ネルソン級戦艦
ねるそんきゅうせんかん
建造の経緯
第一次世界大戦後、日本は八八艦隊、アメリカ合衆国はダニエルズ・プラン(コロラド級戦艦など)と軍備強化を進めていたが、不況のイギリスは新規建造計画を持っていなかった。
しかし、日本海軍にワシントン海軍軍縮条約で廃艦の対象だった戦艦陸奥の保有を認めたことから、戦力バランス上イギリス海軍も16インチ砲搭載戦艦を2隻新造できることになった。先行する長門型戦艦やコロラド級戦艦を睨んで、後出しで設計されたのがネルソン級戦艦である。
この結果世界の16インチ砲搭載戦艦は計7隻となり、これをビッグ7という。
特徴
イギリス海軍戦艦史上最大(18インチ砲搭載のフューリアスは軽巡洋艦)の主砲である16インチ砲を3連装砲塔に収め、船体前部に3基集中配備したのが最大の特徴である。これは危険な弾薬庫をカバーする装甲の面積を減らし、その分厚くするためであった。
防御強化自体は成功したが、後方射撃時の衝撃で艦上構造物に損害が出たり、艦橋を後に寄せたため運動性がタンカーのように悪かったりと、成功とは言い難い設計であった(英国面も参照)。速力は既存の戦艦と合わせるため、毎時23ノットと低速である。
大戦間期、イギリス海軍最新の戦艦であったため、めぼしい近代化改装は受けていないが、第二次大戦が始まるとレーダーを搭載し、ネルソンには対空火器が増設された。
総じて欠陥戦艦という評価になりがちであるが、ビッグ7の中でも、低速すぎて活躍できなかったアメリカのコロラド級や、温存しすぎて活躍できなかった日本の長門型戦艦と比べると、二番艦ロドニーがビスマルク撃沈に寄与するなど戦果は多く、当時のイギリス海軍を支えた武勲艦である。
修理・整備の余裕もなしに酷使されたためロドニーは船体の痛みが激しく、係留状態で終戦を迎えており、正に祖国の勝利に捧げた生涯だった。