「……うん美しい…… すばらしい花火だよ…」
「ショータイムの幕開けにふさわしい…」
CV:堀内賢雄(映画「天使の涙(エンジェルダスト)」)
概要
シティーハンターにおける実質的なラスボス(後日談にまだ敵が出て来るため)。
名前から分かる通り、日系人。年齢は50代から60代くらいだと推測される。
中南米を本拠地とする麻薬密売組織「ユニオン・テオーペ」の総帥にして長老(メイヨール)と呼ばれる人物。
作中の重大な事件の黒幕であり、物語初期で依頼を断った槇村秀幸に刺客を差し向けて殺害、後に獠抹殺の仕事を反故にしたミック・エンジェルを瀕死にした後、エンジェル・ダストで彼を操り、獠と戦わせた。
主役二人にとっては獠は後述の因縁があること、槇村の死が香が裏社会に入るきっかけになることから、全ての元凶とも言える存在である。
作中の序盤ではシルエット(横顔)のみ登場。日本進出を企てるも、槇村の死による獠と香から日本支部に打撃を与えられ、組織の幹部である将軍(ジェネラル)まで敗れたことから、これ以上の深入りは危険として一時撤退を余儀無くされる。
と、かなりの長期間物語から退場していたが、連載最終盤に当たって最大最悪の強敵として再登場を果たす。
麻薬組織の枠を超えた事業に手を広げたことで、全米を勢力下に置くほど組織を発展させる。
更に強力な新型エンジェルダストの開発にも成功し、終盤では各国の軍から注文が殺到するなど、国家とも手を組もうという段階に来ていた。そして再び日本進出を目論見、本格的に物語に登場する。
左足は義足になっており、爆弾が仕込まれている。しかし、足が不自由とは思えないほど支障なく行動していた。
仕方のないことだが、海原の顔つきが連載初期と再登場で大分変ってしまっている。
性格
犯罪組織のボスらしく冷酷で、殺人に対する躊躇いは皆無。たった一人の裏切り者であるミックを殺すため、ジャンボ機を爆破し、乗客と乗組員もろとも皆殺しにするほど。
失態を犯した部下にも容赦がなく、熱した指輪で額に「死の烙印」を施した上で、時間内に最後通告を守らなければ抹殺している。また戦闘を「ショー」と呼び、楽しむ悪趣味な面も持つ。
一方で冴羽アパートを訪ねた時など、時折その行動に似つかない穏やかな表情を見せることもある。また話し方自体は丁寧で、学識が感じられる。
狂人ではあるが、ただの麻薬組織を国際的な規模にまで成長させる、上記のような恐怖政治を敷きながらも多数の部下を従えているなど、トップとしての手腕やカリスマはある模様。
その容姿は香のよく知る人物とも似ているが…
人物(ここからはネタバレになります)
過去
かつては中米の小国の反政府ゲリラに所属し、ブラッディ・マリィーの父と並び、部隊でも一二を争う勇猛な戦士だった。ゲリラの村に拾われた日本人の少年の名付け親にして育ての親でもあり、マリィーの父と共に彼に戦い方の全てを教え、鍛え上げる。
その少年のことを実の息子同然に愛しており、ヘマをして敵の捕虜となった少年を助けるため、部隊の制止を聞かず一人敵陣に乗り込み助け出したほど。この時に逃走中に左足を失うも、その少年を責めるようなことはせず、「足一本で命が助かれば安いものだ」と言うように、ただ黙って微笑んでいた。
しかし、長すぎる戦いにより、海原は次第に狂気に侵されていってしまう。敗戦の色が濃くなった際には、巻き返しのため、非人道的な作戦を提唱する。それはエンジェル・ダストにより不死の兵士の軍団を作るというものだった。仲間を手駒のように扱うその作戦は当然否決されたが、海原は自分を父親のように慕う前述の少年を騙してエンジェルダストを投与し、独断で戦場に送り込む。
そして、少年はたった一人で政府軍の小隊を壊滅させる。戦果自体はすさまじいものがあったが、その残酷な殺し方には目を背けたくなるものがあり、投与された少年も禁断症状で死線をさまよい正常に回復するまでにはかなりの月日を要した。海原に恐れをなしたゲリラ部隊は彼を追放したのだった。その後も狂気は止まる所を知らず、ユニオンの元締めにまで登り詰め、世界中に悪意をばら撒き続ける事になる。
ここまで説明すれば分かると思うが、海原を父親のように慕っていたその少年こそが冴羽獠であり、彼は海原に対し愛情と悲哀、憎しみが入り混じった複雑な感情を抱いている。
また全滅したと思われていた政府軍の小隊、唯一の生き残りが海坊主。彼の失明の原因はその時の傷によるもの。
戦闘能力
獠の戦いの師匠であるため、彼の射撃の癖や速さを知り尽くしており、その実力は獠と同等かそれ以上だとされている。かつて海原に裏切られ、怒り狂って襲いに来た獠を返り討ちにしている。
作中で銃の腕が獠以上と描写されているのは海原だけであり、かつて親子として過ごしていた相手でもあるため、技量的にも心情的にも、獠にとってはまさに最強最悪の敵である。
エンジェル・ダスト
ユニオンが主に売りさばく違法薬物・PCPの俗称。
非常に強力な麻薬であり、投与するだけで、マインドコントロールや筋力の増強、痛覚の麻痺といった様々な効果をもたらし、額を銃で撃たれても死なない身体になる。
実際に投与された獠やミックは、凄まじい戦闘力と生命力を発揮し、槇村も投与されたチンピラ相手に殺害されている。
しかし、投与された者はその洗脳効果によって、死すらも恐れない人間兵器(もしくは爆弾)に変えられてしまう(ミックが投与された新型に至っては、海原の声以外は全く届かなかったほど)。更に筋力を限界以上に高めるため、その反動で死に至る者もいる。
生き残ったとしても禁断症状により生死を彷徨い、地獄の苦しみを味わうことになるため、まさに悪魔の薬である。
ユニオンはこれを用いて、裏社会の人間や市民を洗脳し刺客に仕立て上げ戦力を増強し、組織力を温存しながら、組織にとって邪魔な存在を抹殺しては、勢力を拡大させていた。
映画「天使の涙(エンジェルダスト)」でも登場するが、時代背景に合わせてかナノマシンとなっている。ただ症状に関してはほぼ同じ。
映画作中で投与されてしまった人物は、直前まで冴羽獠に敗北して両腕のなど複数箇所に銃弾が打ち込まれていたのにも関わらず、凄まじい再生能力で弾を排出した。そして驚異的な身体能力や動体視力を発揮し、終始圧倒していた。
そしてナノマシンによって凄まじい闘争心も得られるが、本来戦いたくないのにも関わらず戦わされることへの精神疲労が見られ(たびたび声を荒げて頭を押さえていた)、最終的には自我がすり減り、体の意思も奪われて自決さえも出来なくなって死ぬまで戦わされることになる。
現在
ユニオン・テオーペの総帥として麻薬の流通や事業の開拓を行い、槇村やミックをはじめとした多くの人間を殺害、もしくは生き地獄を味あわせ、苦しめる。
ユニオンとの全面抗争の前には、わざわざ冴羽アパートを訪れて獠と香に宣戦布告した。一人で対応した香には犯罪組織のトップとは思えないほど礼儀正しく、穏やかな雰囲気で接していた。
しかし、彼の存在を感知した獠が現れると、その狂気じみた素顔を露わにし、彼の前でユニオンの実績を嬉々として語る。この際に獠は狂気に取り憑かれた海原を見て涙を流していた。
その直後に獠と香、海坊主は海原との決着をつけるため、マリィーが潜入した混乱に乗じて海原の客船に乗る。海原は客船の時限爆弾を始動させた上で、彼らを閉じ込め、自分の元へ来るよう仕向ける。
ミックと獠が戦うことになった時は、「友と引き合わせるためにエンジェルダストを投与した自分に感謝して欲しい」と嘯き、戦いを仕向けた張本人でありながら、それを「ショー」と呼び、観客として大いに楽しんでいた。
獠との戦いは長引かず、互いに一発撃ちあった末に心臓を撃ち抜かれて鼓動を止める。その後、地獄のような戦争の中で人間の狂気しか見えなくなっていたという心の内を獠に伝え、狂気の暴走を止めてくれたことに感謝をしてそのまま息を引き取った。
「ありが…とう… 息子……よ…」
余談
- ミックは海原が自分にエンジェルダストを投与した理由は、獠と戦わせるためではなく自分を助ける方法がエンジェルダストだけだったからではないかと考えている。獠はそのことに対しては明確な返答をしなかったが、狂気と正気が葛藤するあまり、海原自身も自分の行動が狂気なのか正気なのかわからなくなっていたのではないかと答えている。
- 作中の博識さが感じられる言動や獠の名前を見るに、獠の教養深さは海原の影響によるものと考えられる。なぜ「海原」の姓を名乗らせずに「冴羽」という苗字をつけたのかは不明。
- 設定的にラスボスに相応しいが、この後でエンディングに続くエピソードが1巻分待っているため最期の敵ではない。
関連タグ
息子殺しを依頼した人物:ミック・エンジェル
過去の同志:ブラッディ・マリィーの父、教授
関連人物
比古清十郎:別作品の伝説的な強さを持つ主人公の師匠。「育ての親で名付け親」、「主人公を上回る技量」、「主人公をとても大切に思っている」という点などが海原と共通している。
但し、狂気に侵され、主人公への愛が鳴りを潜めてしまった海原とは異なり、比古は物語を通して主人公の味方であり続け、彼に欠けていた「生きる意志」を持つように促している(因みに獠の場合は香との愛情で生きる意志を持つようになっている)。
シャンクス:海原の「少年時代の主人公の師匠」「足一本で済めばが安いもんだ」から彼を連想したジャンプ読者は多いと思われる。
神凪厳馬:風の聖痕に登場する主人公の父親。「幼少期から主人公を鍛えた師匠」「最強の一族として戦いの中で生きるあまり一般的な価値観から逸脱しており、自分でも自覚していたが引き返せなかった」「主人公にも最強の地位と実力を付けるために周囲の反対を押し切って無理をさせてしまう」「そんな自分から主人公を解放したかったが、愛情が伝わらず裏切りとしか受け取られなかった(主人公は別性を名乗っている)」「成長してなんでも屋を始めた主人公に対し配下たちを送り込む」「いずれも敗れたため自身が動き出して一騎討ちを演じる」「実は親子で性格がよく似ており陰湿な部分がある」など共通点がある。ただしこちらは実父。
エンドオブエタニティ:中年であり凄腕の拳銃使いである「カーディナル・ロエン」が登場する。「ある組織の頂点に立つ人物であり、軍隊を動かせる立場」「ある物質に魅入られ、それを人体実験に用いて多くの命を奪った」「自分でも過ちを犯していると理解しているが引き返せなかった」「そんな中でも死ぬ運命だった主要人物を結果的に助けた」「主人公たちが決戦の場まで殴り込みを掛け直接対決を行う」など海原と類似点がある。またロエンの狂気の発端は愛する女性を失ったことであり、これはパラレルの獠と同じである。その狂気を後押ししたのが「巨大な機械によって人間の命が選定される」という事実であり、人の命が簡単に失われるこの世界を正すために人体実験を行った(「人の命が簡単に失われる中で狂気を抱いた」という点は海原と同じである)。