概要
『けものフレンズ2』とは、メディアミックスプロジェクト「けものフレンズプロジェクト」の作品群の一つである。特に断りがなければ、ここではアニメ版『けものフレンズ2』を指す。
2017年1月に放送されたアニメ「けものフレンズ」は、その独自の世界観とストーリーでヒットしブームを巻き起こした。同年7月には第2シーズンの制作が決定し、期待を集めていた。
様々な問題を経て、「けものフレンズ2」が2019年1月7日より放送開始となった。当初は好意的に見られることもあったが、放送が進むにつれて批判的な意見が増え、9話放送後には炎上が本格化した。予想を下回る内容とされた12話により、放送終了後に混乱に陥る視聴者たちも見られた。
また、放送終了後も続くこの騒動の要因として、「けものフレンズ2」のプロジェクトに関わった関係各社や関係者の法的・倫理的な問題発言や問題行動が指摘され、企業の社会的責任を問う事態にまで発展した。この記述に関してはたつきショックを参照。
「けものフレンズ2」の問題点は大きく分けて
- アニメ作品としての完成度の低さ
- 「けものフレンズ」続編としての問題点
が挙げられる。
アニメ作品としての完成度の低さ
第一に、『けものフレンズ2』はアニメ単体としてのクオリティの低さが問題点として挙げられる。
タイトルの通り、この作品はアニメの2作目であり、たつき監督が手掛けた1期と比較されることが多い。これにより、「たつきのファンだから2期を酷評している」という意見も存在する。しかし、1期と切り離して『けものフレンズ2』単体で見ても低評価とする意見が多い。
キャラの扱いの悪さ
特に不評だった点は、G・ロードランナー、イエイヌ、そしてアムールトラらキャラクターの扱いの悪さである。「けものはいてものけものはいない」を期待していた1期ファンからは、フレンズたちのあまりに不遇な扱いに、嘆く声・救済を望む声が相次いだ。詳細は各キャラクターの個別記事のほか、イエイヌちゃんを救い隊を参照。
ギスギスしたストーリー展開
今作のキャラクターは喧嘩腰になりがちであり、揉め事やケンカによるストーリー進行が多く見られる。前作は荒廃した世界観でありながら、キャラの発言や性格などから「優しい世界」と言われており比較される要因の1つになっている。
- 暴力で喧嘩の仲裁を行う(5話、そのシーン自体は描写されていないが「いてっ!」と言って倒れ込むシーンがあることから少なくとも突き飛ばすなどの行為はあったと思われる)
- ダブルスフィアがキュルルを探す際、PPPに対して「メンバーの中にヒトが紛れているのでは」と思い込んで襲いかかる場面があり、アイドルの髪を掴んで引っ張るという暴行を働いている。(8話)
伏線の放置
作中において様々な意味深な表現・後の展開に影響を与えそうな要素が提示されていたが、作中で説明されないまま終わってしまったものが多く存在する。以下にその一部を列挙する。
- サーバルはなぜかばんちゃんを忘れたのか
- かばんの口調や態度に1期からの変化が見られるのはなぜか
- 意味深な発言をするフウチョウコンビの目的
- パークの一部が水没した理由
- 月と共に映る人工衛星
- 2期セルリアンと1期セルリアンの違い(1期で弱点として存在していた「いし」の存在)
- 2話にてセルリアンがフレンズを無視して遊具を破壊した理由
- セルリウム(2期)とサンドスター・ロー(1期)の違い
- セルリウムを噴出する海底火山
- セルリウムから誕生した船型大型セルリアン
特に「海底火山」「船型大型セルリアン」は作中で解決されなければならなかった問題であったため、布石を放置したという批判がなされた。
以下は作中では明かされなかったが、後にイベント「けものフレンズわーるど」にて、いくつかの設定についての説明がなされたものである。
- キュルルの過去
- キュルルが最初にいた建物は何で、どうしてそこで眠っていたのか
- キュルルの探し求める「おうち」の情報
- サンドスターの柱
- ビーストについて
演出上 不自然な点
これらに関してはただ出来が悪いだけでストーリーに大きく関わるものではない。予算や納期の関係上低品質に仕上がっただけであるとされる。
- キャラの目線があっていない
- 棒立ち状態のキャラクターが多い
- ス型セルリアンから飛び降りた直後に「これじゃ近づけない」(6話)
- 後半EDの映像
- 速さを競う2キャラが走りだしてだいぶ時間が経過してから追いかけて即追いつける他のキャラ(7話)
- 大人気のPPPのライブの観客席がガラガラ・観客がコピペ(8話)
- 物理法則上不自然なホテルの浸水速度(10話~)
- 船上にどこからともなく現れるビースト(ワープ移動)(12話)
- 上記のビーストがなぜかホテルに戻るまでキュルルやかばんを襲っていない(12話)
- 屋上にいるにもかかわらず何故か上から瓦礫が降ってくる(12話)
動物のデザインや情報に関する間違い・矛盾点
けものフレンズプロジェクトでは「世界中の動物を種類を問わずに擬人化していくことで動物を知ってもらう」など、原作である「動物」に興味を持ってもらい動物へ寄与することをプロジェクトの目的の一つとして掲げている。
しかし、CMを挟んだ動物紹介コーナーで誤った情報・映像が流れる、動物の習性を(フレンズ本人の言葉で説明させるなど)キャラクター性に落とし込めきれていない、そもそも動物の習性に関する表現が作中少ないなど、「動物」を念頭に置いたプロジェクトとしては不備が多いことが指摘され、「コスプレ美少女動物園」とも揶揄された。
カルガモのデザイン
基本的にけものフレンズプロジェクトにおいて鳥類のデザインは髪に元の動物の頭部の特徴が表現されているのだが、1話で登場したカルガモは髪に緑の部分が存在しており、これはマガモの緑首に当たるデザインではないかと指摘されている。
パンダの尻尾
2話で登場したパンダの尻尾が黒色になっていた。実際にはパンダの尻尾は白色である。
丸くなるオオアルマジロ
丸くなれるアルマジロはミツオビアルマジロ属だけでありオオアルマジロは丸まらない。しかし、作中では丸まれるオオセンザンコウとほぼ同じ姿勢で防御体制をとっている。
走らないG・ロードランナー
元となった動物は時速32km以上のスピードを出せる「走るのが得意な鳥類」である。空は飛べるがそんなに上手ではなく、長時間飛べない。紹介コーナーでも走ることが得意なフレンズと紹介されているが、アニメだとむしろ飛んでいることの方が多い。また、縄張りの広さについて、「まだわかっていない」とされたが、実際は既に判明している。
タヌキの解説の誤り
Aパート最後のタヌキの解説で「湿地や森林に暮らしていて」と紹介されたが、特に湿地を好んで住処にしているわけではない。また「巣穴を掘ってすみかにしています」と紹介されたが、タヌキ自身が巣穴をほることはまれで、住処とする場合他の動物が掘った巣穴を利用することが多いと考えられている。
ハブの解説映像の誤り
資料映像にアカマタの映像が混入していた。元の映像であるナショナルジオグラフィックの番組時点で間違っていたものをそのまま使い、チェックしていなかったものと思われる。
「けものフレンズ」続編としての問題点
第二に、「けものフレンズ2」には前作「けものフレンズ」の旅を否定するかのような表現や、前作の設定と整合性の合わない表現が含まれていることが問題点として挙げられる。
サーバルのキャラクターの違い
前作におけるサーバルは、フレンズとしての高い身体能力を活かし、かばんと協力して問題を解決する、非常に魅力的なキャラクターだった。また、ヒトやフレンズの気持ちを敏感に察知し、角が立たない言葉を返せるコミュニケーション能力の高いフレンズであった。その性格がよく表れているのが「すごーい!」と相手を称賛するセリフで、このセリフはファンの間で人気となり、Twitterなどでも頻繁に見られるようになった。
しかし、2期では意味のわからない場面でもやたらと「すごーい!」と繰り返すようになっている。視聴者が共感できないまま「すごーい!」と言うため、サーバルはbotという蔑称で呼ばれるようになった。
かばん(かばんちゃん)のキャラクターの違い
2期5話において登場したかばんは、1期の描写から考えると違和感のある行動が多い。
1期かばんと2期かばんのフレンズたちへの呼称の違い
1期では基本的にフレンズを呼ぶ時は「さん」付けで、例外的にサーバルは親しみを持って「ちゃん」付けで呼んでいた。しかし、2期ではフレンズを呼び捨てにしており、サーバルも例外ではない。
口調も変わっており、1期ではサーバルだけがタメ口で話していたが、2期では全体的にタメ口が一貫して使われている。1話からずっと一緒にいたラッキービーストに対しても、以前は丁寧語で話しかけていたが、2期ではそのような描写が見られない。
このような呼称の変化について、作中でその理由が明かされることはなかった。
2期かばんのラッキービーストの扱い
1期ではラッキービーストを「ラッキーさん」と呼んでおり、最終話ではラッキービーストが複数存在することを知った上で、船とともに沈んだ、旅を共にしたラッキービーストの個体を必死に探し回った。最終的には本体にあたるレンズ部分だけを発見して手首に装着することになったが、これはあくまでボディが失われたための措置であった。
2期では呼び方が「ラッキービースト」に変わっており、さらに本体であるレンズを雑多に引き出しにしまっており、そのうちの1つをキュルルに「これを持っていって」と手渡して道具扱いしている。
かばんちゃんとサーバルの関係
今作でもメインキャラクターとして登場したサーバルであるが、かばんちゃんと旅した記憶を失っていることが1話で示される。
5話にてかばんとサーバルが再会するが、最終話終盤にて涙ながらにサーバルに話しかけるも結局記憶は戻らなかった。
また、その後のCパートにて「キュルルと仲良さそうにするサーバルとカラカル」という、過去に描かれたイラストが登場する。
この結末は、1期のファンが「2期でかばんちゃんとの旅をなかったことにされた・1期を外伝扱いにされた」と受け取った原因のひとつとなった。
なおこのイラストに描かれているキュルルは、2019年6月7日より開催された公式イベント「けものフレンズわーるど」で公開されたコンセプトアートにて別人であることが示唆されているが、上記の印象を拭うことは難しい。
余談
この一連の炎上によりけものフレンズ2の評価は大きく下がり、本作品の円盤売り上げ枚数の初動は458枚と、1期(5768枚)に比べて著しく数を落としている。
また、ニコニコ生放送では、2019年3月12日に配信された第9話の放送後アンケートにおいて、5段階評価のうち最高評価に相当する「とても良かった」が3%となり、公式アニメ配信でのワースト2位(当時)を記録した。同じく第12話のアンケートにおいては「とても良かった」が2.6%、最低評価である「良くなかった」が95.3%となり、公式アニメ配信での最低記録となった。ただし、炎上の渦中で行われたアンケートであり、愉快犯等の存在を考慮することが望ましい。
漫画版『けものフレンズ2』も存在しており、こちらはアニメ版で問題となっていた部分が修正・改善されているため、アニメ版と比べて評価が高い。
炎上の原因やその後
炎上の原因については、現在では「つまらなかったから炎上した」という見解がなされているものの、当時のたつき側のファンの主張としては「悪意によって作られた」「ケムリクサにぶつけるため、放映時間の調整まで行われた」などの陰謀論とも取れる意見が大部分を占めていた。この他、制作側の一部人物がアンチ層と「レスバ」と言われるレベルのやり取りを行なっていたのも事実で、一概に制作側が完全に被害者であったとは言い切れない(ただし内容についてはアンチ層からの暴言に対するブロックなど、一個人としては正当な対応でもあった)。
また、本当につまらなかっただけで炎上していたとする場合、YouTubeで公開された放映前PVに大量の低評価が付けられていた事にも矛盾が生じる事となる。
また、当時けものフレンズ2及びコンテンツ全体(及び企画元のKADOKAWA)に対して批判の域を超えて誹謗中傷とも取られかねない過激な発言をしていた事が判明した人物も散見され、最も近しいケースとしては2024年にけものフレンズとコラボしたアプリゲーム『えとはなっ!』の原作を担当した折口良乃氏が過去の発言について謝罪に追い込まれるといった問題も見られた。
大手まとめサイトの情報操作や暴徒と化した過去のファンにより散々な評価となったけものフレンズ2及びプロジェクトだが、後発の作品より少しずつだが評価を盛り返していき、現在もコンテンツとしては存続している。
一方、当時のファンが味方をしていたたつき監督については、2023年末のいきぬきホロライブを最後に音沙汰がなくなり(該当作品の評価についても決して良いものではなかった)、かつて発表されていた新作についても現時点で一切の続報が出ていない。