魔術とは、意志に応じて変化を起こす〈科学〉にして〈業〉である
────────アレイスター=クロウリー「魔術-理論と実践」(新約22巻で引用)
神秘主義と近代科学
往々にして神秘の世界と科学は相反すると認識されがちだが、一部の神秘思想と科学は共にヘルメス・トリスメギストス───錬金術、ヘルメス主義の思想的ルーツ───という共通の祖先を持つという事実がある。
※近代科学は錬金術───つまり賢者の石───の生成過程で発展した副産物。
中世にはカバラ、ヘルメス学や錬金術などの思想を統合して世界の救済を掲げた〈薔薇十字団〉が発足。19世紀には〈黄金の夜明け団〉がその権威を利用・箔付けとして薔薇十字の名を借り、近代西洋魔術の源流となった。
とあるシリーズでも途中までは現実とほぼ同じ歴史を辿っていたが、史実では死亡したはずの「ある魔術師の生存」以降、決定的に異なる歴史を歩んでいる。
科学=テレマ神秘主義
その魔術師はアレイスター=クロウリー。
かつては魔術結社〈黄金夜明〉───本作における黄金の夜明け団───の団員で、聖守護天使エイワスとの接触から〈テレマ神秘主義〉を掲げ、〈Magick〉という新時代の魔術の基礎理論を構築し、トートタロットを生み出した人物である。
本作ではクロウリーがテレマ神秘主義を「科学」に偽装し、後にクロウリーが創設した形を変えたテレマの僧院「学園都市」にその影響が色濃く残っている。
本作の世界観は、
- 形を変えたテレマ僧院「学園都市」(科学サイドの一大勢力)
- 近代魔術師や宗教を筆頭とする魔術サイド
以上の二つに“明確に”分断されている(後述)。
概要
〈法の書〉の執筆 - リリスの死去
※「学園都市(とある魔術の禁書目録)」「アレイスター=クロウリー」を参照。
第2のテレマ僧院〈学園都市〉
学園都市を総本山とする、魔術サイドの対の勢力。
主人公の上条当麻、一方通行、浜面仕上もこの科学サイドの人間である。
先述通りその正体は、アレイスター=クロウリーが提唱したテレマという神秘思想(宗教)。
もう少し正確に言うなら、かつてクロウリーがイタリアのシチリア島に作った「テレマ僧院」を科学という形に偽装し、それが今日の日に科学サイドと呼ばれる枠組みまで発展したもの。
実質的な科学サイドの一大拠点「学園都市」は形を変えた「テレマ僧院」とされており、クロウリーの作った科学に属する全てがテレマのカモフラージュに過ぎなかった。
つまり、現実的には魔術サイドに分類されるべき新興宗教の形を変えた姿。現実世界におけるテレマ思想はクロウリーの没後から現代に至るまで続いているが、禁書では創始者のクロウリーが魔術を憎んで生き長らえていたら…というif・創作設定のもとに成立している。
原型制御
実は科学サイド、魔術サイド等という枠組みは自然的に発生したものではない。
これらは魔術を憎悪するクロウリーが、「原型制御」というパラダイムシフトを起こす技術を使い、魔術に対抗する枠組みとして明確に線引かれている。
元々、世界は統一した理論で説明できていたのだが、まさにたった一人の邪悪によって強制的に科学(超能力)と魔術に隔てられたのが、現在のとあるシリーズの世界観となる。
【元ネタ】クロウリーの魔術定義
「魔術とは意志に応じて変化せしめる《科学》にして《業》である」
この言葉に代表される様に、クロウリーの魔術観では「魔術師の全ての意図的な行動・意志こそが魔術的行為」として考えられた。
クロウリーは自身が定義・実践するテレマ系の魔術に「magick」という綴りを与え、従来の洗練されていない古式魔術と区別している。
(ちなみにmagickという単語は、禁書でも第7巻/法の書編にて地味に登場する)
そして新約22巻において、まさにこのクロウリーの魔術定義が引用されている。
関連タグ
とある魔術の禁書目録 とある科学の超電磁砲 とある科学の一方通行