ドジョウ
どじょう
日本、中国、台湾、朝鮮半島の平野部の水田や湿地などに生息。食用として養殖も盛んに行われ、活魚として100g単位で売られていたり、観賞魚の活き餌や釣り餌としてもよく用いられる。
コイの親戚だが底生に適応しており、細長い体型と目立つ口ヒゲが特徴。ひげは全部で10本もあり、これは泥や砂底を探ってエサを探すのに用いる。味もわかるらしい。
よく砂地や泥に潜っているので、ドジョウという名前は「泥(土)から生まれる魚」という意味で名付けられた。
近年の研究で、「これまで「ドジョウ」とされていたものには複数の種が含まれる」という事が分かっている。ドジョウの専門家である中島淳は2017年にドジョウ(狭義)、キタドジョウ、シノビドジョウ、ヒョウモンドジョウの4種に分けた。
この内のドジョウ(狭義)は日本産とユーラシア大陸産のものでは遺伝子的に異なっており、形状的にも見分けられる事が知られている。ドジョウが新種として学名が付けられるのに使用された標本は、中国産である。つまり、日本のドジョウは大陸産のドジョウとは別種の可能性が高いと言われている。尚、日本産ドジョウには、もう既にMisgurnus rubripinnisという学名が提唱されたいる為、新種とはならない可能性が高い。
丸ごと煮込んだり、背開きにして内臓を取り除いたり、柳川鍋に仕立てて食べる。柳川鍋に代表されるように、同じく泥育ちである植物ゴボウとの相性が良いとされている。柳川鍋と違って卵でとじないものもあり、「ぬき鍋」や「骨ぬき」と言われる。元は丸のまま煮込んだドジョウ鍋と区別するため、開いて調理し骨を抜いたことから来ている名称である。
また、ドジョウの鍋を提供する店は語呂の良さなどから「どぜう鍋」と書く店が多い。江戸下町で発達した料理であるため、古くからの関東好みの甘辛く味付けしたものが多い。
小振りのドジョウを丸ごと天ぷらやから揚げにして賞味する事もある。韓国ではすり身にしたドジョウをスープに入れて食べる「チュオタン(鰍魚湯)」と言う料理がある。
「地獄鍋」の伝説
ドジョウを使った鍋料理の一つに「地獄鍋」と称される料理があると言われている。内容は、ドジョウと豆腐を一緒に煮ると、ドジョウは熱がってまだ冷たい豆腐の中に潜り込むが、やがて豆腐ごと煮えてしまい、そうして「ドジョウ入りの豆腐」になったもの食す、というもの。
しかしながら、この「地獄鍋」は都市伝説であるという説が有力である。というのも、伝わる調理方法の通りに豆腐とドジョウを入れても、ドジョウは豆腐に潜り込むことなく各々が勝手に煮えてしまうようであり、近年多くの人がこの「地獄鍋」作りにチャレンジするが、悉く失敗している…という。
一方で戦前生まれのような古い人間の中には「実際に食べた事がある」と主張する人もおり、一体何が真実なのか今となっては闇の中、である。
「地獄鍋」の手法は日本のみならず中国でも同様の手法が存在しているとされ、中国でもこのような存在する・しないの論争が繰り広げられることがある。
ドジョウが一般的な食材ではなくなった今日でも、江戸時代から続くようなドジョウ鍋を提供する店があるが、そのような店での地獄鍋は提供していないことから、都市伝説か、少なくとも店で提供する事例は少なかったと考えられる。
ただし、豆腐側にあらかじめ穴を開け、当初はドジョウのみをぬるい温度で煮て暴れさせた状態でこの豆腐を後から入れ、更に高温に切り替えるようなやり方をすることで、ドジョウは豆腐に一目散に潜るということが実際にあるらしく、このやり方で調理に成功した者がいる。恐らく昔食べた人も、記憶違いで無ければこのように調理したのかもしれない(少なくとも事前に豆腐に穴を開けた可能性は有力だろう)。
一方、別々に煮た後の息絶えたドジョウを豆腐に突っ込んでそのまま鍋にしたという説も唱えられている。
何れの場合も、別に豆腐に潜ったから何ということも無く、味的には「そのまま食べた方が美味い」、更には「グロテスクで食欲がそそらない」とさえ言われている…。