「騎兵とは、これだ」
秋山好古は、講義で騎兵について説明する際、素手で窓ガラスを叩き割り、動物を使う騎兵の打撃力と脆弱さを説明した。
概要
騎兵とは、馬等の騎乗可能な動物(ラクダ、ゾウ等)に騎乗し、
そのまま戦闘を行う兵種を指す。
大別して、軽装であるが故の機動力を生かし、
偵察や奇襲、追撃、背面や側面に対する攻撃を行う軽騎兵と、
重装備による高い防御力を生かし、敵陣に対して突撃を行う重騎兵の2種に分けられる。
また近世に入ると、両者の中間的な扱いの竜騎兵が登場した。
類似する兵科として、移動は騎乗で行い、戦闘は徒歩で行う「乗馬歩兵」という兵科が存在する。
歴史
紀元前から近世にかけて、機動力や突破力、衝撃力から、戦場の花形として活躍したが、何より本能に従う動物に頼らなければならないという、重大な欠陥(※特に先端恐怖症が致命的で、どんなに訓練をしても槍衾に突っ込む様なことは絶対にできない)があった。19世紀中盤から後半にかけて起きた後装式小銃の登場と進化、19世紀末から20世紀初頭にかけての機関銃の発明と採用の拡大で、背が高く装甲を持たない脆弱な騎兵は機関銃の良い的にしかならず、しだいに活躍の場を減らしていき、主に敵歩兵への奇襲や掃討に用いられるようになった。最終的には、第一次世界大戦におけるトラックの普及と、なによりも特性を同じくする戦車を代表とする装甲戦闘車両の登場で戦場における活躍の場を取って代わられるように失い、騎兵は戦場から姿を消していった。もっとも、第二次世界大戦の頃までは各国で少数の乗馬騎兵が存続しており、歩兵に対して突撃を行い戦果を挙げた事例もいくつかある。
現在では騎兵は戦闘に用いられることはなく、もっぱら儀礼的用途か、警備用に用いられる。
現代における騎兵
現代においては、主に装甲車(装甲兵員輸送車または歩兵戦闘車)やヘリコプターを用い、
迅速に展開、撤収する部隊に「騎兵」の称が用いられる。名誉称号的に戦車に改編した師団などが騎兵師団を名乗り続けることもある。
また、名称としての存続とは別に、自動車が通りづらい狭路や悪路での治安維持活動においては、
本来の意味での騎兵が未だに重要な役割を果たしていることがある。
騎乗している事からイメージしやすい踏破性、小回りの良さの他、
・騎乗者が高所から周囲を見渡すことができる
・騎乗者がわき見・よそ見をしていても、騎乗動物が自分の判断で回避してくれるので事故が起きにくい
・騎乗動物の巨体が威圧感を生み出す
・移動手段に持ちいるのが生物であるため、爆破など車両に対して行われるような破壊活動の対象となることがほとんどない
・・・等々、様々な利点が存在するからである。
また、これらの利点から山野における遭難者の捜索に駆り出されることもある。
騎乗動物について
実在する騎兵は、馬を騎乗動物としていることが一般的で、
地域によって、ラクダやゾウが、騎乗動物として選ばれるが、
創作物においては、馬に限定されず、大型の犬や鳥等、馬の替わりになる様な動物、
中には恐竜や、ドラゴン等の想像上の動物なども、騎乗動物として登場する。
更に、馬等を模したロボットや、サイボーグ化された動物に騎乗するもの、
武装を施したり、装甲で強化したバイクに搭乗したものを、騎兵と称する場合もある。