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概要編集

駄サイクルとは、石黒正数の漫画「ネムルバカ」第4話「センニチテ」に登場するセリフ。

作中の登場人物「鯨井ルカ」が考えた造語ということになっている。


台詞が使われた状況編集

古本MAXでバイトしていた「入巣柚実」は、バイト仲間の「仲崎」という男に夕食に誘われる。

以前から仲崎をウザイと思っていた入巣だが、仲崎がバイトをやめて就職すると聞いて寛大な気持ちで奢られてやることにした。


「……えらい所に来てしまったな」

店内には至る所にアートポストカードを名乗るイラスト、よくわからない造形物が展示されていた。

店長の計らいでアーティストの卵たちに店を開放しているのだという。

「アーティストたちの憩いの場」とドヤ顔で語る仲崎に対して、内心で「ナルシストたちの墓場」と愚痴る入巣。

行儀悪くパスタを食べながら自分語りを続ける仲崎に愛想が尽きた入巣だったが、トドメと言わんばかりに痛い服装の店長が乱入。

聞きたくもないオリジナル曲を一方的に聞かされ、入巣は「アートと書かれた拘束具」に縛り付けられる悪夢を見るのだった。


寮の部屋で目を覚ました入巣は同居している先輩の「鯨井ルカ」に一部始終を話す。

それを聞いたルカは「あーー駄サイクルだねー」と聞きなれない言葉を返した。


入巣「ダサイクル?なんすかそれ?」

ルカ「私の造語 ぐるぐる廻り続けるだけで一歩も前進しない駄目なサイクルのこと」


ルカはそのまま駄サイクルの定義を語り続ける。


「輪の中で需要と供給が成立しちゃってるんだよ」

「自称ア~チストが何人か集まってそいつら同士で」

「見る→ホメる→作る→ホメられる→」

「――を繰り返してるんだ」

「それはそれで自己顕示欲を満たすための完成された空間なんだよ」

「で、自称ア~チストってのは常々やってて楽しいと思える程度の練習はするが」

「本当に身になる苦しい修行はツラいからせず…」

「一方的に発表できる個展はするが」

「正式に裁きを受けるコンペやコンクールは身の程知るのが怖いから出ず…」

「馴れ合いの中で自分が才能あるア~チストだと錯覚していく…」

「駄サイクルの輪は自称ア~チストに限らず色んな形でどこにでもある…」

たぶん ここにも――…


ルカが思い浮かべていたのは、インディーズバンドのヴォーカルとしてライブ活動をしている自分の姿であった。


ルカ「輪の中にいると気付かないんだ」

入巣「そう言われるとかわいそうな人たちですねー」


春休みの間もダラダラと同居生活を続付けるつもりだったルカは自己嫌悪に陥り、春休み中に一端帰省することにした。

ギターは寮に置いていったので練習に打ち込んだわけではないらしい。


補足編集

「需要と供給が成立した自己完結している世界に浸ること」が必ずしも悪いとは言えない。

重要なのは、鯨井ルカも言っているが、

本人の姿勢、目標と、駄サイクルという輪の中にいると気づいているかどうか。

「(駄サイクルの輪にいると自覚したうえで)自分は創作活動を趣味の範囲で楽しめればそれでいい」というスタンスの者が自己完結した世界で楽しむのことは決して悪い事ではない。同好の士が集まって意見交換したり互いに刺激を受け合うことを楽しむのであれば、それはなんら問題では無いし、そういった場所から逸材が生まれる場合だって実際ある。

問題なのは、プロになりたい、もっと技術が上手くなりたいと言ってるにもかかわらず、駄サイクルという馴れ合いの輪にいると気づかない、もしくは気づいていても駄サイクルから抜け出そうとしない者である。客観的に自分を見れない人、本当は自覚しているのだが自分の現状を認めてしまうのが怖い人などがこういった状態に陥りやすい。

そういう現状に満足している者は、えてして技術の向上や厳しいプロデビューは望めないものであり、「上手い人」にはなれても「プロとして自立出来る人」にはなり得ない。


人間誰しも辛いことや嫌なことからは逃げたいものである。創作というものは辛い現実から自分を救うために生み出されるものでもある。

しかし、より多くの人に自分の作品を見て貰いたい、聞いて貰いたいと願うのであれば、それなりの努力や代償、艱難辛苦を乗り越えねばならないのである。

関連タグ編集

石黒正数 ネムルバカ 鯨井ルカ 入巣柚実

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