概要
アナンタの名は「無限(無終)なるもの」を意味し、ナーガの王シェーシャと同一視またはシェーシャの別名ともされる。
「バーガヴァタ・プラーナ」では、世界の創造する以前全ては原初の水に覆われており、ヴィシュヌとアナンタ(シェーシャ)だけがいた。ヴィシュヌはアナンタを寝台として瞑想の至福にひたり、4000ユガの間水上で眠った。
そして、ヴィシュヌの体から創造の力が世界蓮(ローカ・パドマ)という形をなしてへそより伸び出し、彼自身もその蓮の中に入り込む。蓮からは、ブラフマーが生み出され、世界の創造が始まる。
世界の終りが来ると、再びヴィシュヌとアナンタだけが残り、原初の水の上を漂うといわれる。
この創造神話は二大叙事詩「マハーバーラタ」、「ラーマーヤナ」にも引き継がれている。
アナンタはヴィシュヌとの結びつきが強く、「バーガヴァタ・プラーナ」内のクリシュナの物語の冒頭において悪王カンサが席巻する地上へ化身を送るために、自身の体から黒い毛を一本抜いてクリシュナに、アナンタから白い毛を一本抜いてバララーマにした。
地上での役目を終えたバララーマは、海辺での苦行の後、口からアナンタが流れ出でバララーマの肉体を捨て去り海の中へ帰って行った。
また、シヴァの優位性を示す逸話の一つには、シヴァの舞踏を目にしたアナンタがもう一度それを見たいがために、ヴィシュヌを見捨てて数年苦行に打ちこむ様が語られている。
アナンタは千の頭をもつというが、一般的に5頭もしくは7頭で表され、コブラのような頭被で傘や後光のようにヴィシュヌの頭上を覆う姿が描かれる。
創作での扱い
女神転生シリーズのアナンタ
初出は「真・女神転生」。種族は“龍神”で、デザインは同じ多頭の蛇の悪魔である“ヤマタノオロチ”の色違い。HPが高く、所持スキルも物理攻撃のみなので終盤でも前衛で戦っていける性能である。
以降の作品でも安定した登場率を誇り、「真・女神転生デビルサマナー」で七つの頭を天蓋のように広げたインドにおける図像に近い姿で描かれている。
真・女神転生ⅣFINALでのアナンタ
シェーシャの名で物語に深くかかわる悪魔として登場。第一形態は花や枝葉を思わせる意匠が凝らされた、赤熱・対流するエネルギーで構成された蛇状の姿で、神話学における世界軸、特に世界樹を髣髴とさせるデザインである。第二形態は腕を有する緑色のコブラといった出で立ちで、背面や体の各所に目を持つ。
復活したクリシュナが銀座において多神連合の悪魔たちと共にフリンを襲撃・拉致した際に、東京を覆う岩盤を砕いて現れる。
クリシュナ曰く“死と再生を無限に繰り返し人間を≪救済≫へと導く大蛇”で、空間に裂け目を開く移動能力と超再生能力を有する巨大な悪魔。
一番目の能力によってシェーシャはあらゆる場所へ瞬時に移動することで完全な奇襲と撤退を可能とし、二番目の能力で特殊な武器以外に対する高い耐性と死亡しても再び復活・進化するという不死性を備えている。
シェーシャは人類の魂回収という任務を持つとともに、多神連合が目指す新宇宙の基礎、“宇宙の卵”の役目を担うクリシュナの進める≪救済≫の要であり、以後は東京各地を襲撃して天使・悪魔の二勢力に大打撃を与え、宇宙の卵となる満月の日に向けて無数の人間を喰らってその魂を奪っていく。
作中では計4回にわたって主人公たちと交戦しており、都庁で天使・悪魔・ハンターの三勢力の同盟の攻勢を前に一時撤退した後、シェーシャレーダー開発に成功した人外ハンター商会と天羽々斬剣を得た主人公によって渋谷で撃破される。一度目の復活の後、“進化”した姿で池袋において再戦するも撃破され、主人公への殺意を露わにしながら二度目の死を迎える。
二度目の復活において、さらなる進化を遂げたシェーシャは『フリンの姿を装って救出される』という芝居を打つ。人外ハンター商会や主人公と共にフリン(シェーシャ)は東京の民を率いてルシファーとメルカバーを撃破し、フリンという救世主像によせる東京の人々からの強い信仰を獲得、そして信仰(魂)を捕食することで以前よりも大規模かつ広範囲に及ぶ魂の回収に成功する。主であるクリシュナと合流したとシェーシャは“宇宙の卵”と化して、YHVHの支配を脱却しクリシュナを真理とする新宇宙創造に取り掛かる。