概要
ネオ・ジオンが、鹵獲したサイコガンダムMk-Ⅱを小型化し、量産機として再設計した重攻撃型モビルスーツ(ティターンズで開発が進められていた量産型サイコガンダムも同様のコンセプトを持つ機体である)。
地球連邦よりアクシズに亡命したローレン・ナカモト博士らが、ガンダムMk-Ⅴをベースに開発を行った機体であり、ハンマ・ハンマで未完成だった一般兵用サイコミュの完成系を搭載した初の機体である。
主なパイロットはラカン・ダカラン。
本機の基本フレームの構成はガンダムMk-Ⅴを踏襲したものとなっているが、火器系統の配置に関してはサイコガンダムMk-Ⅱを参考にしており、Mk-Ⅴと比較してより火力に比重を置いた設計となっている。
機能的には第4世代MSに分類され、多数の直結型メガ粒子砲やサイコミュ兵器を搭載し、量産を前提とした機体ながらもΖΖガンダムにも匹敵する強大な火力を誇る。
また本機最大の特徴として、パイロットの微弱な感応波を増幅する技術を応用しコンピュータの補助によりニュータイプ能力の低い一般パイロットにも有線ハンドビームやインコムといった簡易サイコミュ兵器の使用を可能にしている。
有線ハンドビームはオールレンジ攻撃用端末としての用途の他に、敵機に取り付かせ高圧電流を送り込むショックバイトとしても使用可能であり、指揮官機のものはレーザー通信を利用したフル規格のビットとして機能することができる。
後者の場合、本体に隠し腕が仕込まれているため、腕部射出後も格闘戦において支障をきたすことはない。
またインコムはアクシズ内部の開発ではなく、ガンダムMk-Ⅴより受け継いだ連邦系の技術である。
これらの兵装は、通常のサイコミュ程複雑な操作はできず、あくまでもコンピュータによって擬似的にサイコミュ的挙動を再現しているに過ぎない。
しかし、アクシズの技術陣によって独自に改良が施されており、より柔軟な運用が可能となっているという。
第一次ネオ・ジオン抗争末期、同時期に開発されたザクⅢとの競合に於いて単機での性能を引き上げ人的資源の乏しさを補うというネオ・ジオンの基本戦略と合致した事からザクⅢを下し制式採用され少数が量産されているが、その全てがグレミー・トト率いるグレミー派側に流れている。
その内の六機が「スペースウルフ隊」の戦力として運用され、ハマーン・カーン配下のマシュマー・セロらと激闘を繰り広げた。
一部機体は第二次ネオ・ジオン抗争後にネオ・ジオン残党袖付きにて運用されている。
ジオンの後継たるネオ・ジオンの量産機ではあるが、前述の通り連邦のガンダムタイプの機体をベースとし、ザクの後継機を掲げる機体を下して主力機として制式採用されるなど、同組織の中において特異な立ち位置にある機体であると言える。
基本スペック
頭頂高 22.0m
本体重量 36.8t 全備重量 74.5t
装甲材質 ガンダリウム・コンポジット
出力 5250kW
スラスター総推力 87300kg(背部中央21700kg×1、背部バインダー部32800kg×2)
センサー有効半径 12000m
高出力・高火力をコンセプトとする第4世代MSらしく極めて高いジェネレータ出力を誇る。同時代のMSでこれを上回るのはΖΖガンダム(7370kW)、ゲーマルク(8320kW)、クィン・マンサ(21370kW)くらいであり、それらがいずれも量産を度外視したフラグシップ機であることを考慮すれば、少数ながら量産の実績がある機体としては異常なほどのハイスペックである。
高火力の重MSということで鈍重なイメージがあるが、ザクⅢとのコンペにおいて機動性・火力ともに上回っていたという設定がある。ところが設定されている数値上の総推力はザクⅢ(172600kg)に及ぶべくもないため矛盾が生じる。しかし、ドーベンウルフの総推力はバックパックの分のみを加算しており脚部に多数配置されたスラスターの分を無視している。そのため、実際のスペックはザクⅢのものを上回っていたと考えることもできる。
また、姿勢制御用バーニアの数は17基となっており、これは機動性強化型のザクⅢ改のものと同等である。そのため、加速力(推力に依存)と運動性(姿勢制御バーニアによる小回り)の総合力でザクⅢを上回ったものと解釈することもできる。
武装
高出力に任せた高火力、高機動というコンセプトからΖΖガンダムに似通った武装構成。
ビームライフル(兼メガランチャー)
出力12.5MW
バズーカのように肩に担ぐ大型のライフル。バウ、ドライセン、ガンダムMk-Ⅱといった同時代における平均的な火力のMSのライフル出力が2.8~3.6MWであることを考慮すると、主力火器ながらけた外れの威力を誇る。
メガランチャーモードを持ち、その際は腹部のメガ粒子砲に接続してジェネレータからエネルギーを直結で供給し、ライフル砲身は加速器となる。射角が限定され速射性も落ちるが、その出力は40.2MWにも達し、単発のビームの威力としてはΖΖガンダムのハイメガキャノン(50MW)に次ぐものとなる。その火力はマゼラン級宇宙戦艦を一撃で轟沈するという。
ビームキャノン×2
出力4.2MW
背部のバインダーに内蔵された副砲。サブの武装ながら一般的なMSのビームライフルと同等の威力を持ち、可動性の高いバインダーにより射角も広い。
胸部メガ粒子砲×2
出力5.3MW
胸部に連装された副砲。メガランチャーモードの際にエネルギー供給を行うためにも用いられるジェネレーター直結式のビーム砲。
射角が狭く、またコクピット近くにあり危険性も高く、エネルギー供給の効率化においてもボトルネックとなっていたためか後の改修機のシルヴァ・バレトにおいてはオミットされてしまった。
マイクロミサイルランチャー/対艦ミサイル
背部バインダーに対MS用のマイクロミサイルランチャーを搭載。左右で12×2の最大24基。
また、オプションで対艦用の大型ミサイルを外付けで装備することができる。
インコム×2
ガンダムMk-Ⅴから受け継がれた武装。
バックパックに内蔵された有線式の遠隔操作可能なビーム砲。
後述のビームハンドと合わせて、オールドタイプであっても限定的ながらオールレンジ攻撃が可能。
有線(無線)式ビームハンド×2
ジオングのように前腕部を射出し遠隔操作することができる機能。
掌部にはビームガン(出力2.3MW)が内蔵され、これを用いた牽制射撃が可能なほか、電流攻撃やサーベルを持たせて射出し斬り付けるなど様々な使用法が可能
(OVA版UCのep.7において、後継機のシルヴァ・バレトが後者の用法をした)
操作方式は有線式とレーザー通信による無線式があり、指揮官機に後者が採用される。
ビームサーベル×2
大腿部に左右合わせて2基搭載された近接戦闘用装備。
重火力を誇る本機だが、高い機動性と前述の有線式ハンドのためその価値は低くはない。
その他内蔵武装
頭部30mmバルカン×2、胸部グレネードランチャー/スモークディスチャージャー
などを有する。
バリエーション
ガンダムMk-V
原型機。詳しくはガンダムMk-Ⅴを参照。
シルヴァ・バレト
改修機。詳しくはシルヴァ・バレトを参照
その他
なお初期設定名は「G-V」となっており、頭部デザインはクィン・マンサの物と取り換えられたこともあり、ガンダム・タイプの機体としてデザインされていたことがうかがえる。
この初期稿をブラッシュアップしたものが「ガンダムMk-V」である。