概要
ボクシング技術の基本であるジャブの一種。
アメリカのプロボクサーで、世界王座5階級制覇を達成したトーマス・ハーンズが多用したことで有名。
通常のジャブはガードをある程度上げた状態から、目標へ直線的に素早く繰り出すのが基本である。これに対し、フリッカージャブは左腕(サウスポーの場合は右腕)をだらりと下げた「デトロイトスタイル(別称:ヒットマンスタイル)」やL字ガードと呼ばれる構えから、腕全体をムチのようにしならせてスナップを効かせて斜め下から打ち込むジャブである。
ハーンズの場合は198cmとも言われるリーチに加え、持ち前の身体能力の高さを活かした高速かつ変則自在なフリッカージャブにオーソドックスなジャブを織り交ぜる事で相手にリズムを掴ませず、間合いを支配する事に長けた。
漫画好きには間柴了の代名詞として有名。
種類と練習
以下左手が前のオーソドックスを前提とする。
フリッカージャブと言うと間柴やトーマス・ハーンズのようなリーチの長い選手の打つ、ムチみたいなジャブを想像する人も多い。
しかしフリッカージャブには二種類ある。
一つはハーンズや間柴のように遠くから、腕全体をしならせ素早く打ち込むフリッカーだ。
もう一つは前腕部のみで相手の左手を数回はたき、相手の注意を外側に向けるという効果のあるフリッカーもある。こちらはリーチの長さは関係がなく、また練習もしやすいため実践(スパーリング等)にも投入しやすい。しかしオーソドックスの左ジャブができていなければお話にならないので左ジャブが苦手ならフリッカーなんてしない方がいい。
・前腕部で打つフリッカー
➀肘と拳を水平にして前腕部だけで連打。この時相手の左腕の上から叩いて注意を外側に向ける(相手の右に警戒しながら、相手から見て左にサイドステップで回り込むとベスト)。そして4回くらい叩いて不意に相手の右顔面に軽い左フック(このフックも前腕部だけで行いたい)。
➁そうすると左からの攻撃に注意を向けていた相手は急に反対側を打たれることになる。ここから右へつなげて欲しい。
このフリッカーは仕組みも複雑ではなく練習、実践投入もしやすいが、それ故に欠点がある。
それは仕組みが複雑ではないため相手が慣れてしまう。なので通常のジャブが得意な人でないと相手を錯乱することはできないだろう。あくまで右に繋げるためのフリッカーとして学んで欲しい。多用、過信は禁物。
・腕全体をしならせて打つフリッカー
よく漫画とかで使われ、またトーマス・ハーンズが得意としたジャブ。前提として、腕全体をしならせるため遠い位置まで届くため、↑のフリッカーと違い通常の左ジャブと同じように使うと思って欲しい。とはいえ全く同じではない…要は間柴の使ってるあれ(適当)
➀フリッカーは徹底的に左腕の脱力を行う。そのため左腕が下がったデトロイトスタイル(ヒットマンスタイル)になる。手の位置は基本的にヘソ下の高さあたりでプラプラさせる。要は脱力した状態をできるだけ作りたいのであってよく言う左右に振る動作は慣れるまでいらない。力を抜いて手を軽く握ってプラプラさせる感じ。
➁打つイメージはデコピンだ。肘から先をデコピンの時の第2関節のようにスナップさせる。徹底的な脱力が大事。デコピンも打つ指の力を抜いた方が打ち込む時に威力が出るのである。
おそらくここが一番の難しいので何日もかけて脱力とスナップの感覚をつかもう。
➂脱力、スナップの感覚を掴めたら軽いマスでもしてみるのがオススメ。ガードが下がっているので、できるだけ距離を取る。この時できるだけ遠くから打てる方がガラ空きの左顔面に被弾するリスクが減る。だからフリッカージャブはリーチの長い人向けなのだ。ガラ空きの左顔面をどのように守るのか考えながらジャブを打つといい。
避けるときはフットワークを使ったスウェイバック、パリングがオススメ。ダッキングやウィービングはオススメできない。なぜなら相手は攻撃のとき距離を詰めてくるので、ダッキングやウィービングだと相手との距離が縮まったままになる。そうするとガラ空きの顔面が危ないしフリッカーの「遠くから打てる」という利点を潰してしまう。
マスなので決して思い切り当てないこと。相手が思い切り当てるつもりで攻めてきても、避ける練習と考えよう。本当に強い人はマスなんかでムキにならないのである。
余談
なお、少年時代のハーンズは所謂「もやしっ子」だったという。
それが5階級制覇を成し遂げるのだから、幕之内一歩も真っ青のサクセスストーリーである。