解説
例えば「お読みになられる」は、「読む」を「お読みになる」と尊敬語にした上で、更に尊敬語の「れる」を加えた言い回しです。
「お〇〇になられる・ご〇〇になられる」のように、「に」を介し、接頭語を冠した動作性の漢語や動詞連用形に続く場合、「なられる」は受身や可能の意味でなければ、馬鹿丁寧だとして一般的に不適切な表現となります。
一方で「お宅のお嬢様はおいくつになられましたか?」「ご立派に(お美しく)なられたそうで」のように接頭語を冠した名詞や形容(動)詞に続く言い方は誤用とはされません。
敬語動詞でも、「いらっしゃる」「おっしゃる」のように命令形で「~ゃい」の形で用いられる動詞で、「おっしゃられる」「いらっしゃられる」の形で用いる場合、受身や可能の意味でないと二重敬語とされ、一般的に不適切な表現となります。
「くださる」「なさる」は、それぞれ「下す」「成す」の未然形に助動詞「れる」がついた「くだされる」「なされる」が縮まった言い方になった語です。
これは「くださる・くだされる」「なさる・なされる」は両方使っても問題ありませんが、「くだされる・なされる」は「くださる・なさる」の未然形に助動詞「れる」がついた形とも取れるので、場合によっては注意が必要です。
ただし、以下のように、語によっては習慣として定着しているものもあります。
習慣として定着している二重敬語の例
(尊敬語) お召し上がりになる,お見えになる
(謙譲語Ⅰ)お伺いする,お伺いいたす,お伺い申し上げる
「召し上がる」「見える」「伺う」は単独で敬語として用いられますが、これらの定着した表現は接頭語をつけて用いても問題ありません。「どうぞお召し上がり(になって)ください」「お客様がお見えです」「○○についてお伺いできますか?」という言い方も定着した表現と見なすことができます。
ちなみに「召す」という言葉も尊敬語ですが、「お召しになる」「召される」の形のほうがよく使われます。
また、「各位・部長」など、単独で尊敬語としても用いられる代名詞的な語や役職名に「様・殿」をつけた「各位様・各位殿」「部長様・部長殿」も二重敬語で、あまり適切な表現ではありませんが、「部長さん・プロデューサーさん」などのように、口頭では親しみをこめて「さん」をつけて言うこともあります。
組織内で改まった場面で呼ぶ場合、「さん」を除いて「部長・プロデューサー」というのが一般的です。
なお、天皇・皇后両陛下のような特別の敬意を表すべき方々のなさる事の表現に限りましては、「最高敬語」として丁寧語や尊敬語を重ねた二重敬語を用いることがあります。
平安時代のような古文の時代は「〜(さ)せ給ふ」のような二重敬語がよく用いられており、近年でも「在らせられる」「〜に於かせられましては」といった二重敬語が用いられることがあります。
逆に言えば、そのような特別な場合でもなければ、わざわざ二重敬語を使うまでもないと言えるでしょう。
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重言:ある意味、これである。