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若有來世 你還願意嗎?

(来世があるなら、また願っても良いだろうか)




概要編集

『還願』とは「Red Candle Games(赤燭遊戲)」開発のストーリー形式心霊ホラーゲーム

還願とは「願いが叶った事に対する神仏への御礼参り」を指し、英題Devotionは「献身、宗教的情熱」を意味し、宗教絡みの物語への関連性と、また主要登場人物であるドゥ一家それぞれの互いへの愛を表す。

しかし物語が進むにつれ、この“還願”にはもう一つ、痛切な意味が込められていることが明かされる。


舞台設定は1980年代の台湾。信仰と生活が密接に結びついたこの地の古いマンションにかつて存在した、ごく普通の3人家族の日常風景と消し去れない記憶が物語として展開される。

返校』と同様、時代背景が悲劇を呼ぶ筋立てになっており、前作以上に歴史的要素が盛り込まれた重厚なストーリーとなっている。

物語の主要人物である3人家族はごく普通だが出自はスターダム寄りであり、脚本家の父、元女優の母、そして優れた歌の才能を持つ小学生の娘から構成される。

折しも80年代は台湾映画界の過渡期であり、その時流に取り残される父と、巻き返すように過度な期待を寄せられる娘、そして当時の社会問題であった新興宗教団体による詐欺行為と精神疾患への無理解が家庭を崩壊させていく。


マンションに足を一歩踏み入れると、聞こえてきたのは懐かしい80年代の歌謡曲。テレビにはオーディション番組が流れている。こんなに懐かしい光景のはずなのに、なぜ不安を掻き立てられるのだろう?


あなたはかつて「家」と呼ばれたこの空間で探索する。多くの予期せぬ変化の中、どんどん奇怪さが増していく周囲の環境に血の気が引く。ひとつ、またひとつと過去の思い出を歩み、何層にも重なった幾多の謎を解くにつれ、「家」に埋もれた耐えがたい真実を徐々に掘り起こす。


いつか、誰かがあなたにこう言った。「誠意をもって願えば、願いは必ず叶う。」



諸事情で配信停止となったが、公式オンラインショップにてDRMフリー形式で再公開された。


ストーリー編集


1987年、脚本家の杜豐宇(ドゥ・フォンウ)はいつものように自宅のリビングで娘のメイシンが出演するテレビ番組、『七彩星舞台』を鑑賞していた。台所では妻のリホウが夕食の支度をしている。平穏な日常の風景。妻がフォンウの子煩悩を嗜め、体の弱いメイシンが元気になったのは“観音”のご利益だと喜ぶが、そのメイシンの姿が見えない。『メイシンは何処?』リホウの問いにフォンウは答えられなかった。


次の瞬間世界は暗転し、自宅は先程とは打って変わって荒廃していた。台所にいた筈のリホウも見えない。塗り込めたような暗闇でようやくライターを見つけたフォンウは、姿を消した二人を見つけるため、過去への旅を始める。


妻と娘は何処に?何故家が荒れ果てているのか?

その真実は、フォンウが嘗て犯した過ちと悲しみの記憶に封印されていた…。


登場人物編集

杜豐于(ドゥ・フォンウ)

還願

リホウの夫でメイシンの父。嘗ては新進気鋭の脚本家として多くの賞を獲り一世を風靡した。現在は時代の変化について行けずスランプに陥っており、目立った作品を発表出来ていない。

娘想いの優しい父である一方、プライドが異様に高く、虚栄心の強い見栄っ張りな性格。世間の目を非常に気にする小心な所もある。頑なに執筆姿勢を変えず、不調を案じる周囲や妻には高圧的に振る舞う。あまり賢い人間ではないらしく、脚本の文章が稚拙であったり、友人との麻雀で平然とイカサマをされてバカにされたりしていた。本人もそんな自分や現状に劣等感があるのか、都合が悪くなると罵声を浴びせたり物に当たったりと暴力的な行為にも及んでいた。

信心深い一面もあり、『選び取り』(中華圏の風習。乳児の周りに様々な道具を置き、子供が選んだ道具でその子の将来を占う)をしたり、女兒酒(女児のいる家で娘が嫁ぐ日まで寝かせる酒)を醸したりと几帳面に習慣を守っている。



鞏莉芳(ゴン・リホウ)

鞏莉芳

フォンウの妻でメイシンの母。若い頃は清純派女優並びに歌手として名を馳せた。フォンウとは作品を通じて知り合い、交際の末に結婚した。一人娘のメイシンを授かり幸せな生活を送っていたが、フォンウの稼ぎが悪くなると生活も苦しくなり、食器用洗剤を節約したり、実家から借金したりして家計を切り詰め、家庭を維持しようと一人奮闘する。

リホウがフォンウの父の日の祝いにライターをプレゼントするなど当初の夫婦仲は良かったが、プライドに固執して現実を見ず、稼ぎが少ないのに無駄に金遣いの荒いフォンウに怒り、夫婦間の諍いが絶えなくなっていく。

尚、リホウの姓だけ違うのは、台湾の結婚において夫婦別姓がメジャーなためである。


杜美心(ドゥ・メイシン)

來世

フォンウ、リホウ夫妻の愛娘。1975年生まれ。天真爛漫な少女で心優しく、歌うことが大好きだった。母譲りの美しい歌声の持ち主で、両親の勧めもあって『七彩星舞台』(還願世界の台湾ののど自慢大会的な歌番組)に出場し、高得点を叩き出したことで一躍人気者となる。しかし本人の性格はどちらかと言うと引っ込み思案で大人しく、大勢の人前で歌うのはやや苦手だった。体も然程強くなく、発熱で学校を休む事もあった。

加えて家庭環境の悪化に伴う両親の不仲に心を痛めており、成果を挙げねばならないプレッシャーとも相まって徐々に精神のバランスを崩していく。


何老師(ホー・ラオシ)

ドゥ一家と同じマンションに住む自称霊媒師の女。新興宗教『陸心助法会』の会員の一人で、“慈孤観音”という独自の観音菩薩を信仰する慈孤壇という戒壇を立ち上げている。本作最大の元凶



ARG編集

発売前記念イベントとしてRed Candle Games主催の代替現実ゲームが行われた。『返校』発売時にも実施されている。

本作から数十年が経過した現代の台湾各都市が舞台。本作のキーワードである新興宗教『陸心助法会(陸心会とも)』の信者を尾けるストーカー事件に関わるアイテムを収集し、事件の真相を解明していく。


謎解きゲーム編集

 本作の発売前に公式から謎解きゲームが仕掛けられている。内容はネット上に掲載された画像からゲームに関連する情報を読み解くというもので、情報の断片を繋ぎ合わせる事で、本作の舞台となる台北の中古マンションの悍ましい真実が明らかになる。


用語編集

  • 還願

神に願をかけ、願いが叶った際は代償を支払う事。即ち神への恩返し。本作のタイトルは主人公であるフォンウが娘の快癒を神(自身が信仰していた慈孤觀音)に願い、地獄めぐりの幻覚の中でその代償に目・舌・手を捧げた事をさす。


  • 紅龍(こうりゅう)

フォンウが居間の水槽で飼育していたアジアアロワナの一種。金運を招く縁起の良い魚とされ、起業家の間で飼育されるのが流行った。そこそこ値が張るので金持ちの道楽の面が強い。


  • 紙人形

紙と竹で製作された等身大の人形。葬儀の時に死者と一緒に燃やす事で黄泉の道に付き添わせ、最後の旅路の慰めにした。昔は紙人形を冥府における死者の使用人とする概念があったので、金持ちが死んだ場合は一気に十数個を火葬した。日本では三途の川を渡ると言われるが、台湾では奈何橋(ナイ・ホー・チャウ)を渡すと言い、死者は冥府に架けた橋を渡っていくとされた。故に紙製の乗り物を燃やしたり、冥府での住まいとなる紙の別荘を焼いたりした。


  • 選び取り

台湾・中国で満1歳になった子供に様々な品を選ばせ、どれを取るかで将来を占する風習。筆なら芸術家や物書き、貨幣や財布なら金持ち、匙や箸なら食うに困らない料理人、辞書なら秀才や博士にといった具合に判定する。


  • 女兒紅(じょじこう)

台湾と中国において娘の誕生祝いに酒を醸す風習。娘を嫁に出す日の宴会で甕を割り酒を注ぐ。嫁入り前に死ぬか生涯未婚で終えた場合は花雕酒と名前が変化する。本作でフォンウの自宅の厨房に吊るされていた甕の中身が該当する。


  • 慈孤觀音(じこかんのん)

本作でフォンウが信心していたホー先生率いる新興宗教団体の偶像。ご利益をもたらす霊蛇(アマガサヘビ)の化身とされた。


  • 言問い

フォンウがホー先生に唆されて行なったメイシンを劇的に回復させる儀式。一甕分の酒に発願者の血と霊蛇を捧げ、それで浴槽を満たして対象者を浸ける。一週間経過後に対象者を出し、慈孤觀音の神壇の前に跪かせ祈祷すると見違えるように回復するとされたが、ホー先生が捏造したインチキなので医学的な効果は皆無である。


トリビア編集

  • 『還願(Devotion)』のDevotionの意味は献身。

台湾版のタイトルは『還願』だが、日本版タイトルは『Devotion』に変更された。しかし並列して表記する場合が多い。『Devotion』の意味は献身、一意専心、傾倒、深い愛情、熱愛の他に宗教的な帰依、信心、祈祷、勤行などもあり、フォンウは娘の回復を祈りインチキ新興宗教に帰依するも報われず、リホウは娘と夫を生活苦から救う為に芸能界復帰を試みるがフォンウの抵抗で果たせず、メイシンは両親の期待にこたえようと無理した挙句に体調を崩す。それぞれの幸せを一途に願って献身しながらすれ違いのはてに家庭崩壊に至った悲劇と、背景にある新興宗教の問題を包括した秀逸なタイトルである。


  • 『還願(Devotion)』の発売前に公式が投稿した動画を解読すると、作中の歌番組の初放送日が出てくる

【考察解説】台湾ホラゲ『還願』の発売前「謎解きゲーム」をやってみた【1】


「Red Candle Games」(赤燭遊戲)は一作目から発売前に宣伝を兼ねた謎解き動画を投稿しているのだが、本作の予告動画では女の子向け着せ替え遊びの台紙のモデルのポーズが慈孤觀音を彷彿とさせたり、暗号から解読した数字を並べるとメイシンが出演した歌番組のモデルとされる「五燈獎」(ウ・ドン・ジャン)の初放送日になったりと、本編に繋がる数々のヒントが仕込まれている。


  • 『還願(Devotion)』発売前のユーザー参加型イベントでリホウの失踪が判明

本作発売前にユーザー参加型の公式イベントが開催された。まずイベントWebページを開くとたくさんの神棚が出現し、その神棚に願いごとをするとヒントを貰える。このヒントを解いて指定された時間と場所に行くと、陸心会という団体のメンバーからストーカー捜しを依頼される。参加者が謎を解いていくうちにこのストーカー被害を受けている陸心会のメンバーこそ実は黒幕であり、ストーカーの正体は陸心会という怪しい宗教団体を内偵調査していた人間だと判明する。

陸心会はホー先生が主催していた新興宗教団体の母体であり、ストーカーはリホウの妹。リホウは本作の冒頭1987年時点で失踪を遂げ、姉の蒸発に陸心会が絡んでいると見た妹が調査を継続していたのだ。以上の情報から1987年時点でリホウは既にフォンウに殺されているか、あるいは娘の死の遠因となった陸心会を探って処理された可能性が高い。


  • 『還願(Devotion)』の製作者は『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきた奇妙なこと』から着想を得た

『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』のCМ


『還願(Devotion)』は『サイレントヒル』や『Layers of Fear』などの一人称視点のホラーゲームから着想を得ているが、中でも親和性が高いのは『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』。特定のアイテムを取得したり特定の場所である行動をする(日記を開く、覗き穴を覗く)などをすると、プレイヤーの操作キャラクターが主人公から過去の同じ場所で同じ事をした人物または動物へ切り替わり、一人称視点は引き継いだまま物語が進む。この特徴は『還願(Devotion)』と同じであり、両作をプレイするとさらに余韻が増す。


関連イラスト編集

無題杜美心

再會センシティブな作品

謝謝~夫妻共沉


別名・表記ゆれ編集

Devotion:サブタイトルで、英語版のタイトル

还愿:中国語簡体字のタイトル


関連タグ編集

杜美心 アマガサヘビ

返校 赤燭遊戲

ホラーゲーム

外部リンク編集

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