるが、基本的に人間の大人はキツネ村に入れない。
- せいさく
雪渡りの村の広場で酒盛りしている酔っ払い。泥酔していたために饅頭と見間違えて馬糞を食べてしまったが、狐に化かされたと決め付けて仕返しを目論む。
- たえもん
せいさくの飲み仲間で、空っぽになるまで酒を飲んでいた。狐に化かされたと思い込んでいる。
最終章 銀河鉄道の夜
- 宮沢賢治
詩人であり童話作家であり、学校教師や農業指導者としても活躍する宮沢賢治その人。
イーハトーヴォで最も尊敬されている人物。彼に会うことが主人公の目的だが、多忙故に各地を飛び回っており、入れ違いになることも多く、なかなか会えない状況が続く。