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槇村秀幸

まきむらひでゆき

槇村秀幸とは、『シティーハンター』及び『エンジェル・ハート』に登場する重要人物である。
目次 [非表示]

「…わかった じゃ仕事の話にはいろうか」

「どうだ おまえ好みの仕事だろ美人だし…おれの妹といい勝負だ…………どうした獠……」


CV:田中秀幸

演:葛山信吾(ドラマ版『エンジェル・ハート』)/安藤政信(NETFLIX映画版)


概要編集

アメリカから日本へと渡ってきた凄腕のスイーパー冴羽獠が、『シティーハンター』として日本国内でコンビを組んだ最初の相棒であり、後に彼と代わって新しく獠の相棒となる槇村香の義兄である。

物語の序盤で死亡してしまうキャラクターだが、彼の存在は『シティーハンター』のストーリー根幹に大きく関わり後々まで影響を及ぼすことになる。


シティーハンター編集

原作漫画版編集

元は刑事で、亡くなった父親の志を継いで警察官になった。

警察に籍を置いていたころは警視庁の刑事課に勤務し、野上冴子と数々の凶悪事件を解決する名コンビだったが、人身売買組織の捜査中に囮捜査で婦人警官を犠牲にしてしまったことで責任を感じ警察を去る。

以前から法の無力さと警察官としての行動に限界を感じていた槇村は、社会の裏に蔓延る法では裁けない本当の巨悪を裁くため、冴羽獠と『シティーハンター』としてコンビを組みスイーパーとなる。


使用する拳銃は、後に香も使用する事になるコルトローマン・MkⅢの2インチモデル。

普段は獠に銃器の管理を任せており、依頼人から「素人の店ではない」シルキィクラブに呼び出された際には獠から護身用として上記のコルトローマン・MkⅢを渡される。

槇村本人は 「ありがたいが、お守りにしかならんな…俺の腕は錆びついている」 とぼやいていたが、背後から不意を突いて襲いかかった敵には咄嗟にテーブルにあったナイフを投げつけて牽制するなど、獠に負けず劣らず状況判断に優れて腕っぷしも良く、周りはそうは思っていない。

獠も上記の槇村がぼやいた言葉に対して 「そう思っているのはお前だけだよ」 と返しており、銃の腕も獠が認めるほどだったことが分かる。


見た目は一見すると眼鏡をかけた冴えない低血圧昼行灯な風貌である。

警察官時代に警視庁で野上冴子とコンビを組んでいた時期は容姿を比較され刑事課の者達からは「警視庁の月とスッポン」と呼ばれていた。

だが、いつも眠そうなとぼけた表情と眼鏡で分かりにくが、実はかなり端正な顔立ちをしている。ただし、格好には気を使わない性格で、いつもだらしない服装であったらしい。

野上冴子と槇村は恋愛関係にあったらしく、「獠を含めてまるで三角関係みたいだった」と後に冴子は香に語っていた。

ちなみに、冴子と槇村の二人には投げナイフの早技」を得意とする共通点がある。

また、槇村は非常に面倒見が良く、香と出会う以前のまだ荒々しく、かつだらしのない獠をとても気にかけており、彼にどんなにつき離されようとも側にいた。

普段は冷静沈着で獠の良きストッパー役である(本人曰く 「俺がいなけりゃ誰がお前の暴走を止めるんだ」 とのこと)。

人情家で泣き上戸でもあり、獠が人間らしい温かさを取り戻すことに彼も一役買っていた。


槇村は非常に妹思いであり、妹の槇村香のこととなると人目も憚らずに泣き喚いて取り乱す一面もある。

そんな大切な唯一の家族である妹の香とは実は血の繋がりはない。

香は警察官だった槇村の父が追跡中に事故死させてしまった殺人犯・久石純一の娘で、当時まだ赤ん坊だった香を槇村の父は贖罪の気持ちから養女として引き取ることにし、香は槇村家の娘として真相は伏せられたまま育てられた。

しかし父はその5年後、槇村がまだ14歳だった時に亡くなり、槇村は父から香の実の母親の形見である指輪を託され、彼女が20歳になった時に指輪を渡して真実を告げるつもりでいた。


────そして、香の20歳の誕生日である3月31日。

当時、日本への進攻を開始していた中南米を本拠地とする麻薬密売組織ユニオン・テオーペは新宿駅伝言板への『XYZ』を使い上述のシルキィクラブへと『シティーハンター』を呼出した。

依頼人の確認に出向いた槇村を待っていたのは、ユニオン・テオーペ日本支部の幹部であるシルキィクラブのオーナーだった。

面会したシルキィクラブのオーナーは「組織が日本での麻薬密売ルートを構築する障害になる、関東一円を牛耳る暴力団の首領を抹殺してほしい」と仕事の依頼をするが、槇村はこれを断固として拒否する。

槇村は刑事であった頃から麻薬を最も憎んでおり、シルキィクラブのオーナーが妹である香の存在まで仄めかして依頼を受けるように脅迫した時は嫌悪感を顕にして激怒し 「きさまらが殺し合うのは勝手だ!だが俺の身内に手を出した時は命はないと思え!!」 と返し、後ろから襲ってきた警護の黒服二人を投げナイフの早技であっさりと捩じ伏せてしまう。

更にシルキィクラブのオーナーの額に拳銃を突きつけ 「悪魔に魂を売る気はない!!悪魔はドブネズミに劣る!!」 と吐き捨て、ユニオン・テオーペに敵対する意思を見せた。

この行為への報復により、槇村は自身が最も憎むべき麻薬である『悪魔の薬・PCP』こと通称『エンジェルダスト』に侵され狂人兵士と化したチンピラにどしゃ降りの雨の中を急襲される。

悪魔の薬『エンジェルダスト』により驚異的な力を発揮し、マグナム弾を直撃で何発も喰らっても構わずに襲いかかってくるゾンビのごとき狂人を相手に応戦するも、ズタズタに破壊された車のドアの窓枠部分を背中に突き刺されて致命傷を負わされる。

降りしきる雨の中、瀕死の状態で獠のもとまで辿り着いた槇村は、死の間際にユニオン・テオーペの始末と、香の20歳の誕生日に渡す筈だった指輪と真実を獠に託した。


「これは死の麻薬組織ユニオン・テオーペの手口だ……」


「……香に伝えることは…?」


「──指輪を…香に……香を……頼む────」


「…しばらくの間 地獄はさびしいかもしれんが すぐににぎやかにしてやるよ………槇村……!!」



獠は槇村の殺しを命じたシルキィクラブのオーナーを始末し、更には店を潰して売上金を全て巻き上げる。

アパートでひとり、兄の秀幸の帰りを待っていた香は訪れた獠から兄の死を知らされる。

香は獠から、殺された兄だけでなく妹の自分までがユニオン・テオーペの抹殺対象となっていることを告げられ、「金を持って逃げろ」と勧められるが、彼女はユニオン・テオーペから逃げるどころか戦う決意をし、獠の新しい相棒となった。


「この街でやらなきゃ……いけないことが…できたから!!あんたには新しい相棒が必要でしょ!」


TVアニメ版編集

1987年から読売テレビ系列で放送されたTVアニメ版では監督のこだま兼嗣氏の意向により、「小さい子供が観る様な時間帯のアニメで麻薬や狂人を描写するのは良くない」として麻薬密売組織ユニオン・テオーペが劇中に全く登場しない。

しかしTVアニメ版第一期の第5話「グッバイ槇村 雨の夜に涙のバースデー」にて国内最大の犯罪組織である『赤いペガサス』に雇われた用心棒の殺し屋ジェネラルに殺されてしまう。


「赤い……ペガサス……ペガサスの翼をもぎ取ってくれ……受けてくれるな……獠……俺の依頼を……報酬は……」


「既に受け取ってある……俺の胸に刻まれたお前との日々だ…!!」


ジェネラルは卑怯にも義手に仕込んだ銃『黒い右手』によって不意打ちで槇村を殺害していた。

獠も同様の手段で撃たれそうになるが、死の間際に槇村がこれを伝えていたため親友の命を救うこととなった。そして『赤いペガサス』も首魁であるガルシアを喪ったことで壊滅した……はずだった。


TVアニメ版でも槇村は第一期の第5話と物語の早期に亡くなって退場してしまったため、劇中では披露されてはいなかったが家事や料理も得意だったらしく、香曰く「アニキはあたしより料理が上手いくらいだった」とのこと。

また、TVアニメ版では獠と槇村の仕事以外でのプライベートな絡みが僅かながら増えており、二人で泥酔したまま槇村家のアパートの部屋に朝帰りして香に怒られるシーンがあった。

ちなみに、槇村が獠に「家出した妹の写真」だと渡した物が、原作では「槇村が学生時代に学芸会で女装した写真」だったのに対して、アニメ版の第4話では「槇村の学生時代の恋人の写真」になっていた。


TVアニメ版第二期である『シティハンター2』の第27話(通算・第78話)「槇村からのメッセージ 思い出は永遠に(前編)」では、槇村が亡くなってから1年と半年後になっている(香が20歳から21歳になった)。

この話では刑事時代の槇村(警視庁の月とスッポン時代)の過去が掘り下げられており、この頃に海坊主とも出会っており、彼と槇村は面識がある設定になっている。

悪党を暗殺する仕事を終えた海坊主が、始末した悪党の手下たちに追われている中、槇村が突然現れて足止めを買って出る。

この時が二人の初対面となり、海坊主からは「なぜ刑事が殺人者の自分を見逃すのか?」と問われるが、槇村は「お前は社会のゴミを掃除しただけ。そうだろう?」と答えている。


更にこのエピソードでは、かつてインターポールの捜査官ネルソンと共に仕事をした過去があると判明する。

そして現代。ネルソンは、槇村が海外から麻薬を密輸したという容疑があるとして来日し、警視庁の協力を取り付けて捜査を始め、更には香と接触して麻薬のことを聞き出そうとする。

そんな中、『赤いペガサス』の残党であるギルモアによって秘密裏に立ち上げられていた『新生・赤いペガサス』までが麻薬の件を嗅ぎつけてしまい、「槇村の妹ならば何か知っているかもしれない」として香を狙い始める。

これにより、槇村は一転して汚職刑事の疑いを掛けられてしまったのだった。


実は槇村は、ネルソンから「アジアの麻薬ルートを探るという極秘任務(潜入捜査)」を受けていたのだが、その時に顧客の振りをして購入していたのが“海外から持ち込んだ麻薬”である。

だが槇村が麻薬に溺れるはずがなく、密かに海へと流して捨てていたのだ。

ギルモアが狙っていたのは麻薬そのものではなく、「麻薬ルートに関する資料(フロッピーディスク)」だった。

これがあれば『新生・赤いペガサス』は、再び暗黒街の頂点に立てると黒幕に焚きつけられたのだ。


後編ではギルモアが香を拉致し、助けに来た獠との一騎討ちを展開する。

銃を落とされた獠は拳でギルモアを気絶させた……かに思われたが、起き上がったギルモアの義手(に偽装した砲身)に撃たれそうになる。

槇村がジェネラルに殺された時のシチュエーションを思わせたが、間一髪のところで香の銃弾がギルモアを撃ったことで獠は救われた。


その後、黒幕はまんまと獠たちを利用してフロッピーディスクを手に入れ香を人質にする。そして「ギルモアは用済みになったら殺すつもりだった」と口を滑らせたところ、生存していたギルモアに聞かれ仲間割れを起こす。

黒幕はギルモアを銃撃するも掴み掛かられ、諸共に海に落ちる形で道連れにされた。

皮肉にもその海は、槇村が麻薬を捨てていた場所であった。


なお、騒動の発端である麻薬ルートの資料は、槇村がよく訪れていた孤児院の院長に預けていた。

それも、槇村がジェネラルによって殺される前日に…。

香は「なぜアニキがそんなことをしたのか」と疑問に感じていたが、恐らく自らの死期を悟っていたのではないかと推測されている。




エンジェル・ハート編集

今作では『シティーハンター』としての活動は槇村自身が始めた事になっており、表向きは刑事として行動し、その裏では『シティーハンター』としての二足の草鞋を履いていたと云う設定になっている。

前作とは異なり、今作では情報収集能力には長けているが、格闘や銃撃は不得手。銃の腕前も獠から「素人同然」と言われており、野上冴子につきまとっていたストーカーの遠山一真によって殺害されてしまった。


また性格も変わっており、前作では器が大きく冷静沈着な人物だったが、こちらでは香が幼い頃から精神的に成熟・達観している代わりに、感情的になりやすい面が度々見られる。

父が死んだタイミングも異なり、秀幸が18歳の時に亡くなっている。多忙な父を見て育ったため、警察官志望ではなく、大学受験を考えていた。

しかし、父が命懸けで赤ん坊を守り死んだところを見て考えを改め、警察官になった。


冴子とは明確に恋人関係であり、婚約指輪を密かに購入していたが、お互い素直になれず、渡せないまま死んでしまった。


劇場版シティーハンター編集

劇場版シティーハンター 新宿PRIVATE EYES (2019)編集

劇中では既に故人なので登場しないが、劇中では香が度々その存在を言及していた。

この映画のエンディングでは、TVアニメ版『シティーハンター』の数々の名エピソードを新規作画によって再現したダイジェスト版アニメが流され、槇村が登場するエピソードからは「獠と二日酔いの状態で朝帰りして香に怒られながら朝食を食べるシーン」「公園で獠に香の出生を語るシーン」「ジェネラルに襲われて致命傷を負い、獠に遺言を伝えて息絶えるシーン」の3つが描かれた。


また、特報PVのナレーションは田中秀幸氏が担当した。


劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト) (2023)編集

『赤いペガサス』に纏わる獠の回想として槇村の死亡シーンがリメイクされて描かれ、同時に「赤いペガサスはユニオン・テオーペの下部組織である」という設定が加わった。

獠が槇村への弔いを誓う台詞が原作と同じ内容に改変されている。

また、野上冴子の回想シーンでも登場し、まだ槇村が警察官としての職務に希望を見いだしていた頃である「警視庁の月とスッポン」時代のワンシーンが描かれた。




余談編集

  • 1985年に原作の初期で死亡した時点では「秀幸」と言う下の名前は設定されておらず、1987年のアニメ版1期のエンディングでの役名クレジットは「槇村」の2文字だけだった。1988年に原作の芹沢綾子のエピソードである『墓地のナンパニスト』内で描かれた槇村の墓参りのシーンで墓石に刻まれた名前が描かれ、これにより「槇村秀幸」と云うフルネームが判明した。これは原作者の北条司氏がアニメ版の担当声優である田中秀幸氏の名前から採った名前で、北条氏もこのエピソードを描くまで槇村に下の名前がないことをすっかり忘れていたそうである。以降は、原作とアニメの両方で公式設定となりこの名前が使われている。

  • 『シティーハンター』の原作漫画とTVアニメ版の両方で物語初期の僅か数話のみで退場となってしまうが、槇村は根強い人気を持つキャラクターである。TVアニメ版では原作より獠と一緒にいる場面が増えており、ふざけたり自分をからかったりする彼に忍耐強く付き合ったり、軽くあしらったりするところが描かれている。また第5話の冒頭では獠と香と三人で朝食を食べるシーンもあった。

  • 死後は回想以外は登場しないが、原作のエピソード『墓地のナンパニスト』において幽霊の槇村が描かれており、自分を口実に墓場でナンパする獠に呆れて「呪い殺してやろうか」と呟く場面が描かれていた。またアニメオリジナルエピソードとして「槇村からのメッセージ 想い出は永遠に(前・後編)」(『シティーハンター2』第27、28話)、「追憶の首飾り事件!獠と悪女と槇村と」(『シティーハンター '91』第12話)が製作されている。

  • 原作漫画の後半(JUMP COMICS版単行本では第29巻)で、冴子の7人目の見合い相手で槇村と生き写しの容姿を持つ刑事として北尾裕貴が登場。「一見冴えないが優秀」という点は彼と共通する。香が、兄と間違えて思わず抱きついてしまうほど容姿はそっくりであるが、槇村に比べると北尾は(表面上は)軽い性格で、表情の作り方や喋り方なども違う。北尾は同じく警察官だった兄を殺されたことから、殺し屋を激しく憎悪しており、その頂点に立つ『シティーハンター』を逮捕しようとして獠たちに接近した。しかし獠と香の言動を見て、「毒を以て毒を制する」と考えを改め、最終的に新宿を去った。なお、獠は北尾と知り合った日から数日連続で朝まで歓迎会を開き、彼を無理やり付き合わせていた。これに関しては北尾と別れる時に「古い友人と飲み明かした気分だった」と語っている。

  • アニメ版(『シティーハンター'91』の第2話「さらば香!シティーハンター逮捕指令」)では北尾の「槇村と瓜二つ」という設定をアニメ1話分のエピソードで消化することが出来なかったらしく、北尾の役柄は苦肉の策として『桑田』と云う名前の全く別人の刑事に設定が変更され、制作スタッフがサンライズ繋がりを意識したお遊びなのか、外見は『機甲戦記ドラグナーマイヨ・プラート』にソックリで、声は田中秀幸氏ではなく『機動戦士ガンダムシャア・アズナブル』で有名な池田秀一氏が担当と、ある意味では豪華なキャラクターになっていた。

関連タグ編集

シティーハンター

エンジェル・ハート


親友兼パートナー:冴羽獠

義妹:槇村香

恋人:野上冴子

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