『フレッシュプリキュア!』のプリキュアたちがそれぞれ所持するキュアスティックのうち、キュアベリー(蒼乃美希)が持つものがベリーソードと呼ばれる。
その名の通り剣をモチーフにしたアイテムなのだが…
概要
プリキュアシリーズでは素手で殴る蹴る投げるというアクションがある一方、アイテムを使って敵を殴るという描写は避けられがちになっている。
これは番組に出てくるアイテムを女児向け玩具として発売するので、女の子がプリキュアの真似をして玩具で誰かを殴る、ということを親御さんが嫌がるため。
そのため、プリキュアに出てくる武器アイテムは全て「不思議なエネルギーを敵に放射する」ものばかりである。
そんな状況の中で剣をモチーフにしたアイテムを渡されてしまったキュアベリー。
ベリーソードは他のキュアスティックよりも入手したのがなぜか遅く、満を持しての登場だったのだが、
上記の自主規制のためにベリーソードを使って敵を斬りつけることができず、個人必殺技発動アクションに使われるだけになってしまった。その発動アクションも剣舞のような勇ましい感じではなく、バトントワラーのような可愛らしい感じになっている。
「これじゃあ、剣をモチーフにしなくても良かったんじゃ・・・」というのは禁句。
しかもキュアベリーは個人必殺技発動の機会自体が他のプリキュアより少ない。ゆえに、ベリーソードは入手が遅かったのも相まって登場した回数が非常に少ない。
これらのあんまりな扱いから、ベリーソードはmktn不遇ネタの定番のひとつにもなってしまった。
第38話
ベリーソードの扱われ方がよくわかる伝説の放映回。
美希の失態でクローバーボックスが駐車していたトラックの荷台に乗っかってしまい、そのままトラックはどこかに走り去ってしまった。
彼女は責任をとるためにひとりでクローバーボックスを探して街中をかけずりまわる。
ようやくボックスをみつけたところで、それを奪おうとサウラーとソレワターセが出現。美希はキュアベリーに変身し、ボックスの争奪戦が始まった。
地面に落ちているボックスを挟んでにらみ合う。しかし、たった一人で戦うキュアベリーは形勢不利。意を決した彼女は今まで大人の事情で封印していたベリーソードを手にし、決意の表情でそれを構えて接近戦を挑む………とみせかけて、ベリーソードを中空に放り投げる。サウラーたちもつられて空中を見上げたその隙にボックスを回収。
そう、ベリーソードを使うとみせかけたのは巧妙な頭脳プレーだったのだ!
そして、満面のドヤ顔で彼女は言い放つ。
「ベリーソードは囮よ!」
ネタにされがちな囮戦術ではあるが頭脳プレーという面では実際に馬鹿にはできず、翌年ではキュアムーンライトが同じ戦術をとっている。
ちなみに、これらよりずっと以前に、Xライダーが子供を人質に取る怪人の注意をそらすためにライドルを空中に投げ上げるという戦法を使用したことがあり、意外と歴史のある戦術なのかもしれない。
プリキュア一、剣を使わないプリキュア
ちなみに、プリキュアが全く剣戟アクションをしないかというとそうでもない。
シリーズ全体の歴史の中ではごく数回であるが、一部のプリキュアが剣戟をするケースがある。
それは首謀者との決戦や劇場版などの重要なイベントでしか見られないもので、それゆえに視聴者にとっては印象に残るものとなっている。
まず、プリキュアが剣を手にしたとしても、それが玩具販促と関係ないアイテムだった場合は、わりと気にされない。
『映画 Yes!プリキュア5GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪』でシャイニングドリームが「スターライトフルーレ」という聖剣を用いてすさまじい剣戟を行い(その剣自体が名刀電光丸)ファンを驚かせたが、これもスターライトフル-レが玩具展開する予定がなかったからできたことである。
ちなみにプリキュア5のメンバーはTV本編でもキュアフルーレという剣状のアイテムを使っているが、こちらはやはり必殺技発動用であり、剣戟に使われたことはなかった。
その考え方の延長で、「現実の商品でもなく、視聴者の子供が真似できない剣」として、エネルギー体の剣を作り出して、それで剣戟をするプリキュアもいる。
(左:キュアビューティ『氷の剣』 右:キュアラブリー『ラブリーライジングソード』)
さらに、リボンとか指揮棒とかウエディングキャンドルとか口紅とかの「細長いアイテム」を持つプリキュアが、それらのアイテムを剣のように振り回してチャンバラを行うこともある。
これは「あくまで剣ではないものを振り回してるだけから、剣戟アクションをしてもそんなに怖い感じにならないよね」という逆転の発想からの演出である。
これらのアイテムは普段は剣として使うものではないため、特別な戦闘で「例外的な使い方」をしたことは児童にもわかるような演出にはされている。
これらの事例を見るに、ベリーソードは玩具アイテムなだけでなく、下手に名前が「ソード」とかついているがゆえに、製作側が過剰に神経質になってしまったのかも知れない。
皮肉にも、ベリーソードは剣であるがゆえに、剣として活躍できなかったのだ。
(真面目な話、これがベリーバトンとかいう名前なら剣戟できていたかも知れない)
キュアベリーに似た事例としては、それから4年後の『ドキドキ!プリキュア』のキュアソードがいる。
やはり彼女も名前が「ソード」なのが逆に仇になったか、剣を持って白兵戦をすることが許されなかった。この点はベリーソードと同じくネタにされがちである。
ただしこちらは「光の投剣で攻撃する」という演出を多用することで、白兵戦ができない中でも剣士っぽさを出すことには成功している。ただ、こういう工夫はベリーソードのような試行錯誤があったからこそ研磨されていったのだということも忘れてはいけないだろう。
このようにいろいろと縛りが強いのはプリキュアシリーズの宿命だが、キャラクターが女の子でもプリキュアになることがなければ、あからさまな刃物を振り回しても許容される傾向もある。女児向け番組としてはやはり珍しい方だろう。
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