概要
闘病記(とうびょうき)とは、病を患った人がその体験、療養過程や、獲得した人生観などを綴ったジャンル。
社会学者の門林道子は、『生きる力の源に がん闘病記の社会学』で「病気を患う人自身が自らの病いについて、そして病いと向き合う自分自身について書いたもの、それが闘病記である」と定義した。また、病者の家族が書いた病状記録などについても、門林は「病気のプロセス、そして死もまた家族との関係性のなかで存在することから家族が書いたものも「闘病記」ととらえている」としている。また門林は、闘病記の意味を「闘病記を書くことで『新たなる自分』を発見することができる。究極の状況から主体的に立ち上がって、肯定的にこれまでとは異なる人生を切り開こうとしているさまが闘病記から読み取れる」等としている。遺族にとってはグリーフケアの意味も果たす。
門林によると、「闘病」の語が「病気と闘う」の意味で広く一般に知れ渡るのは1926年に小酒井不木が『闘病術』を出版してからで、同年には「婦女界」に掲載された岩瀬又吉の「死線を越えて肺病を征服する記」の広告宣伝として闘病記という言葉も使われているという。2000年代に入り闘病記の出版点数が増加するのは、自分史ブームや、パソコンやワープロの普及、文芸社の成功などで自費出版の隆盛があったためとも指摘している。