次回予告
今、長き戦いが終わる。
その時三つの思いは、未来への扉を開けるのか?
次回、機動戦士ガンダムAGE、最終話『長き旅の終わり』
あらすじ
ゼハート・ガレットをはじめとした数多くの犠牲者を出した死屍累々の地球連邦とヴェイガンの戦い。
ゼハートの戦死を知らされたラ・グラミス司令官フォルク・オクラムドは最強のXラウンダー戦士ゼラ・ギンスを出撃させる。ゼラの正体、それはヴェイガンの指導者フェザール・イゼルカントのクローンだった。
ゼラのヴェイガンギアは次々と連邦のモビルスーツを倒していく。バロノークからダイダルバズーカが射出され、AGE-FXの手に渡るも、一発も打てないまま破壊された。
ゼラと接敵する直前、キオはXラウンダーの感応でイゼルカントと対話していた。
イゼルカント「人は、良き未来を築かねばならない。なぜお前にはわからないのだ?」
キオ「やり方が間違っているんです! 人が人を選んで理想郷を築くなんて!」
イゼルカント「人が人であるためだ……!」
キオ「今だって、人は人です!」
イゼルカント「んんっ?」
キオ「地球圏の人たちも、火星圏の人たちも、精一杯生きてるんだ!」
ゼラは今まで感じたことがないレベルのXラウンダー。
「大丈夫だよ、僕らが力を合わせれば!!」
ガンダム3機。
そして親子3代に渡る力を合わせれば。
しかし突如シドが現れヴェイガンギアを取り込み、ヴェイガンギア・シドとなって暴走。無差別攻撃をはじめ逆にラ・グラミス崩壊の危機を招いた。
一方、フリット・アスノはこの機にヴェイガンを皆殺しにせんとプラズマダイバーミサイルを持ち出し、セカンドムーンへと向けた。
「私はこの日のためにやってきたのだ!これで我々の勝利だ!」
フリットは引き金に手をかけた。そこへキオとアセムが駆け付ける。キオは身を挺してプラズマダイバーミサイルを止めようとする。その構図はかつてフリットがデシル・ガレットのゼダスからコロニー・ノーラの住人を守ろうとした構図に似ていた。
両手を広げつつも、Cファンネルを展開するガンダムAGE-FX。キオとアセムは必死でフリットの暴走を止めようと説得する。
キオ「やめてじいちゃん!」
フリット「何をしている!?そこをどけ!」
キオ「もうやめようよ!」
アセム「みんなで探すんだ。一緒に生きていく道を」
フリット「できるものか!ヤツらは我々から何もかも奪っていった。わたしは誓ったのだ!大切なものを守るために救世主になってみせると!」
キオ「火星圏の人たちだって苦しんだんだ。生きるためにもがいてきたんだよ!」
アセム「ヤツらだって血の通った人間だ!死の恐怖に押し潰されないよう地球を呪い、そして、地球を奪うという希望がなければ生きていけなかった」
キオ「これがじいちゃんがなろうとした救世主なの!?」
フリット「私は!私が"守れなかった者たち"のためにやってきたのだ!」
キオ「違う!絶対に違う!その人たちだって、そんなこと望んでない!」
「じゃあどうしろって言うんだよ……」
フリットの姿は少年時代の彼に戻っていた。脳裏にはかつて守れなかった人たち、ヘンドリック・ブルーザー、ドン・ボヤージ、ウルフ・エニアクル、グルーデック・エイノア達の姿が浮かぶ。
「あいつらだって苦しいのはわかってるさ!でも、奴らはユリンを…この僕だって君を……ユリンを守れなかった!」
するとそこに魂となったユリンが現れる。
「ありがとう、優しいフリット……でも、もういいんだよ……」
「いいんだよ……許してあげて。みんなを、そして……あなた自身を……」
フリットは今まで、ユリンをはじめとした死んでいった人たちを守れなかった後悔や自責の念から自分を責め続けていた。グルーデックをはじめとした人々もフリットに労いの言葉をかける。
そして、微笑んでうなずく母・マリナ・アスノの姿も……
フリット「しかし…私が撃たなくとも、まもなくセカンドムーンは崩壊する」
キオ「だったら助けようよ!」
アセム「方法は1つだ。あの球体構造物をセカンドムーンから直接切り離すしかない!」
フリット「あれだけの数だ。どう考えても……まさか!」
キオ「やれるよ、みんなが力を合わせれば!」
その言葉を受けたフリットは、フレデリック・アルグレアスに通信して協力を仰ぎ、連邦、ヴェイガン全戦力に協力を呼び掛けた。
「聞こえるか、地球圏と火星圏の全ての戦士たちよ。私の声が届いている、全モビルスーツに告ぐ。戦闘をやめて聞いてほしい!このままでは、ヴェイガンの移動コロニー・セカンドムーンは崩壊し、多くの命が失われる。これを救うには、誘爆を始めている球体ブロックを、切り離すしかない。もはや時間はない。ここにいる全ての者たちの協力がなければ、間に合わないのだ。地球連邦軍と、ヴェイガン全ての戦士たちに告ぐ……多くの命を救うため、君たちに協力を要請する!」
フリットはプラズマダイバーミサイルを空に向かって発射。発射されたミサイルは信号弾のごとく爆発し、それに答えた連邦、ヴェイガンのモビルスーツが次々とセカンドムーンへと向かっていく。
それを見たキオは、フリットは「本当の救世主になれた」と涙ながらに言うのだった。
しかしヴェイガンギア・シドの暴走はいまだ止まらない。キオはゼラに戦いはもう終わったんだというが、ゼラは「終わってない。ガンダムと全ての連邦軍モビルスーツを、殲滅……!」と聞く耳を持たない。ヴェイガンのモビルスーツもヴェイガンギア・シドへの攻撃を協力するも全く無力。
AGE-FXはFXバーストモードを起動させ、ヴェイガンギア・シドにまっすぐに突っ込んでいく。きらめく宇宙、一筋の光となったFXバーストはヴェイガンギア・シドを一撃で両断した。
爆散するヴェイガンギア・シド。FXの手の中には、救出されたゼラがいた。
「キオがやりましたね!」
「ああ、あれがキオ・アスノだ。わたしの孫だ……!」
思わず目じりが下がるフリット。
セカンドムーン。病床のイゼルカントは最後の時を迎えようとしていた。
「私は戦争をしたかったわけではない。ただ創りたかっただけなのだ。人が人らしく生きていける新世界を・・・」
妻・ドレーネに自らの心境を吐露するイゼルカント。だが世界は変わろうとしている。キオのおかげで。
キオの事を、亡き息子ロミの生まれ変わりだったのではと思っていたイゼルカント。だからこそ彼は教えてくれたのではないのか。「忘れかけていた人の優しさを」
Xラウンダーの感応で、イゼルカントはキオに最後のメッセージを伝えた。
「ありがとうキオ。地球はお前に託そう。どうか見せてくれ、人が人でいられる未来を……」
そう言い残し、イゼルカントは息を引き取った。彼の最期の言葉を汲んだキオは言う。
「人は、これからも生きていきます。手を取り合って……きっと!!」
戦後、地球連邦とヴェイガンは講和に入り、停戦条約「二つ星条約」が締結された。
人類はAGEシステムに残されていたデータとEXA-DBの情報をもとに、ヴぇイガンの民を苦しめていた風土病マーズレイを無害化するイヴァースシステムの開発を開始し、フリットも残りの人生をシステム完成にささげた。
システム完成を前にフリットは鬼籍に入ってしまったが、完成したイヴァースシステムによって火星圏は安全に居住できる環境となり、ついに人類は増えすぎた人口を許容できるほどの居住空間を手に入れた。
それは実に、ラ・グラミス戦から37年後の出来事であった。
地球にはこの戦いで使われたガンダムを展示したガンダム記念館が作られ、同時に地球・ヴェイガン双方を救った救世主、フリット・アスノの銅像が建てられた。
その銅像、救世主の銅像を老人となったアセムと中年となったキオが見学している。それはA.G.201年の暑い夏の日だったという……。