概要
裏サンデー及びマンガワンにて2016年12月30日より連載されているバコハジメによる漫画作品。
「次に来るマンガ大賞2018 web漫画部門」にて7位にランクインした。
単行本は現在6巻までリリース済み。
作品ジャンルは「ヴァンパイアホラーバトル」となっているが、物語が進むにつれてホラーの要素は薄れ、いわゆる王道のヒーロー物や人間ドラマの色が強くなっている。
比較的シンプルで使い古された舞台設定の中で、個性豊かなキャラクター達の譲れない信念と凄惨な戦い、厳しい現実世界との葛藤を描くと共に、「命の儚さ」や「善と悪の曖昧な境界線」といったテーマが作品の根幹を為している。
あらすじ
舞台は富士山が噴火した現代。火山灰をかぶることで一部の人間が驚異的な力を誇るヴァンパイアとなった。ヴァンパイアの王となったものが全世界を支配するルールのなか、血で血を洗う戦いが幕を開ける。
登場人物
ドミノ派閥
ドミノ・サザーランド
主人公。変身姿がよく恥女であると言われる。
少女に見えるが3世紀は生きているという「真祖」。絵が下手なのが玉にキズ。
念動力のような固有の能力を持つ他、触覚で索敵ができる。
狩野 京児
下僕1号。変身姿は黒く、シャープ。電気を操る能力を持つ。
サイコパスのようで子供にやさしい「狂気と理性の男」。
佐神 善
第2の主人公。下僕2号。変身姿はボロボロのマントを羽織ったような風体。口の左端から羽が出ている。能力は超再生と見られていたが…。苦労人気質。絵が上手い。
七原 健
下僕3号。変身姿は狼(どう見ても犬)。触れているものを加速させる能力を持つ。善と小学校の時友達になる。ジャイアンツと金持ちを忌み嫌っている。熱狂的なカープファン。
日ノ元 明
下僕4号。変身姿は機械染みており、ガイコツと形容される。自分の外装を武器に変形する能力を持つ。
巨人ファン。アホの子。燦然党の党首を父に持つ。
ドミネコ
下僕0号。ドミノのペット。よくドミノの動きを真似ている。鳴き声は「オァー」
燦然党
日ノ元 士郎
燦然党の党首。元政治家で「真祖」。外面はカリスマ性溢れる熱血漢だが、目的のためなら手段は問わない残忍な面も持つ。
ガイコツ(名前不明)
日ノ元のことを「坊っちゃん」と呼ぶ側近。今のところ変身姿しか晒していない。
堂島 正
善の元主治医。変身姿は息子が好きだったヒーローの姿と酷似している。
ドミノに追われ、渋々燦然党に在籍。民間人にも容赦ない日ノ元のことを嫌っている。
立花 綺羅々
日ノ元に噴火前に助けられ恩を感じている。本作では常識人寄りである。
キラキラネームなのを気にしており、下の名前で呼ばれることが嫌な様子。変身姿は猫っぽい。
風見 涼
文系サイコパス。変身姿は蝶がモデル。索敵に優れ、相手の神経を支配する能力を持つ。
その能力は未知数。京児が好きと明言している。
芭藤 哲也
ヤクザ。七原の元上司。ところどころにムカデの意匠が見られる。
能力は銃とムカデ型の触手の生成。
葵 洸
よく震えている。変身姿は手足が無数に重なり出来上がっている土偶。大きさは作中随一だと思われる。能力はテレポート。
加納 クレタと加納 マルタ
Jelly Fishを経営している双子の姉妹。京児は大学でクレタ、善は店舗でマルタと接触する。変身姿は人魚姫がモチーフ。能力は分裂。
GOLDEN PALM
ユーベン・ペンバートン
GOLDEN PALMの社長で「真祖」。ケバくて成金趣味だがドミノや日ノ元に劣らず、高いカリスマ性を持つ。
羽振りがいいらしい。頻りにドミノ派閥から人員を引き抜きたがる。
火防 郷
通称「ゴリさん」。ユーベンの右腕。鼻が詰まった声らしい。
変身体は所々から火が吹き出しており、爆炎を操る。ゴリファイヤである。
水波 魚月
バカの振りするバカな男と女性への礼節がない男と笑顔が下品な男が嫌いな早慶大の院卒。なかなかプライドが高い。善がお気に入り。
水を操る能力を持つ。
阿久津 潤
カープ好き。始めこそ風体のせいで七原から怖がられていたが、カープの話題で意気投合する。
その他登場人物
狩野京介
善の高校からの親友。京児の実弟。喫煙者。見た目はヤンキーであるが、友達思いで理不尽なことを見ると放っておけない心優しい人柄。ケンカはそこらへんの奴では倒せないほど強い。
糸葱シスカ(あさつきしすか)
善が幼い時病院で出会った少女。4歳から続く慢性腎炎と運動障害等のため今も入院が続いている。今でも毎週末に善が見舞いにきており、善のよき理解者でもある。
用語・設定
- ヴァンパイア(吸血鬼)
富士山の火山灰を浴びて、人外の怪物としての能力に目覚めた人間。
本作では「夜の間しか変身できない」、「心臓に傷が付くと死ぬ」、「死ぬと灰になる」といった設定が採用されている。
吸血は生存に不要だが、人間の血液を飲むことで一時的に力が高まり、興奮状態となる。
いわばドーピングや麻薬に近い効果があり、多くのヴァンパイアが私利私欲のために人間を殺害している。
その姿は様々であり、善やドミノのようなコウモリを彷彿させる正統派寄りのヴァンパイアもいれば、悪魔や狼男、骸骨や人魚やキノコや昆虫といった、様々なモチーフの怪物がヴァンパイアとして登場している。
また、それぞれの能力については善は「理解」→「食べた遺灰物の持ち主の能力のコピー」、京児は「刺激」→「雷」など、それぞれが心に秘めるものをコンセプトにしている節があるが、能力の元になるものは未だ作中で言及されていない。
- 真祖
本作においては富士山の噴火以前からヴァンパイアであった者達を指す。
いずれも強大な力を誇り、その遺灰物には特別な力がある。
- 遺灰物(クレメイン)
吸血鬼の心臓の核。捕食することでヴァンパイアの力を高める。
野心あるヴァンパイア達は、遺灰物を求めて夜な夜な殺し合いをしている。
- 富士山の噴火
物語冒頭の4ヶ月ほど前に発生した大規模な自然災害。
現在も各地に被害の爪跡を残している。
降り続ける火山灰には、素質のある人間をヴァンパイアに変える力がある。
- 王を決める戦い
富士山の噴火と共に始まったヴァンパイアの王を決めるバトルロイヤル。
最も強い1人だけがヴァンパイアの王となり、世界を支配することができる。
その過程で大規模な破壊や大量殺戮が発生しているが、強力な情報統制により一般人にはその存在を感知できず、干渉もできないようになっている。
余談 「主人公は誰か?」
この作品の名目上の主人公はドミノということになっている。
しかし実際に読み進めていけば、物語は善の成長を中心として進んでいくのが分かる。
一方で、作品のストーリーには「ヴァンパイアの王を決める」という分かりやすいゴール地点が設定されているのに対し、善にはそういった目的意識が薄い。
物語の開始時点から、明確にその目標を持っているのはドミノである。
つまり、物語は基本的に善の視点から進んでいくが、ストーリーの主軸となる出来事はドミノを中心として展開されていくのである。
いわばドミノと善は別々の目標を持ったタイプのダブル主人公であり、読者それぞれの見方によって、主人公はドミノと言っても善と言っても差し支えないと思われる。
これから2人の目的地がひとつになるのか、別々のままなのかは、今後の展開次第だろう。