概要
アルバイト店員が多数を占める飲食店やサービス業において、しばしば接客時に用いられる特徴的な言葉遣いのことです。とくに、ファミリーレストランやコンビニエンスストアの店員がよく使うことから、「バイト敬語」「ファミレス敬語」「コンビニ敬語」「ファミコン言葉」とも呼ばれます。
メディアではよく、日本語の乱れやいわゆる若者言葉の典型として批判的に取り上げられます。学術的な見地からすると、必ずしも誤った表現とは言えないとの分析もありますが、一般的には違和感を覚えたり、不快に感じたりする人が多いのが現状です。
生まれた背景
お客様と直に接することの多い職場では、敬語の研修が欠かせません。特に新入社員や途中から現場に入った社員にとって、敬語はその場に立った瞬間から使わなければなりません。
しかし現実問題として、敬語研修が間に合わないことも想定されます。そこで、敬語を使う機会の多い職場では、分りやすい敬語の指導書が必要不可欠です。敬語の指導書には具体的な敬語表現を用いた会話例が記載されています。
バイト敬語の中で最も多い使い方は、知っている敬語をとりあえず組み合わせてあいまいな表現にする方法です。何となく敬語らしい雰囲気にはなりますが、意味を考えると実はおかしい場合もあります。社会の一員としてバイトをするためにも、恥ずかしくない正しい接客用語を確認しましょう。
以下に、代表的なものを挙げていきます。
主な使われ方
「~になります」
NG敬語「こちらハンバーガーセットになります」
OK敬語「こちらハンバーガーセットです」
⇒「~になる」というのは、変化を表す言葉です。この場合だと、目の前で別のものがハンバーガーセットに変化したのではなく、ハンバーガーセットが完成した状態で目の前に出されているので「なります」というのは不自然です。
「~のほう」
NG敬語「コーヒーのほうお持ちしました」
OK敬語「コーヒーをお持ちしました」
⇒「~のほう」というのは複数のものに対して、どちらか一方という意味があります。例えばケーキとコーヒーを注文した人に対して「お先にコーヒーのほうをお持ちしました」という表現なら正しいのですが、コーヒーを1つしか注文されていないのに「~のほう」と付けるのは適切ではありません。
「(客が支払った金額)からお預かりします」
NG敬語「1万円からお預かりします」
OK敬語「1万円をお預かりします」
⇒「1万円をお預かりし、その中から代金の1,000円をいただきます」という意味で、省略されたり混同されたりした結果「1万円からお預かりします」という言い回しになっているのですが、「1万円をお預かりします」「お釣りは9,000円でございます」と返すのが適切です。
もし、会計額に対して支払額が丁度だった場合は「〇〇円頂きます。」とします。
「(お釣りの金額)とレシートのお返しです」
NG敬語「〇〇円のお釣りとレシートのお返しです」
OK敬語「〇〇円のお返しと、レシートでございます」
⇒お釣りはお客から預かったお金なので「返す」ものですが、レシートはお客から預かったものではないので、「返す」のではなく「渡す」ものです。
レシートのみの場合はシンプルに「レシートです(でございます)」と言葉を添えましょう。
「よろしかったでしょうか?」
NG敬語「ご注文は○○でよろしかったでしょうか?」
OK敬語「ご注文は○○でよろしいでしょうか?」
⇒「よろしかった」という表現は過去形です。つまり過去に確認したことがある事柄について、もう一度確認するような言い回しです。2回目以降の確認ならば「よろしかった」でも問題ありませんが、そうでないのなら「よろしいでしょうか」のほうが適切です。
「お召し上がりですか?」
NG敬語「店内でお召し上がりですか?」
OK敬語「店内で召し上がりますか?」
⇒「召し上がる」という言葉はそれだけで尊敬語ですが、そこに「お」を付け足してしまうと二重敬語になります。同様に「召し上がられますか?」も「召し上がる」に尊敬語の「~られる」を付けた二重敬語なので正しい敬語とは言えません。
ちなみに、これとセットで使われやすい「持ち帰る」はそれ自体が尊敬語ではないため、「お持ち帰りになりますか?」と表現しましょう。
「もしもし」
NG敬語「もしもし。こちら○○レストランです」
OK敬語「お電話ありがとうございます。○○レストラン○○店の××です」
⇒勤務先のお店などで電話を受ける際は、電話の相手が誰であっても失礼のないよう最初に「お電話ありがとうございます」と言うのが一般的です。また相手が名乗る前に自分が先に名乗るのがマナーです。
「(社内の人間など身内の人間)は本日お休みをいただいております」
NG敬語「○○店長は本日、お休みをいただいております」
OK敬語「店長の○○は本日、休みを取っております」
⇒電話が会社からなら別ですが、多くの場合は電話の相手からお休みを「いただいている」わけではないので、この表現は正しくありません。また自分の上司を指す時に、○○店長や○○主任など役職で呼んだり○○さんと呼んだりしてしまいがちですが、社外の人に説明する際には名字のみで呼ぶようにしましょう。また、休みを取るのは「ウチ」の人間の行動なので、それを「ソト」の人間に説明する際は、「休み」に美化語である「お」をつける必要はありません。
「(上司や先輩に対して)ご苦労様です」
NG敬語「先輩、ご苦労様でした」
OK敬語「先輩、お疲れ様でした」
⇒「ご苦労様」というのは、目上の人が目下の人に対して使う言葉です。上司や先輩に言うと失礼に当たるので、「お疲れ様です」を使うようにしましょう。
「了解しました」
NG敬語「了解しました」
OK敬語「承知しました」もしくは「かしこまりました」
⇒「了解です」はかなりフランクな表現です。上司や先輩でも親しい間柄なら問題はないでしょうが、やはり仕事で使う言葉は正しい敬語のほうが良いです。
正しく敬語を使えるようにするためには
敬語に苦手意識があると「覚えることがいっぱいだ…」と困惑してしまう方もいるでしょう。まずは以下の5つのポイントをおさえておきましょう。
最後に、接客は機械ではなく人間が相手のお仕事です。また、正確な敬語を使うことは重要なことですが、接客の目的ではありません。あくまでも、「相手を気遣う気持ち」が大切であることを忘れてはなりません。
関連サイト
fromA:ありがちなバイト敬語と正しい会話表現~具体例つき~
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ファミコン語:表記ゆれ