概要
Su-24の後継として、Su-27を元に設計された。F-111のような戦闘爆撃機(というか攻撃機か爆撃機)である。1992年のモスクワ航空ショーにてSu-27IBとして公表された。資金難により生産は一時中断していたが、21世紀に入って再開された。2010年からは改良型Su-34Mの開発が進む。海軍型はSu-32の名称が付けられていた。
Su-24の並列複座が好評だったらしく、この機でも踏襲されている。そのために後方視界はないも同然だが、元よりそういうのが必要な機種ではないので切り捨てても問題ないものではあった。
また強力なSh-141レーダーを搭載している、このレーダーにより最大距離250kmまで対地兵装の誘導が可能であり遠距離からの対地攻撃が可能となった、そして当レーダー搭載決定によりレーダーサイズに合わせた機首デザイン(当機で特徴的なカモノハシ機首デザイン)となった。
燃料搭載量が増やされた事で航続性能がSu-27より向上しているが、改良による重量増加などにより、運動性はやや低下している。それでもこの手の機体としては充分な運動性はあり、またベースが戦闘機な為にこの種としては異様に豊富な対空兵装を搭載可能で、全パイロンに空対空ミサイルを搭載可能。
最高速度は低下、これは制空戦闘機のような最高速度は必要ないという判断により空気取り入れ口を固定式にし簡素化を狙った事によるもの。
このような特徴からも、ベースである戦闘機を爆撃機的な性質へと強く変更した事がうかがえる。
前任のSu-24Mと比較すると最大8トンだった兵装搭載量が最大12トンに増え(通常搭載は8トン)、戦闘半径は2倍以上に増加し、ヒビヌイやソルプシア等の電子戦ポッドを装備運用可能になった。
NATOコードネームは「フルバック(ラグビー等のポジションの一つ)」で、英語圏での俗称は(アメリカのF-15Eストライクイーグルをもじった)「ストライクフランカー」、及び「プラティパス(カモノハシ)」。ロシアでの愛称も、同じくカモノハシを意味する「ウトコノース(Утконос)」である。
実戦経験
シリア内戦
合計で6機が参加。
イスラム国(IS)及びヌスラ戦線を主として、シリア国内の多勢力に対し多数の空爆を行った。
シリア内への攻撃であるが当作戦ではシリア内のフメイミム基地は使わず、イランのハマダーン基地を使用しての参戦であった。
殆どの任務が対地任務であるが2015年11月、トルコ軍によるロシア軍Su-24撃墜事件後では該当地における戦闘空中哨戒任務の一部を担った、おなじく対空兵装を用いたミッションキルをイスラエル空軍のF-16に対し2回行っている。
また2020年にはシリアのイドリブ県に駐留していたトルコ軍機械化歩兵大隊に対し空爆を行った。
ウクライナ侵攻
100機以上の大規模な機数が参加。
ウクライナ侵攻初日から2024年末の現在まで各種空爆に用いられ、全期間において活動が活発である。
最初期には近距離投下を強いられる通常爆弾を用いた運用により多数の機を失い、また2022年内には友軍による誤射が2回も起きている。
(米軍数えで2022年秋までに17機以上、内1機は短射程であるMANPADSのスティンガーにより撃墜された)
その後は従来の爆弾に羽を着けた滑空爆弾や各対地ミサイル等を用いた遠距離攻撃を主とする様になっている、それにより被害も減ったがロシア軍による積極的な運用数と主目標として迎撃するウクライナ軍により2024年末までに更に13機以上が地上破壊及び空中撃墜され、総合で当戦争30機以上の損失となった。
この数字は同じく盛んに運用され、30機以上を失ったSu-25と合計すると、ロシア空軍の固定翼機損失割合の7割近くを占めている程に大きい。
(ロシア国ではSu-34の総合損失を30機程度、米国数えでは36機、英国は30~40機としている、また最低でも23機の墜落写真及び映像が残っており損失23機以上は確実と見られる)
(ウクライナ軍は以上の数に加え2024年2月中に10機以上のSu-34をウクライナ空軍が空戦にて撃墜したとしている、しかし米英露はそれを観測していない)
以上の通り損害も大きいが残存数も多く(米国数えで2024年末時点にロシアは150機程度を保有、内120機程が配備及び運用中)、またSu-24が航空作戦に参加しなくなった現在Su-25と共にロシア空軍による地上支援や爆撃任務の過半を担っており、積極的な運用は今後も続くと見られている。
その他
2016年春、ロシア国内ヴォログダ州のスコナ川の氷へ爆装4トン(500kg8発)で攻撃した。
これは同年該当地における洪水(川に流氷が詰まり水が溢れた)対策で要請され、爆撃後に水害は解消された。
独自装備?
戦闘用の航空機には珍しく、トイレや調理場を設置している。といっても、一般に想像されるようなものでは無い。
トイレ
臭いを化学薬品で処理するトイレ。要は『おまる』のようなモノで、漏斗の付いた瓶のような携行タイプ。
調理場
コクピット後方に弁当置きの棚とポット(それも2000円くらいで売ってそうな魔法瓶にしか見えない)を設けているだけで、電子レンジは無い様子。代わりにレーション加熱用の電子ヒーターがあるのだそう(ロシア国防省による)。まあ、置き場を作ってるだけでもかなり珍しい部類なのだが。
搭乗口
一般的な戦闘機のような開閉式キャノピーや、大型機に見られる側面ドアではなく、操縦席真下の前脚収納庫にある搭乗口から、はしごで乗り降りする。これは、コクピットが一般の戦闘機と異なり与圧構造であるため(そのためある程度の高度までなら酸素マスクが不要)。また、座席後方の通路では人が立てるだけのスペースがあるそうで、簡単な運動ができるのだとか。
装甲
コクピットはチタン装甲板で全周を囲われており装甲の重量は1.5トンにも及ぶ、これはSu-25に使われた装甲重量の5割増であり、K-36DM射出座席と合わせ、相当の搭乗員保護が施されている。
派生型
Su-27IB(T-10V)
最初の名称、プロトタイプ。1992年のモスクワ航空ショーで公開。
T-10V-1
プロトタイプ改良型、Su-27IBから各翼とテールが変更された。
Su-34(初命名の方)/Su-32FN/Su-32MF
フェーズドアレイレーダー搭載により機首部分が大幅に変更、特徴的な見た目となる。
またその際に34の番号が割り振られるが数カ月後に32FNとされ、更にスホーイ社内ではMFと表する等、別名が多い。
Su-34
正式量産型、2004年から製造開始、初飛行は2006年。
2011年までテストと細かい改修が繰り返され最終版(ロシア軍部隊配備)は2014年から。
Su-32
Su-34の輸出型。上記のSu-32FNとは違う。
アルジェリアが輸入意欲を示していたが8年に及ぶ交渉の末に頓挫、計画のみとなった。
Su-34M/Su-34NVO
2010年代になってより高度に近代化されたもの。2022年6月からロシア空軍への引き渡しが始まっており以後のSu-34生産は全てM型となる。2027年までに76機生産予定。
(米国数えでは2022年に8機以上、2023年に12機以上、2024年に20機以上、2024年末時点で合計40機以上のSu-34Mがロシア軍に納入されたと見ている)
Su-34FN
Su-34ベースの海軍型で、魚雷や爆雷、ソノブイなどの装備も可能。例によって財政難のため海軍の購入が決まらないため、配備どころか生産自体が進んでいない。
関連タグ
戦闘爆撃機 ロシア連邦 Su-27 第4.5世代ジェット戦闘機
Ka-52・・・同じく並列複座を採用した攻撃ヘリコプター