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OV-10

おーぶいてん

アメリカ、ノースアメリカンの開発したCOIN機。元々は海兵隊の観測機・空軍のCOIN機・陸軍の近接航空支援(CAS)専門機を兼ね備えた機体として開発された。ゲリラ戦(不正規戦)への対応が強く意識されていたようで、COIN機としての能力以外にも兵士6名(あるいは貨物)を輸送できる。
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公式な愛称は『ブロンコ」。

アメリカ西部の半野生馬の事である。

STOL(短距離離着陸)性能に優れ、広いキャノピーは広大な視界を保障する。

元は不正規戦も意識して輸送能力を持つように設計されていたが、そのような目的には殆ど使われなかった。


現在は役目をOA-10に譲って退役している。


アメリカ民間の森林消防隊で、空中からの消火に際し、消防機の指揮官機として使われている事もある。



ジャスト・ワン・コイン編集

元々は上記のとおり、1959年に海兵隊が新型の観測機を開発した事に始まる。

そのころ空軍でも、A-1やB-26のような旧式化した攻撃機の後継を探しており、陸軍では味方を近接航空支援(CAS:Close Air Support)する機を求めていた。


1963年9月にこれらをCOIN機として共同開発する事となり、

(おそらくマクナマラ長官の指示)

COIN機開発計画はLARA(Light Armed Reconaisance Aircraft)計画と命名されて、

研究と開発が行われる事になった。


10月には開発の要求仕様がまとまり、

・優れたSTOL性能を備える

・最大速度は265kt(約490km/h)以上

・固定武装は7.62㎜機銃4門(M60多目的機関銃)

・兵器搭載量は約1100㎏

・空挺隊員6名/貨物910㎏を輸送/空中投下できる

のように決まった。


1964年8月には応募した各メーカーの中から、ノースアメリカン案の採用を決定。

同10月にはYOV-10Aとして試作機7機を発注した。


1965年7月には最初の試作機が初飛行しており、これは驚異的スピードである。LARA計画は途中から陸軍は固定翼機を持たない事』と決まり、計画から離脱した。

(主に空軍とマクナマラ長官の横やり)

1967年8月、OV-10Aの生産初号機が初飛行を行った。

1968年2月、空軍海兵隊の飛行隊への引き渡しが開始され、実戦配備が始まった。


ジャングルのブロンコ編集

1968年7月、海兵隊の第2海兵観測飛行隊(VMO-2)が南ベトナムに派遣され、同月末には空軍もビエンホア基地にOV-10部隊を配置した。1969年1月には海軍も海兵隊から借用した機体で第4軽攻撃飛行隊を編成し、4月からメコン川河口のビンツイで第3軽ヘリコプター飛行隊と共に河川警備に投入した。


しかしこれらの作戦の結果、OV-10は中途半端な機体だと判明した。

攻撃機としてはSTOL性能のために搭載量が少なかったのだ。また、離着陸性能ならばヘリコプターに勝てる訳もない。

つまり攻撃機にしては攻撃力が無さすぎ、ヘリコプターほど使い勝手もよくないのだ。


そんなわけで、空軍海兵隊は視界の良さを生かしてFAC任務(味方の攻撃機を誘導して目標へ正確に爆撃させる任務)に充てた。

海軍は攻撃力を少しでもマシにしようと、20㎜ガンポッドをオプション装備にした。


夜目の効く馬編集

1970年、OV-10Aに夜間攻撃能力が無いことが問題視されて、

空軍ではOV-10Aに夜間照準器・レーザー照射器・ターゲット誘導装置・LORAN電波航法装置などを追加して搭載した。


同じころ、海兵隊では能力向上型のYOV-10Dを試作・初飛行させている。

これはOV-10Aの機首を延長し、その内部に赤外線監視装置・レーザー目標指示器・自動ビデオ追尾装置の一体型機材と赤外線妨害装置を追加している。相違点は明らかで、これは目立って延長された機首で識別できる。エンジンも同系の出力強化型となった。


試作機では機体下部の武装スポンソンを外し、M197旋回式20㎜機銃を搭載していた。どうも戦場近くから発着する『ガンシップ』として構想されていたようだ。生産機でこれは廃止され、A型とおなじく武装スポンソン装備に落ち着いた。また、胴体中心以外に、主翼パイロンにも増加タンクを装備できるようになった。滞空時間を延長するための措置である。


特徴について編集

STOL性能や攻撃能力を実現するため、他の機にはない独特の機体構成となっている。

特徴的なのは真っ直ぐ伸びた主翼の半ばにエンジンを配置し、そこから長いブームで垂直尾翼・水平尾翼をつないでいる事である。


主翼後縁にも高揚力装置(フラップ)がみっしりと配置され、STOL性能に一役かっている。プロペラは左右でそれぞれ逆方向に回るようになっており、互いの反動を打ち消す仕組みだ。車輪も不整地に備えた大がかりな緩衝装置を使っている。


そのSTOL性能は、空母強襲揚陸艦からもカタパルトや着艦ワイヤーなしで発着艦できるほど。よって空母や強襲揚陸艦に展開した事もあるが、陸上機である以上、通常は行わないイレギュラーな運用だったようだ。


コクピットはタンデム(縦列)複座となっているが、FAC任務の際は前席に1人で搭乗する。その広いキャノピー(風防ガラス)は広大な視界を保障しており、パイロットはそこにグリスペン(俗にいうホワイトボードマーカー)で直に情報を書き込んだりもした。


要求仕様通り、胴体内部には空挺隊員で5名、または担架2名分に看護員1名、あるいは貨物1451kgを搭載できる。これは後部胴体末尾の円いカバーを外せばいいのだが、このカバーは飛行中の開閉が不可能なので、胴体内部を使うときはあらかじめ外しておかなくてはならない。普段は手荷物入れとして使われるのが精々である。


武装はスポンソン内部にM60多目的機関銃を左右に2基ずつ、合計4基装備している。

ただし、この機体はFAC任務に使われる事が多く、攻撃任務に使われることはあまり無かった。

従って無駄な重量物として外される事も多く、特に空軍ではその傾向は強かった。


主翼外側にもパイロンを装備し、兵器を搭載することができる。

ただし外している場合も多く、特にD型で増漕を搭載できるまでは多かったという。


輸出されたブロンコ編集

A型からいきなりD型へと飛んでいるが、これは間に・・・


  • OV-10B:西ドイツで使われた空中標的曳航機

胴体末尾のカバーを透明なものに換装し、曳航時の観測員席にした。

もちろん標的の曳航装置を追加して、不要な武装スポンソンを撤去している。


  • OV-10C:タイ空軍で採用されたA型ベースの独自規格機。

主翼パイロンを廃止し、エンジンをD型使用に換装。後席の下に写真カメラを追加している。


が入っているためである。

他にもOV-10D+という、OV-10AをD型仕様に改造したものがある。


後に

という風な機体も存在する。

STOL性能をかわれ、輸送機として再設計することも考えられた。

しかしヘリコプターを使った方が便利であるため、計画のみで終わった。


復活の21世紀編集

OV-10は1990年代にA-10F/A-18に後を譲ってアメリカ軍から姿を消した。


…が、それから20年、初飛行からは50年が過ぎた2015年、アメリカは突如ISISとの戦いにOV-10を再整備し、既に実戦に投入していることを発表した。


この機はOV-10G+と型番が振られ、これまでのOV-10とは全く変わった改造機であるようだ。

見た目の上ではOV-10Dのように見えるが、エンジンとプロペラが全く違うものになっており、機首下のセンサーポッドも内容を改めている模様。

直接戦闘に関わっているわけでは無いようだが、期待された以上の実績を挙げているようだ。とくに運用費の安さは魅力となっているようで「F-15なんかよりケタ1つは安い」のだとか。


ショーのブロンコ編集

実態は以上のとおりだが、とにかく見た目は独特なので、見る人によっては架空機のようにも見えるかもしれない。というわけで、ユニバーサル・スタジオの映画「ウォーターワールド」を題材にした各園のスタントショーにはOV-10(もどき)が登場する。


といっても、こちらは「似ているだけ」で、機首はA型とD型の中間くらい、フロートはスポンソンに直付け、さらにプロペラは左右逆転になっていない、要するにバッタモンである。


映画ではヘリオ・クーリエが使用された。


ブロンコII現る編集

アメリカのSOCOMが計画しているCOIN機として、南アフリカで開発されたAHRLACをベースとしたパラマウントグループの改良案がブロンコIIとして提案された。

AHRLACの機体構成が双胴機であり、OV-10と似ていた為、ブロンコIIの愛称が付けられたのである。

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