概要
1932年に発表。
当時としては最先端の様々な自然科学や工学の知識が盛り込まれ、作者の宮沢賢治自身の実体験も多く反映したとされている。
数少ない生前発表作の一つでもある。
1994年と2012年にそれぞれアニメ映画化。
1994年版は作者の没後60周年を記念して制作され、制作費の一部は岩手県からの募金により賄われた。
ストーリー上若干のアレンジはあるが、概ね原作通りである。
2012年版はますむらひろしの漫画版をアニメ化しており、登場人物は擬人化された猫となっている。
こちらでは他のますむら作品から借用したキャラクターも登場する。また、ストーリーも特に終盤は変更点が多い。
あらすじ
木こりの父親を持つグスコーブドリ少年は、イーハトーブのとある森で家族と共に仲良く暮らしていた。
ところが度重なる冷害や悪天候による飢餓、人攫いによって一家は離散。
ひとりぼっちとなったブドリは養蚕業や農業などの手伝いを経て、クーボー博士との出会いで学問の道に進み、火山局の仕事を紹介される。
ペンネン技師の下で火山局の技師となり、火山対策や人工雨、発電所など様々な計画を成功させ、妹とも再会を果たす。
しかし自分の家族に悲劇をもたらした異常気象がまた発生する危険性が高まり、ブドリはある計画に手を出し始める…。
主な登場人物
グスコーブドリ
(声 1994年版:峰野勝成・(幼年期)高山みなみ/2012年版:小栗旬)
様々な苦難を乗り切ってきた真面目で心優しい青年技師。
グスコーネリ
(声 1994年版:篠倉伸子・(幼年期)高山みなみ/2012年版:忽那汐里)
ブドリの妹。
両親の失踪(子に食糧を残すため森で餓死していたことが後に判明)直後に誘拐されて兄と生き別れになるが、養親に拾われて無事に成長し、結婚し子も出来た。後にブドリと再会する。
人さらい
ネリを連れ去った謎の男。
おそらく人身売買関係者と思われるが、泣きわめくネリに手を焼いたのか少し離れた集落の農家の敷地近くに置いて去って行った。
てぐす飼い
(声 2012年版:内海賢二)
ブドリ一家が住んでいた家と森を買い取って養蚕業を始めていた男。
ブドリを哀れに思ったのか、助手として雇い入れた。1年後、火山噴火による降灰で事業を諦め、ブドリに暇を出して去っていった。森でブドリの両親の遺体をみつけ秘かに葬っていたことが後に判明している。
赤ひげ
てぐす飼いの元を離れたブドリが直後に出会って雇われた農業経営者。
条件の悪い地域の沼ばたけ(水田)でオリザ(稲)の栽培に挑んでいた。
投機的な作付けをする男だが、ブドリに亡き息子の残した本を読ませ学問をつけさせた。
数年後、不作で経営が苦しくなり、ブドリに幾何かの退職手当を出して暇を出した。
後にブドリが会いに行くと以前よりかは豊かになれていた。
クーボー大博士
イーハトーブで高名な学者。
あかひげの元から街に出たブドリが無料講義の聴講生になったことを縁に、火山局技師の道に進ませ、彼の良き相談相手となる。
ペンネンナーム
火山局の老技師。
ブドリの良き上司となる。
余談
盛岡高等農林学校(現在の岩手大学農学部)で農学を修めた農業指導者でもあった作者の、故郷の農業発展を願った思いが多く込められており、発表当時の飢饉や人身売買、病気で若くして亡くなった妹の存在など多くの経験を色濃く反映したとされている。
作中で海の波で発電する潮汐発電所や、火山噴火で二酸化炭素が放出されて温室効果をもたらすなど、1930年代当時としては一般的でなかった知識を童話の中でわかりやすく紹介・解説されている。
関連項目
:本作品もモチーフにしたキャラクター