概要
「権兵衛」という名前の猟師が鴨を捕まえに行く話であるが、大きく分けて2パターン存在する。
あらすじ
権兵衛さんの運が悪い方の話
権兵衛は鴨を捕まえるため、罠を設置した。その罠は餌を縄で括りつけ、一気に100羽捕まえられるよう縄を綱に結び付けるという大雑把な物であったが、計画は成功し、全部の罠に鴨が食いついた。
しかし100羽の鴨が一斉に飛び立ってしまい、権兵衛は綱に手が絡まってそのまま引きずられて空を飛んだ。気付けば地面は遥か下、権兵衛は必死になって綱を掴む。すると、五重塔が見えてきたので、権兵衛は天辺に捕まり、綱を解いた。鴨は空の彼方に飛んでいったが、権兵衛は塔の上から降りられなくなる。
見かねた小坊主たちが網を用意して飛び降りるように言い、権兵衛は勇気を出して飛び込む。すると落ちてきたはずみで小坊主たちはゴッツンコ、目から飛び出た火花で五重塔は燃えてしまうのだった
メジャーなのはこちらで『まんが日本昔ばなし』などでもこちらが採用されている。
一部の地域では傘に捕まってメリーポピンズ状態でぶっ飛ばされたり、巨大な粟を収穫しようとしてその弾力でぶっ飛ばされたりするエピソードが挿入されるケースもある。
欲張りすぎて失敗する、骨折り損のくたびれ儲けという話であるケースが多いが、最後にうさぎや山芋、どじょうを捕まえて転んでもただでは起きないというハッピーエンドになるバージョン、運良く川へ落ちた権兵衛が自分が捕まえた鴨に突かれてようやく自分の欲深さを反省し、鴨に謝って空に放すバージョンもある。
権兵衛さんの運が良い方の話
権兵衛は鴨を捕まえる為、鉄砲を持っていった。池では無数の鴨が泳いでいる。しかし権兵衛は1発しか銃弾を持っていなかったので、一度に仕留めるためにわざと銃身をひん曲げて弾道を変えようとした。権兵衛が撃った弾丸は変な軌道で飛んでいったため跳弾を繰り返し、全部の鴨を貫通して対岸に消える。
権兵衛はさっそく池に入って鴨を捕えていき、対岸に向かう。泳ぎ切った権兵衛は岸にあった根っこをつかもうとして、運よくその根っこのすぐ近くにいた兎の耳を掴んで、そのまま捕獲した。
対岸では運よく弾丸が急所に命中した猪が絶命しており、運よくその猪は山芋を掘り返している真っ最中だった。権兵衛は山刀を取り出して山芋を掘ろうとするが、手が滑って山刀がすっぽ抜ける。
すると運よくその刀は近くで卵を抱いていた雉に突き刺さっており、一撃のもとに絶命した雉と卵を回収する権兵衛。猪や山芋もせしめて池を渡って戻ってきた権兵衛の靴や蓑には運よく池の蟹やナマズ、ドジョウなどが入っており、権兵衛は大儲けしたのであった。
こちらは比較的マイナーで、熊本県あたりではこちらの方が有名。権兵衛さんの息子の誕生日というパターンもある。
『まんが日本昔ばなし』では「藤助どんの鴨とり話」の題で放送された。
ちなみに全部の値段を現代円で算定すると大体こんな感じになる。
- 鴨:1羽大凡5000円、10羽として5万円
- 兎:1羽大凡6000円
- 猪:1頭最低10万円
- 山芋:kg平均400円として『まんが~』で言っていた2貫目(7.5kg)とすると3000円
- 雉:1羽大凡7500円
- 卵:1パック300円
- モクズガニ:1匹1500円
- ナマズ:1匹1000円
- ドジョウ:1匹600円
合計:16万9900円
こりゃあ大儲けである。半分以上猪だけど。
余談
- 「運が悪い方の話」は同じくドイツにも「ホラ男爵」ことミュンヒハウゼン男爵の逸話が残っている。しかしこちらは「脂身を縄に括りつけ、それを鴨が食べてお尻から出てきた脂身を別の鴨が…」という下品な方法であり、柳田理科雄曰く「これだと最初に脂身を食べた鴨が後発の鴨全部と男爵の体重を支えることになるので飛ぶのは不可能」と断言している。