概要
本作の主人公。年齢は6→13歳。
魔導師軍家の名門であるレイセフト家の嫡子として生を受けたが、魔力量の少なさから両親に失格の烙印を押されてしまう。
だが異世界の男の記憶が覚醒し、両親を見返す為に魔導師を目指すべく伯父クレイブを師事して修行を開始。
異世界の知識を活かした発明と刻印、そして呪文を次々と生み出し、成り上がっていく。
経歴
6歳。魔法量の少なさから跡継ぎから外れ一族や使用人からも冷遇される。病床で両親の心無い言葉から男の記憶が覚醒し異世界の常識と膨大な知識を得る。同年、伯父クレイブに乞い師弟関係を築く。
8歳。【錬魔】の復活と応用で【魔力計】の開発に成功しクレイブと共同研究を始める。
10歳。【ソーマ酒】の製造を開始。ガストン侯爵の陰謀に巻き込まれた妹を救うべく屋敷へ乗り込み救出。同年、魔力計を内部発表し、王族や国定魔導師達、各将軍達に内密に名を知らしめる。
12歳。【ソーマ酒】を完成させる。ナダール領蜂起を予期して王太子セイランの窮地を救い、討伐戦で初陣。軍議や戦でも貢献し論功式では史上最年少の白銀十字功勲章を授与される。そしてこの戦争にてセイランから絶対的な信頼を得、直属の臣下となる。戦後には左腕に紀元書の【導師】の証である鳳の紋章が出現する。
その後、レイセフト家を出奔し、アーベント家の別邸を構え独立。魔導師ギルドにも工房を構える。
13歳。製作者を伏せられたまま【魔力計】が公式で発表。魔法院を主席で入学。研究で魔法陣に着目し【魔力蒸気】を利用した【魔導籠手】と【呪詛計】を続けて発明する。
容姿
シルバーブロンドのウェーブヘアに赤い瞳の持ち主。
絵に描いたような女顔であり、初対面では大抵性別を間違えられる程。一部の変態からは「飛び切りの美人になる」と予想されている。
13歳からは髪を伸ばし、益々美少女化していく。リーシャ曰く容姿は母親似であるとの事。
人格
性格は温厚で勤勉かつ努力家。
貴族ではあるが異世界の男の影響で平民と近い気質の持ち主。故にこの世界の常識に囚われず、男の価値観をそのまま受け継いでいる。
両親への反発心で反骨精神が強いものの自己評価は恐ろしく低く、己を「才能はない」と酷評している。
追体験の経験から精神年齢は高く、大人相手でも饒舌な対話が可能。しかし、その利発さに反して両親から虐待された心の傷は根深い。
非常に凝り性で、その性質は刻印や料理にも表れている。また、成長するにつれて口が悪くなりクレイブに似てきた。
人物関係
レイセフト夫妻
アークスの両親。
魔力至上主義の夫妻はアークスを廃嫡するまでは溺愛していたが、6歳以降は一転して親の義務を放棄し、日常的に虐待を始めた。その酷さはアークス曰く児童虐待で通報されるレベル。
しかも公私で我が子を無能と罵っていたので、アークスの自己評価の低さに影響を及ぼした。
クレイブの牽制や世間体から追い出しはしなかったが、本人が出奔するまで始終態度は変わらず白銀十字功勲章を授与されても評価を覆さない。
親子関係は和解不可能まで陥っており、アークスも強い恨みから情を捨て去っている。
クレイブ
アークスの伯父。
廃嫡されたアークスの頼みで彼を弟子として受け入れる。弟夫婦が養育を放棄したので親代わりとなり、魔導や貴族教育の他にも戦闘訓練も施した。
過去の負い目からアークスの願いは割と聞き入れ、教育は放任主義ながらスパルタ方式。
アークスの重要性を弟夫妻から隠すべく、公では保護者の役割も担っている。クレイブ本人はアークスの意思次第で養子に引き取る気でいる。ちなみに揃っての苦労性で、研究気質で境遇も似た者同士から共通点が多い。
リーシャ
アークスの妹。血縁上はイトコ。
幼少から兄への思慕から廃嫡後も態度を変えず、何もできない現状を嘆いていた。
当時のアークスにとって屋敷内で唯一の心の拠り所となっていたが、お互いに多忙となり疎遠となる。
アークスからは大事に想われており、魔力計や秘伝のオリジナル呪文を幾つか伝授されている程。アークスが思う以上にリーシャからは慕われている。
スウ
アークスの友人。
カズィが起こした誘拐事件が発端となりアークスと出会った。
共に魔法の勉強に励み、アークスが魔力計の秘密を明かす程に信頼している。幼馴染に近い関係で遠慮がなく、スウの身分が発覚しても変わらない。
成長するにつれてアークスは女性として惹かれていくようになる。
シャーロット
元婚約者。
ガストン侯爵家が起こした事件によりアークスを知り、婚約に前向きとなるが家の事情で破棄となる。
文通から紆余曲折あって剣術仲間となった。
シャーロットはアークスに好意を抱き、再婚約を望んでいるがアークスは友人としてしか見ていない。
天稟と能力
天稟は見たものや聞いた内容を忘れない瞬間記憶能力。
持ち前の明晰な頭脳と男の知識を生かし、研究者・軍官・魔導師として天才的な能力を発揮する。手先が非常に器用で刻印や修理等も得意。
クレイブの訓練成果で魔法無しでも戦闘能力は高く、剣術は男の世界を再現した刀を選んでいる。
得意魔法は主にオリジナル。異世界の銃、マシンガン、爆発の再現魔法。最も強力なのは重力魔法。平均並みの魔力量なので魔法が限られるのが難点。
異世界人
本名は不明。アークスが暮らす世界とは別の世界の成人男性。非常に博識で読書家。語学、科学、兵学等分野も幅広く、何らかの受賞歴もある程。更に剣術や体術にも優れまさに文武両道を体現したような人物。
母と婚約者と共に満ち足りた平和な生活を送っていたが、事故で死亡した。
アークスの前世かは不明であるが、彼自身の常識と知識はアークスや異世界に絶大な影響をもたらしていく。
余談
アークスは自己卑下しているが実際は「有能」である。
その潜在能力は天才と名高い王太子セイランと遜色もなく、国定魔導師でさえ末恐ろしい存在として畏怖する程である。
まずオリジナル呪文は魔法院(13歳入学)で魔法操作や単語と成語を五年間学んだ上で構成できるのだが、それでも有効な呪文を作り出せるのは一割前後。
クレイブを師事しているとはいえ、アークスは8歳から独学で並行して魔力計等を開発しながら10歳でオリジナル呪文を次々に作り出した。
劇中では同世代で優秀な魔導師は登場しているが操るのは既存の呪文であり、王太子を除いたオリジナル呪文を構成できる者はいない。それだけでアークスの異常性がわかる。
そして以下、13歳までの功績。
・古代魔法【練魔】の復活
・【魔力計】【呪詛系】、魔力回復【ソーマ酒】の開発
・刻印具の多様化
・軍議の貢献
・敵兵軍の撃破殲滅
兵学の基礎も異世界の知識で既に学んでおり、策略的な意味でもこの世界の兵法より格段に凌駕している。ナダール討伐戦の軍議ではアークスの意見で方針を変えており、参加していた西の軍官貴族や領主達から無能のレッテルを剥がす事に成功した。
平原会戦や奇襲戦でも敵軍に致命傷の打撃を与え、その褒章は本来なら大十字殊功勲章ものだがセイランと並ぶ功績と判断した国王の一存で手柄を奪われてしまった。
特に【魔力計】はライノール王国に絶大な貢献し、運用基準も提示して魔法技術のパラダイムシフトを起こした。
しかし物が重要過ぎるあまり、内部発表、公表でも発明した当人の名はまだ秘匿され上層部一部のみしか知れ渡っていない。
間違いなく王国の歴史的偉業を成し遂げたアークスだが、それでも頑なに己を「才能がない」と酷評している。
以下、ネタバレ注意。
実はアークスはある人物に完全に囲われている。
その人物は公ではアークスを臣下に取り込み、私生活では友人の立ち位置で素知らぬ顔で傍にいる。
そして四大公家に自ら勧誘などの取り込みを牽制しており、アークスを渡さないという強い意思を感じさせる。当然ながら本人は全く知らない。