概要
Red Candle Games(赤燭遊戯)のゲーム『還願』の主人公。職業は脚本家。彼の視点から物語は進む。
1970年代に活躍した脚本家で、若くして数々の賞を受賞した才能ある人物。私生活では彼の作品に出演した美人女優・鞏莉芳と結婚し、公私共に順風満帆な日々を送っていた。しかし80年代に入り映画界に台湾ニューシネマの波が来ると、従来の娯楽的な作風を得意としていたフォンウの脚本は売れなくなり、生活にも翳りが見え始める。
暮らし向きが悪くなると共に夫婦仲も険悪になっていき、妻との諍いが日に日に増える中で、娘のメイシンの活躍だけが唯一の慰めだった。しかし劣悪な家庭環境と大舞台の重圧は繊細なメイシンの心に耐え難く、それらへの緊張や辛苦は徐々に彼女の精神を蝕んでいく。
大切な娘の苦しみを重く見たフォンウは、やがて恐るべき手段で事の解決を図ろうとする…。
人物
プライドが高く現実より理想を重視するタイプで、世間体を非常に気にする小心者。かなりの見栄っ張りで、生活が困窮しているにもかかわらず体面のためだけに所持品や高級魚を買い漁り、妻のリホウを怒らせてしまう。必要以上に自分を大きく見せようと威圧的な言動をすることがある一方、他人に弱みを見せることが苦手な所がある。
こうした性格のため親族や知人も彼を良く思っておらず、入居祝いの麻雀やアドバイスの手紙を破り捨てる行為からも見て取れる。
迷信を担ぐ傾向があり、中華圏の伝統的な風習を守るのは勿論、新興宗教『陸心会』の思想に染まり切ってからは、生活や娘の治療より祈祷や喜捨を優先していく(本人的には娘を治すために必要であると信じているため余計に始末が悪い)。
更には偏見も強かったので、病院でメイシンの病が心因性のものであると診断されても信じず、適切な治療を受けさせなかった。これはフォンウ一人に限った話では無く、当時の社会では精神疾患に対する理解が浅く、精神病患者=狂人と安直に捉えられることが少なくなかった。そのためフォンウも娘がキ○ガイ呼ばわりされたと思って怒り、受診をやめてしまったのである。
…もしここで精神科医に頼っていたなら、メイシンは死なずに済んだかも知れない。今更であるが。
時代的なものもあるが、男尊女卑の思考が強く、妻が外で働きに出ることを良しとしない(当時は女性が働く=夫が稼げないダメ人間とされる事が多く、フォンウの性格的に耐えられなかったと思われる)。フォンウの場合は行動が特に極端で、家事を分刻みのスケジュールでやるよう言い付け、作中でリホウが働きたいと申し出た時は、彼女が大切にしていたチャイナドレスを引き裂く凶行に走ってまで止めようとしていた。
ここまで書くとモラハラ気質のダメ親父にしか見えないが、娘のメイシンに対する愛情は本物であり、宗教に熱心になっていったのも娘の病を治したい一心からである。
顛末
凄まじい様相の我が家、妻の衣装を纏った女の化け物、何処にもいないメイシンと、断片的に蘇る過去の記憶。
頭の整理がつかず疲弊するフォンウの脳裏に、あの日の記憶が蘇る。
妻のリホウが我慢の限界に達し家を出てから、メイシンの体調は悪化。困り果てたフォンウは信頼するホー先生(フォンウが入信した新興宗教団体『陸心会』の会員)に相談する。ホーが指示した治療法を聞いたフォンウは、メイシンを救うためそれを決行。それは慈孤観音の眷属であるアマガサヘビと酒を浴槽に満たし七日間漬けるというものだった。
冷静に考えれば大人でも死に至る行為と分かりそうなものだが、最早錯乱状態にあったフォンウにはそれが分からず、結果メイシンは死亡。フォンウの意思がどうあれメイシンにした行為は紛れもない虐待であり、微かに残った正気で自分のしでかした事に恐怖したフォンウは、そのまま意識を逃避させる。以上がゲーム開始以前の事の次第である。最初の画面に現れる日常風景はフォンウの妄想だったのだ。
この前にフォンウは観落陰という道教の儀式を行っているが、専門家の指示の下に適切な方法を取らないと、離魂状態に陥ることがあるとされ、それにも原因があると思われる。
思い出したくない全てを思い出し、妻も、最愛の娘も、何もかも失ったフォンウが、暗闇のリビングで砂嵐のテレビを呆然と眺める姿を最後に物語は幕を閉じる。
余談
- 一方妻のリホウの結末だが、直接的な描写が無いため様々な説が議論されており、その中にフォンウに殺害されたという衝撃の末路がある。根拠にはオープニングの場面で、メイシンの行方を尋ねるリホウの声に混じり、何か肉らしきものをぶち切る音が聞こえること、最後の家の場面で、台所脇の黒いゴミ袋の量が異常に多いこと(入口を塞ぐことでプレイヤーを浴室へ誘導する装置も兼ねる)、暗めの照明で見にくいものの、浴室へ向かう廊下一面に血の跡らしき汚れがあることが挙げられる。更にはゲーム発売前の謎解きにもバラバラ殺人のイメージが繰り返し示唆されており、これらを総合して考えるに、
「偶々二人の様子を見に帰ったリホウが、儀式をするフォンウに驚愕し、娘のいる浴室を開けようとしてフォンウと揉み合いになり、彼に殺されてしまった」(そして遺体をバラして隠滅しようとしていた)
という結論が妥当であるとされるものである。
しかし決定的な描写が無いためリホウが死んだとは言い切れず、『娘の死のショックで廃人になった』『娘の後を追って自殺した』『逆に夫の所業に激昂したリホウがフォンウを殺し、ゲーム内容は死霊となったフォンウの目線で語られたもの(※)』というものもある。
(※)こちらの説は、ゲーム本編でリホウを演じられた陳品伶(チェン=ピンイン)氏が台湾のニュース番組で否定なされた模様。
https://maria-taiwan.com/2019/05/17/1807/