概要
小型タクシー専用車として1993年7月に発売された日産・クルーに対抗すべく、1995年12月にトヨタ自社ブランドの小型タクシー専用車として、中型タクシー専用車の姉妹車のクラウンコンフォートと共に発売された。クラウンコンフォートはコンフォートよりホイールベースを100mm長くし、中型タクシーの基準に合致させている。
しかし、競合車種の日産・クルーが2009年6月をもって生産終了したため、以降、国内メーカー唯一の小型タクシー専用車となっている。
ベースはX80系マークⅡセダンであり、サスペンションも80系マークⅡの下位グレードと共通の、フロント・ストラット、リアリンクリジッドとなっている。
型式は XS11(Y)/TSS11(Y)で、搭載エンジンは、3Y-PE/4S-FE/2L-TE/1TR-FPE、マイナーチェンジ後の XS13Y/TSS13Yでは、3S-FE/1TR-FEとなっているが、クラウンコンフォートとは異なり、直6の1G-PEの設定はない。教習車は型式の最後にYが付く。FR方式で後席の寸法と後部ラゲージルームの容積を大きくとり、無線機や料金メーターなどのタクシー業務用機器取り付けスペースを設けるなど、完全にタクシー向けに特化された設計である。
また、コンフォートシリーズは、40万km以上の走行に耐えられるよう、スポット溶接の箇所を減らし、あえて車体剛性を落としているのも特徴である。この手法は同社のE110系以降のカローラシリーズから用いられている。日産・クルーとは異なり、Bピラーの位置は左右対称(左右のドアの大きさは同じ)である。
小型タクシー専用車として設計された車種ではあるが、ガソリンエンジン、LPGエンジンに関わらず、タクシー、教習車とも一般の個人客でもディーラーで購入が可能である。
トランスミッション
トランスミッションはタクシー仕様・教習車仕様ともに5速MTと4速ATを設定。コンフォート、クラウンコンフォート、クラウンセダンシリーズ(XS1x系)の中でガソリンエンジンとMTの組み合わせがあるのは教習車だけである。
グレード
グレードは、タクシー仕様がスタンダード、デラックスパッケージ、SGの三種で、教習車仕様はデラックスのみ。東京地区での車両本体価格は、タクシー仕様が171.1万円 - 224.7万円、教習車仕様が167.0万円 - 184.0万円。
沿革
初代 XS11/13系・TSS11/13系(1995年 - 2009年、2011年 - )
1995年12月 - 発売開始。搭載エンジンは排気量2,000ccのLPGエンジン(3Y-PE)、教習車向けには1,800ccガソリンエンジンの4S-FE、2,400ccディーゼルターボ(2L-TE)。
1999年 - 平成10年排出ガス規制適合。
2001年8月 - ディーゼルエンジン2L-TE廃止、教習車のエンジンを2,000 ccガソリンエンジンの3S-FEに変更。オドメーターとトリップメーターが液晶化された。
2002年10月 - 一部改良。ABSと運転席エアバッグ(教習車は運転席、助手席)が標準装備された。
2003年6月〜11月 - GT-Zスーパーチャージャー限定受注生産。
2004年6月 - 一部改良。平成17年排出ガス規制適合、サイドターンシグナル、LEDハイマウントストップランプが装備された。
2007年10月 - 一部改良。教習車仕様のガソリンエンジンが3S-FEから1TR-FEに変更され、U-LEV認定を取得。型式はTSS13Y。
2008年8月21日 - マイナーチェンジによってLPG車用エンジンがガスミキサー方式の3Y-PE型から、ガス液体噴射方式の1TR-FPE型(1TR-FE型のLPG仕様)に変更され、エンジン出力及び環境性能(平成22年度燃費基準達成)が向上した。ガソリン車用エンジンは1TR-FE型をキャリーオーバーした。AT車は電子制御化された。タイヤサイズは15インチに変更され、全高も10mm高くなった。また、シフトレバーが“N”または“P”の位置で自動的にアイドリングストップをする“TOYOTA STOP AND START SYSTEM”がAT車に標準装備された。
2009年 - 一時生産を中止。
2011年 - 生産を再開。
2012年7月2日 一部改良。全車にプラズマクラスターを採用し、リア中央席に3点式シートベルトを、リア左右席にISOFIX対応チャイルドシート固定専用バーなどを標準装備した。
コンフォートGT-Zスーパーチャージャー
2003年、2000ccガソリンエンジン教習車の5速MT仕様をベースに、トヨタテクノクラフトの手によってスーパーチャージャー搭載、サスペンションのチューニング等を施したスポーツセダン仕様のコンプリートモデル、「コンフォートGT-Zスーパーチャージャー」が6月24日から11月17日まで、東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県のトヨペット店で、期間・地域限定で受注生産販売された。生産台数は先行試作車1台を含む60台、価格は227.0万円 - 291.8万円であった。
ベースエンジンは3S-FE型直列4気筒DOHC(ハイメカツインカム)で、これに小倉クラッチ製ルーツブロワー式スーパーチャージャーTX07を組み合わせ、使用燃料をプレミアムガソリンとすることにより、最大 0.3 kgf/cm2 の過給圧で実馬力 118 kW (160 ps)/6,100 rpm、221 N m (22.5 kg m)/3300 rpm という出力を得ている。
これは、ノーマル比 26% のパワーアップ(ノーマルはカタログ上 96 kW (130 ps)/5,600 rpm、181 N m (18.5 km m)/4,400 rpm)で、3S-GEエンジンを縦置き搭載するアルテッツァRS (SXE10) の(カタログ上 154.4 kW (210ps)/7,600 rpm、215.7 N m (22.0 kg m)/6,400 rpm)よりも低速側にトルクバンドを広げ、エンジンよりシャシがはるかに勝っている標準車に対し、 トータルでの扱いやすさと、モアパワーを狙ったチューニングである。車両重量は 1,300 kg (総重量1,575 kg)、パワーウエイトレシオは 8.13 (9.84) kg/ps である。最高速度はリミッターカットでのサーキット走行で、204 km/h というデータが残っている。
その他、専用のブレーキパッド(フロント)&ブレーキシュー(リア)、フロントスポイラー、ブラックアウトされたウレタン風リアスポイラー、専用マフラーが奢られているほか、標準でRSワタナベ製のエイトスポークアルミホイールとブリヂストン POTENZA G3 が装備されている。トランクリッド左についているエンブレムも、1980年代のスポーツセダンテイストを醸し出している。車高は純正比マイナス 30 mm とし、日常での使い勝手も考慮したダウン量となっている。
オプションとして、大森計器製の電気式3連メーター(加給圧・油圧・油温)、強化クラッチ、LSD(TRDまたはゼクセル製)、前席TRDセミバケットシート、TRDエアバッグ付ステアリング・シフトノブ等の装備があった。
D1仕様
2004年チューニングショップ OKUYAMA の手によって、トヨタテクノクラフトが調達した3台の中古1800教習車(SXS11Y)をうち2台を使用して製作(残り1台は部品取り)、エンジンを3S-GTEに換装、Do-Luck のエアロパーツにガルウィングドア装着のドリフト仕様のコンフォートが登場し、各イベントで走行された。その後D1グランプリに出る機会を逃したままガレージに眠っていたところ、2006年D1グランプリ参戦中のAPPレーシングの2号車として OKUYAMA にて再度大改造ののち 2006D1 グランプリの国内ラウンドに参戦することになった。その際に規定に合わせてガルウィングを撤去。同年第3戦富士では追走ベスト16進出を果たした。
取扱ディーラー
T140系コロナセダン(タクシー仕様)、X80系マークⅡセダン(タクシー及び教習車仕様)の後継車種として発売された名残でトヨペット店での取扱である。ただし大阪地区では2006年8月7日まで、旧・大阪トヨタ(現・大阪トヨペット)での取扱い、また東京地区では、教習車仕様に限り東京トヨタ・東京トヨペットにて併売されている。
なお、2004年4月以前は教習車仕様に限り、ネッツ店、ビスタ店(チェイサー/クレスタ両車の教習車仕様取扱いの名残)でも取扱されていたが、両店の統合に伴いネッツ店での教習車仕様の取扱が廃止されている。