概要
「マット」とは光学合成の際に画角の一部を未露光にするためのマスク(覆い)のことであり、未露光部分に手描きの風景画やCGなどを多重露光することにより、架空の世界に現実感を持たせる技術である。マット自体は固定されたままであるため、動体を合成する「トラベリングマット」に対し、「ステーショナリーマット(固定マスク)」ともいう。実際の合成手法には後述するグラスショットやデジタル合成など、フィルムでのマット合成とは技術的に異なるものもあるが、広く「マットペイント」の呼称が用いられている。技術的には映画の黎明期から使われている古典的な技術である。
マットペイントはもともと油絵具やアクリル、パステル、フェルトペンなど、あらゆる画材を使用して描く、手描きの絵として発展した。
方法には、現場でカメラ前に絵や写真を修整したものをかざして撮影するもの(グラスショット)と、実写撮影後にスタジオに持ち帰って作画しながら完成度を上げていくも両のつがある。前者は「撮り切り」で完成する反面、絵を現場で完成させなければならず、現場の天候、陽の傾きなどとの厳格な勝負となり、短時間で高品質を作る技量が要求されるため、写真の切り抜きや現場の太陽光を生かしたミニチュアと併用する場合もある。また、後者にもいくつか手法があり、最初に現場で撮影したフィルムをすぐに現像せず、本番とは別に余分に回しておいたフィルムを使って短いテスト撮影を繰り返し、実写と絵のなじみを近づける方法を生合成と呼ぶ。これはオリジナルフィルムに直接合成されるものであり、仕上がりの鮮鋭度が良い反面、オリジナルをいじるという大きなリスクを負う。
上記以外の方法は、実写撮影分は一度現像され、オプチカルプリンターやスクリーンプロセスを用いて絵と合成する手法であり、満足のいく作画ができるまで何度でも合成をやり直せる利点がある。
関連タグ
・絵
・イラスト
・描画