どんな概要だ
大手ゲーム会社カプコンにて2010年当時、同社の執行取締役であった稲船敬二氏が、社内の開発承認会議の中で、あるゲームの企画に対して、同社の川田将央プロデューサーに言い放った言葉。
ソースは2010年8月に放映されたテレビ東京のトーク・ドキュメンタリー番組『カンブリア宮殿』。
0:58より該当シーン
計画の甘さや、利益になりそうもない他者の行動を気軽に批判できる、文体も変えやすく使いやすいネットスラングの1つとして、主にテレビゲーム好きなネットユーザーを中心に流行し、2010年度ネット流行語大賞にもノミネートされた。
上記の一連のセリフを略して「どん判」「どん判金ドブ」などと使われることも。
なお、番組内の字幕スーパーでは「どんな判断だ」という表記になっており、それがそのまま流行する形になったが、映像を見ての通り大阪府出身の稲船氏は関西弁で喋っているため、正確に文字に起こすと
「どんな判断や。金ドブに捨てる気か。何千万もかかってんねん(ぞ)、このプリプロ…」
となる。
(プリプロ=pre-production、プリプロダクションの略。映画や音楽、または設計や製造を行う業界で使われる、「試作品」や「事前準備」のことを指す業界用語。映画やゲームでは商業的観点で企画を続行すべきかどうかの判断を下す材料として、プリプロがしばしば用いられる)
稲船氏本人もこの流行を気に入っていたようで、カプコン退社後に執筆した2冊目の自著に
『どんな判断や!』と名付けたほど。
真相をドブに捨てる気か
問題のプレゼンで示された計画は数十万本売れてやっと収益がトントンという途方もないものであり、数字に照らせば稲船氏の怒りは尤もなものに見えた。
しかし、月刊『FACTA』2010年12月号で、氏はこの発言が嫌々だったと振り返っている。氏としてはむしろ社長の数字主義に反発しており、その経営方針に不満を抱えていたという。
後に上述の自著『どんな判断や!』で、稲船氏は、『カンブリア宮殿』では前後の経緯がカットされているとした上で、この発言に至るまでを語っている。
それによると、川田氏らプロデューサー陣は、開発承認会議前日に稲船氏にゲームの企画書を提出。最終確認を行っている。
ところがその直後、稲船氏の元に「P陣は既にそのゲームの試作品(=プリプロ)も作っているが、開発承認会議に出したがっていない」という情報がもたらされる。
P陣の弱気に怒った稲船氏は件の試作品でのテスト映像を入手し、会議でP陣のプレゼンテーションが終わった後経営陣に提出。経営陣からは「立案から3ヶ月で試作品段階まできたのか。凄い」という高評価が帰ってきた。
それを受けて稲船氏は「わずか3ヶ月でここまできたのに、どのような判断で試作品を出し渋った。なぜ全力で承認会議に臨まない。ここまでに費やした開発費をドブに捨てるつもりなのか」とP陣を叱った…とのことである。
稲船氏の名誉のために書くと、ネットで「稲船敬二」で画像検索すると、氏のにこやかな表情やお茶目な表情の画像がほとんどを占める。「どんな判断だ」で見せた険しい表情は、稲船氏が真剣に開発承認会議に臨んでいた事を示したと言えよう。