概要
ローマ帝国の本国であったイタリアのラテン語が、時代とともに変化したもの。スペイン語、ポルトガル語、フランス語などとは、元が同じ言語の方言であり、連続的に変化している。イタリア内でも方言差があり、どこからどこまでが同じ言語なのかは分かりにくいが、今は一般的に「一つの標準語ごとに別の言語」という扱いになっている。イタリア語の標準語はトスカーナ方言(フィレンツェの辺り)でありローマ方言ではないが、イタリア語の体系化がトスカーナ地方を中心に進められたためである。ただしローマ方言とトスカーナ方言は同じ中央イタリア方言に属し、極めて近い方言である。
一応イタリアの公共放送RAIでは標準イタリア語を定めて、それでアナウンス原稿を書いているようだが、アナウンサーはそれを各自の出身地の発音で読んでしまうので結局なかなか統一されないという。S(後ろに母音を伴う時サ行かザ行か)、Z(ザ行かツァ行か)の発音の差異が特に大きい。
特徴
・単語中の母音の出現頻度が多い。
・音節はたいてい母音で終わる。したがって響きが明るく聞こえる。
・母音は7種類(地方によっては5~6種類)だが、実質5種類と見做しても会話上差支えない。
(「ア」「イ」「ウ」「開いたエ」「閉じたエ」「開いたオ」「閉じたオ」の7種類だが、「開いたエ」「閉じたエ」を「エ」、「開いたオ」「閉じたオ」を「オ」というひとつの母音に括ってしまうことがよくある。)
・同じ子音を続けた長子音――日本語で言う促音(「っ」)+子音に相当する発音――が多くあり、フィンランド語と同様に、ヨーロッパの他言語の話者にとっては「難しい発音」である。原則単語の後ろから2つ目の母音が伸びる(例外も多少あり、"desidera?(ご注文は?)"はカナ転写すると「デジーデラ」になる)。
・使うアルファベットは、外来語に使用するものを除くと、英語のアルファベットからJ、K、W、X、Yを除いた21文字である。
名詞の「性」には、男性形と女性形がある。名詞の「性」は、形容詞や動詞も変化させるため、「ブラーボ(ブラボー)」は男性に対して使う言葉である。女性には「ブラーバ(ブラバー)」。「ボーノ」も、”モッツァレラ”などの女性形の名称に対しては「ボーナ」となる。
間違ったとしても、「くん」と「ちゃん」を間違えた程度にしか思われないようだ。
上述の名詞の「性」は定冠詞ともリンクしており、男性詞では単数il 複数 i 、女性詞では単数la 複数le(標準語で)となっている。外来語は原則男性詞扱いである。単語の語尾と1対1で対応しており(単/複それぞれ 男性詞o/i 女性詞 a/e)、子音字が付くこともある他のラテン語系言語よりは体系がシンプルである。
文化
クラシック音楽で指示を記載するのに一般に使われる言語である。音楽関連では「ピアノ」「オペラ」などの語もイタリア語由来である。
イタリア料理関連でイタリア語の単語が使われることも多い。
写真をとる「カメラ」もラテン語→イタリア語由来の名称で、単純に"camera"ではイタリア語では「小部屋」の意味しかない。直訳すると古風な日本語になるが、"macchina fotografica"(写真機)と呼ぶ。
イタリア語を公用語とする国・地域
- イタリア(他に一部の州ではドイツ語、フランス語、ラディン語、サルデーニャ語。公用語以外には、南部の一部でギリシア語とアルバニア語、サルデーニャの一部でカタルーニャ語が使われる)
- サンマリノ(周囲は全てイタリア領)
- スイス(他にドイツ語、フランス語、ロマンシュ語)
- クロアチアの一部(他にクロアチア語など)
- スロベニアの一部(他にスロベニア語など)
公用語ではないが使用されている地域
マルタ、フランスのイタリア国境近く(特にコルシカ島の言語「コルシカ語」はフランス語の方言ではなく、イタリア語の方言の分類に入れられている)、バチカン市国(公用語のラテン語は主に公文書用で、通常業務はほぼイタリア語。ローマ市内にあるのだからある意味当然だが)、アメリカ大陸各地のイタリア人移民の間などで使われている。