神話の内容
パニアに纏わる神話は2つの諸説に分かれている。本稿ではその2つの諸説を解説する。
諸説その①
昔々、海の民の娘・パニアは毎日岸まで泳ぎに行き、夕方になると深い海へ帰っていた。ある日、パニアが岸に泳ぎ着くと、「カリトキ」という名前の一人のマオリに出会った。
その後二人は幾度も会い恋に落ちることに。しかし彼女は自身が「海底を住処とする海の民」であり「海の民は陸で暮らすこと、陸にあがることを禁じられている」ことを理由に、サイレンが鳴る度に元の海底へ帰らなければならなかった。
カリトキが戦争に出ていたある日、彼女は再び陸に戻ろうとしたところ、海の神の怒りを買って海中の岩棚に姿を変えられてしまった。
諸説その②
「パニア」という美しい娘が、ニュージーランド北島の海に住んでいた。入江に流れ込む小川にある茂みで休息を取るのが、彼女の日課になっていた。
ここでは、マオリ族の族長・アリキの息子で、大変ハンサムな「カリトキ」という若者が、塩分濃度が低いという理由で毎晩喉の渇きをいやしていた。パニアは彼に出会うことなくただ見ているだけの片想いであったが、ある日偶然目があってしまったことを機に一瞬で恋に落ちた。
命を賭けて互いに愛を誓い合った2人は秘密裏に結婚。しかしパニアは水棲人類であり、『海のサイレンが毎朝私を呼ぶけれど、そうなったら帰るしかなく、もしそれに背けば私は生きていられない』と彼に説明。パニアが毎晩カトリキの家に通う体裁を取っていた。
パニアの美貌を自慢したいカトリキは、幸運にもパニアたち水棲人類の存在を知っていた長老から『パニアに調理された食べ物を飲み込ませれば海に帰る事を許されなくなって、いっしょに陸で暮らせる』と教えを受け、彼は当日の夜にパニアが眠りについた隙に実践。しかしニュージーランドアオバズクの鳴き声で目が覚めてしまい、彼女は海へ逃げる形で帰ってしまった。
カトリキは彼女を追ったものの彼女の同族によりかくまわれ、結局それ以来カトリキは彼女に会えなくなった。
パニアの像
ニュージーランドのネイピアにあるマリン・パレード沿いの公園に、パニアのブロンズ像が立っている。→外部リンク