概要
対戦車誘導弾とは、いわゆる対戦車ミサイル(anti-tank missile、ATM)である。
歩兵が携行するほか、車両や航空機、ヘリコプターに搭載される。
主に戦車や装甲車両、陣地などの地表の硬目標の撃破に用いられる。
弾頭には成形炸薬(HEAT)が用いられ、戦車砲などに比べ低速であるが貫通力を持っている。
誘導方法としては操作用ワイヤーを曳きながら飛ぶ有線誘導型と目標にレーザーを照準することで誘導を行うレーザー誘導型、誘導弾自体が目標を捉える撃ちっぱなし型がある。
有線誘導型は妨害に強いが弾着まで操作する必要がある為、移動が出来ず反撃されるおそれがある。
また、飛翔途中にコントロールワイヤーが障害物等で切断されるとコントロール不能となる、残ったワイヤーがクローズラインというトラップのようになってしまうという問題もある。
レーザー誘導型も同様に着弾まで照射し続ける必要があるが、発射母機以外がレーザーを照準することにより撃ちっぱなしのように撃った後すぐに離脱する事も可能だが、レーザーをうまく反射しない目標や天候等により影響を受けて誘導が行えない事もある。
一方、撃ちっぱなし型は撃った後すぐに離脱できるが、妨害されることがある。
対戦車誘導弾は自衛隊の呼称でありMATの略称を与えられている。
ATMの呼称を使用しない理由はアトムという読みから核兵器であると誤解されるのを防ぐため。
運用法
対戦車戦闘
歩兵が携行している発射機や戦車駆逐車、装輪装甲車などから発射される。
また、戦車自身がガンランチャーや発射機等を備えている場合もある。
対船舶・舟艇戦闘
なお、専守防衛のわが国では上陸舟艇を水際(すいさい)で阻止することも想定されていた。
対陣地戦闘
狙撃兵の潜伏地点や重火力の火点、立て籠もり拠点を潰すために用いられる。
現在では本来の目的である対戦車戦闘より陣地潰しの方が多い。
一発当たりのコストの問題も有り、無誘導の無反動砲等も使われる。
テロリスト殺害
合衆国軍が主に取っている戦術である。
無人攻撃機等から発射し対象人物を殺害する。
対戦車兵器という性質上、火力過多であったり、建築物内部への貫通して爆発といった事ができないと、この用途には適さない事が多いことから誘導型ロケット弾へ変更する案が出ている。
このように対戦車に限らず多くの目標に使用可能なことから多目的誘導弾とも呼ばれている。
我が国で運用されている主な対戦車誘導弾
BGM-71 TOW(トゥ)
有線誘導型。射程約3.8km。
わが国ではAH-1S対戦車ヘリコプターが運用している。
AGM-114 ヘルファイア
撃ちっぱなし方式/レーザー誘導方式。射程約8km。
一部のモデルのみが撃ちっぱなし可能で、レーザー誘導が主となっている。
AGM-65 マーベリック
撃ちっぱなし方式/レーザー誘導方式。射程約25km。
対戦車だけでなく対地、対艦など多目的に使用可能。
弾頭重量は57kg(125ポンド)と136kg(300ポンド)。
軽量型は成形炸薬弾頭、重量型は貫通後に内部爆発をする爆風破片効果弾頭となっている
01式軽対戦車誘導弾
撃ちっぱなし方式。
隊員が携行する肩撃ち式。
通称「軽MAT」
87式対戦車誘導弾
レーザー誘導方式。
三脚発射、肩撃ち可能。
通称「中MAT」
中距離多目的誘導弾
赤外線画像およびレーザー誘導方式の複合。
撃ちっぱなし可能。
車両搭載だけでなく下ろしての運用も可能。
通称「中多」
79式対舟艇対戦車誘導弾
有線誘導型。
対戦車中隊で運用され、89式装甲戦闘車にも搭載される。
通称「重MAT」
96式多目的誘導弾システム
有線誘導型。
車両に搭載。
通称「96マルチ」