概要
ミサイルに似ているが、『誘導されない』(まっすぐ飛ぶだけ)という点が違う。
こんにち配備されている歩兵携帯ロケット弾(RPG-7など)の他にも、
第二次世界大戦にソビエトが使った対地ロケット(カチューシャ)や、
同じくドイツが対空用に使った各種ロケット弾が有名である。
カチューシャ
通称『スターリンのオルガン』。
低い命中率を数で補うことになっており、発射台トラックにして十数台や数十台がまとめて発射する。
ただでさえ多い発射数が更に増え、着弾点付近はものすごいことになる。
ソビエトは空軍の代わりに砲兵部隊が進化しており、カチューシャはその象徴的存在である。
空軍か砲兵か
支援される側にとってはどちらも同じである。
空軍と砲兵にはそれぞれ強みがあり、
・砲兵:陣地さえ据えればいつでも支援できる事
・空軍:射程(距離)に関係なく支援できる事
どちらを重視するかは軍の重点によるが、
ソビエトでは軍隊の規模を生かして砲兵の整備に力を注いでいる。
大戦の反省
1950年代、アメリカの防空戦闘機の主武装は対空ロケット弾だった。
これはドイツ上空で爆撃機部隊が大損害を負った反省による。
ロケット弾は1発あたりの破壊力が大きく、
至近弾(惜しいハズレ弾)の爆発でも撃墜されてしまったのだ。
この戦訓をもとに、アメリカ空軍は防空戦闘機の主武装をロケット弾にした。
中にはAIR-2 ジニーという核弾頭を搭載したものもあった。
しかし第三次大戦は起こらず、結局そのような危惧は必要なくなってしまった。
現在のロケット弾
対空用では殆ど使用されていない。
歩兵携帯用・空対地用・地対地用はバリバリの現役である。
アメリカの場合
空対空目的では既に使われなくなっている。より命中精度の高いミサイルが登場したためである。
対地攻撃用としてヘリコプター用のロケット弾ポッドがあり、目視距離での近接航空支援でベトナム戦争以来使用されている。
ミサイルの発達した近年の戦争でも、安価で強力な火力を提供できることから、多くの軍用ヘリに搭載可能である。ミサイルとのハイ・ローミックスで搭載することで、多様な目標に適切に対応できる。
無論、ミサイルのみ/ロケット弾のみを搭載して出撃する事もあり得る。
そもそもヘリコプターは低空を低速で飛行するため、被弾率が高い。また悪天候にも弱く、飛行性能が落ちる。
被弾によって飛行不能になることを避けるため、「近接航空支援(CAS)」では通常の攻撃機の方が多く用いられるようだ。(正確さ・陸上部隊との連携は戦闘ヘリが上だが)
ロケット弾とベトナム戦争
ロケット弾は「一定の範囲内を掃討する」目的では有効だが、
ロケット噴流が相互に干渉しあって精度に欠ける為、クラスター爆弾を投下する方が好まれたのだ。
(いわく「どこに飛んでいくか判らない」とか)
一応1発ずつ発射する事も出来るが、そのためには何度も対空砲火に身を晒す事になって危険なのだ。
FAC目的以外の実戦投入こそ無いものの、搭載可能な戦闘機/攻撃機はベトナム戦争以降も開発されている。
爆弾と共通規格で搭載できる為である。
APKWS(Advanced Precision Kill Weapon System)
非誘導弾である従来のロケット弾では、無駄弾により補給が頻繁に必要になるため、運用コストが高くついたり、一度のミッションで複数機・複数回出撃する必要に迫られた。
また、都市部で脆弱な装甲の車両に対し対戦車ミサイルを撃ち込んだり、命中させるために大量のロケット弾をばら撒くと、過剰火力によって周辺被害が大きくなりすぎることも問題となった。
これを解決すべく、既存兵器のコンポーネントを流用した安価で適切な火力の兵器が求められた。
現在、ハイドラ70ロケット弾に誘導能力を付与した先進精密攻撃兵器APKWSが開発されている。
セミアクティヴレーザー誘導により高い命中精度を持つ。
誘導部を弾頭の後ろに配置する構造をとっており、ロケット弾の噴炎に誘導部が焼かれないよう配慮されている。
非公式に「ヘルファイア・ジュニア」とも呼ばれている。
このような兵器の開発はアメリカだけでなくトルコでも行われており、70mmロケット弾をベースにセミアクティヴレーザー誘導の対戦車ミサイル シリットとして発表されている。
LOGIR (Low-Cost Guided Imaging Rocket)
母機がレーザーを照射し続けなければならないAPKWSと違い、赤外線シーカーによる撃ちっぱなし能力を付与したものとなっている。
名前から分かるようにAPKWS同様に安価である事が目的となっている。
こちらは弾頭の前に誘導部を持つ。
FAC(Forward Air Control)
日本では『前線航空管制』と訳されている。
これは攻撃機を精確に誘導し、味方の地上部隊を的確に支援するための誘導員である。
アメリカ空軍ではベトナム戦争の頃に設立され、ジャングルの密林の中で戦う味方を援護するために活躍した。
上空からは地上の様子がジャングルに隠されて、「どこに爆弾を落とせばいいのか」がわからずに味方撃ちになることがあったのだ。
そこで地域の様子に慣れたパイロットが敵の位置を突き止め、
別途攻撃機に敵の位置を発煙弾で知らせる役が求められた。
これが前線航空管制官である。
この目的に使われているのがロケット弾であり、弾頭には発煙弾を仕込んでいる。
これを目標付近に撃ちこみ、発煙弾の煙を基準に攻撃するのである。
(例:「煙から西に100m地点」など)
当初は民間の軽飛行機を転用した「セスナO-1」「セスナO-2」が配備された。
しかし、低速で脆弱なO-1やO-2では損害が大きく、OV-10が使われている。
のちにA-10がこの目的に使われ、転用された機体は「OA-10」と名称が変更された。
(目的が変わっただけで、機体は改造していない)
ロシアの場合
現在でも使われているようである。
(だいぶん縮小したようだが)
大部隊が相互にぶつかり合う戦いをイメージしていたらしく、(⇒クルスクの戦い)その際の成功体験もあるらしい。
攻撃機や戦闘ヘリが多数ポッドを搭載し、一斉発射することで地上を制圧する。
しかし、実戦では精度が必要とされる状況も多かったらしく、MiG-27やSu-25等ではそれまでの攻撃機よりも攻撃精度が改善されている。
現在では精密誘導兵器も盛んに導入されており、向上が目覚ましい。
非正規軍の場合
物資の限られるゲリラたちは対空・対地共に使用している。
多くは車両用ロケット弾発射機を使用するが、中には航空機用ロケット弾ポッドをピックアップトラック等の荷台に無理やり搭載しテクニカル化した車両も多く見かけられる。