概要
1977年から1988年に渡りカプセルトイを主に販売していたメーカー。
前身の堀口産業を1977年8月に株式会社に改組した会社。全国の駄菓子屋前に置かれた赤い自販機や大々的な宣伝活動などで知名度が高かった。
20円・50円・100円・200円・500円という価格帯別の商品展開と、設置店舗に20%がキックバックされるというビジネススタイルにより大きな成功を収めた。しかしその一方で、後述する大型の自動販売機の調達に莫大な予算がかかった事が災いして経営が悪化。最終的に50億円以上にも及んだと言われる莫大な額の負債を抱えて倒産してしまった。
コスモスの自販機
当初は一般的なカプセルトイの自動販売機で商品を展開していたが、1983年から新たに飲料の自動販売機のような大型の玩具自動販売機を投入した。筐体にはデカデカと「コスモス」あるいは「COSMOS」と書かれており、当時の駄菓子屋前・玩具店前で子供たちの注目を集めていた。
筐体上部には自販機の商品サンプルのようなスペースがあり、ここに台紙や玩具現物、箱などを並べて中身を示していた。
お金を入れてレバーを押し下げると紙箱が出てくるという機会式で、元々は当時のタバコ自動販売機を流用・改造して作られたもの。イトマン系列の会社から購入・調達されていたが、玩具自販機としては高額すぎた事が災いし、コスモスの経営を悪化させてしまった。
現在でもコスモスといえばこの自販機のイメージであり、当時のものがそのまま置かれている店舗、保存されている施設などもある。電源不要の機械式であること、紙箱という最悪自作が可能な媒体で商品を提供することなどから稼働している個体もあり、コスモスとは関係ない用途で使われている。
カプセルトイ界の問題児
流行モノを片っ端からコピー商品としてカプセルトイ化したりと著作権などどこ吹く風な製品が多く、そうでなくてもカオス極まりないカプセルトイを多く出していた。実にくだらない商品が多いが、電子玩具も大当たりとして混入していた事もあり、良くも悪くも子供の射幸心を煽るラインナップもあった。
玩具メーカーでありながら『フライングトレイン』という業務用のビデオゲームもリリースしていたが、やはりというかこの作品もコナミが1981年に発売した横スクロールシューティング『スクランブル』のデッドコピーであった。
こんなメーカーでありながら80年代初期にはテレビアニメのスポンサーを務め、番組内でTVCMも放映していた時期もあり、しかも「類似品にご注意ください」とのキャプションまで入っていた。お前が言えた事か!?
しかし、あるブームに便乗したコピー商品が同社の存亡に関わる引き金となったのである。
偽ビックリマンシール騒動
ロッテのチョコレート菓子「ビックリマン」のオマケである「天使VS悪魔シール」が子供達の間でブームになった頃、コスモスはこの人気に便乗しビックリマンシールをまんまコピーしたシール5枚一組をカプセルに封入して堂々と出してきたのである。
あきらかに確信犯だったと言えるのが、カプセルトイ自販機の正面に立てる台紙にコスモスのロゴが一切無かった事である(ただし、コスモスのロゴが入ったカプセルトイ自販機で販売していたのでバレバレである)。
その際、シールに書かれていた「ロッテ」の表記を「ロッチ」に改変していた(なおフォントデザインそのもの自体が当時のロッテのカタカナロゴと全く同じであり、フォントの感覚としては「ロッチ」どころかむしろ「ロッ于」に近くもある)事から、「ロッチといえばコスモスの偽ビックリマンシール」という認識が広まった。これが子供達の間でのトレードにおいて問題化し、とうとう本家本元のロッテがコスモスを訴える事態にまで発展した。
コスモスはこの偽ビックリマンシールで3億円以上の売り上げを稼いでいたらしいが、ロッテから訴訟を起こされたのを機にコピー商品から足を洗った「まともな会社」にする為の改革を行うも結果として社員の離反を招き、これが倒産に繋がったと言われている。(参考リンク)
この為、ロッテには損害賠償金が殆ど支払われなかった上に事件は有耶無耶になったが、著作権違反容疑で当時の社長・専務・印刷責任者が書類送検されている。
会社としてのコスモスは消滅したものの、子会社だったヤマトコスモス、足利コスモスが後継会社として現在も存続している。
ニセ1万円硬貨騒動
コスモスが製造していた玩具が引き金となって、2010年以降になって起こった騒動。
コスモスはいわゆる子供銀行系の玩具としてレプリカ硬貨を作っていた時期もあったが、その中でも(昭和)天皇陛下御在位50年記念貨幣(昭和51年発行)がこの問題を引き起こした。一応コイン上部に穴が穿たれている、存在しない「昭和65年」が書かれているものの、逆に言うとそれ以外の点は本物の記念硬貨とほぼ同じである(一般的なお金の玩具と違い、明らかにプラスチッキーな質感であったり「子供銀行」などの刻印などがない)。
コンビニでニセ金としてこの硬貨を使い、釣り銭をだまし取った者が逮捕される事件が複数起こっていたり、これに際して「存在しない昭和65年の記念硬貨で買い物をした不気味な客がいた」という話がネット上の怪談的に広まる…と、後世に至るまでお騒がせな事件を起こしている。奇しくも昭和65年は昭和天皇崩御の翌年であり、昭和が続いている世界線から紛れ込んできたように感じさせたのもこのような噂を広めた一因である(ちなみに亜種として昭和75年の年号がついているものもあるようだ)。
ハズレがブームに?
カプセルトイ商品において、明確にアタリハズレを利用し始めたのもこのコスモスと言われている。100円以上はアタリ商品のみが入っているが、20円~50円ではアタリも入ってはいるものの小型・簡易的な商品が多く入っているなどいわゆるガチャ商法のはしりであった。
ただ、ハズレ商品が子供たちの間で流行したこともある。例として、1970年代に起こったスーパーカーブームで低額商品枠で入れられていたスーパーカー消しゴムは男児の間で人気を博した。
また、後世においてはハズレ枠で入っていたパチモノグッズが珍品として収集されることもあり、色々な意味でおおらかだった時代の名残を感じさせている。
余談
上記の偽ビックリマン騒動もあってか、カプセルトイに偽物グッズが流通しなくなったのか……と言われると、そうではない。コスモス消滅以後に著作権を無視したものをカプセルトイとして出していた業者が摘発される事例が少なからずあった。
現在も、無許可のアイドルグッズ等が(他社の)カプセルベンダーで売られている現実がある。それを踏まえると当時の偽ビックリマン騒動がいかに凄かったのかが分かるだろう。
{当然、これらのグッズは肖像権等の侵害なので買うべきではない。個人では対応出来ないケースが多いのだが……。クレーンゲームでも類似事例が出てしまっている}
なお、偽ビックリマンシールはコスモス以外の出処不明の業者からも出ていたらしく「ロッチ」の文字すらないコピーシールも出回っていた。
現在のカプセルトイでも変わり種なものがあるが、コスモスのカオスさには及ばないとの意見もある。
実のところ、倒産後の平成の世に突入してもコスモスの一部ラインナップはしばらくの間出回っていたが、いつ頃まで販売されたのかいつ姿を消したのかは定かではない。少なくとも後継のヤマトコスモスや足利コスモスにも既に在庫は存在しないと思われる。
外部リンク
こちらのサイトでコスモスのカオスな商品ラインナップを紹介している。どれだけカオスだったかは一見の価値あり。
関連タグ
ガチャは悪い文明:こちらはどちらかと言うとソーシャルゲームのガチャのことを指しているが、上述した偽アイドルグッズの件を踏まえると……。
めちゃっこドタコン、銀河旋風ブライガー、魔境伝説アクロバンチ:コスモスがスポンサーを務めていた国際映画社のアニメ。